容姿・経歴・その他メモ

　魔動機文明時代の都市でホストとして働いていたメリア(長命種)の男性。
　頭に赤いバラ、肩にハエトリソウの葉っぱがある。
　ストーカー被害にあった同僚をかばって刺されたのが死因らしい。
　
　決め台詞は、「キミとの出会いが、運命でありますように」
　
　
　経歴
　・故郷の場所を知らない。
　・大切な人と生き別れている。
　・師と呼べる人物がいる。
　
　
　
　『ファムファ・タールの狂気』
　
　ラクシア全土をアル・メナスネットワークが覆い、魔動機工学が普遍化した、後に『魔動機文明』と呼ばれる時代。とある都市にて――
　
　午後10時を過ぎた。
　昼は静かな灰色の街だが、日が沈むとともに魔導ネオンサインが煌きだし、不夜城となる。
　街灯やビル明かりに照らされた大通りは、まるで昼のように明るい。
　
　この街で目につくのは、『夜』を生業とする者たち。
　マギスフィア片手にせかせかと歩く、カロウシ寸前のサラリーマン。
　夜遊びに精を出す、無軌道な若者たち。
　そして――
　
　とあるホストクラブのロッカールームにて――
　「ストーカーだって？」
　後輩の口から出た言葉に、俺は思わずそう呟いた。
　「は、はい。最近、変な気配を周りから感じるんです」
　そう答えたのは、俺の荒廃。メリア長命種の男性だ。
　「なるほど。それは大変だ。仕事が終わったら、家まで送ってあげよう」
　「え？　いいんですか？　ファ先輩が俺みたいな……」
　「いいんだ。後輩の新芽ちゃんに、何かあったら大変だからね」
　「あ、ありがとうございます！」
　後輩――新芽ちゃんは、涙を浮かべながら俺に何度も頭を下げた。
　
　
　俺の名は『ファムファ・タール』
　この街のホストクラブ『サテリアジス』に勤務するメリアだ。
　トレードマークは、頭に咲いた赤いバラと、肩に生えたハエトリソウの葉っぱ。
　赤い一輪の薔薇は『運命の人』ハエトリソウは『魔性の愛』を意味する。
　
　『サテリアジス』には、多種多様な種族の女性――俺は『蕾ちゃん』と呼んでいる――が集う。
　そんな蕾ちゃんたちをお相手するのが、俺たちの役目だ。
　
　今日も蕾ちゃんの一人から、シャンパンを頂いた。
　
　
　午前1時。仕事を終えた帰り道。
　新芽ちゃんと並んで歩くのは、初めてだ。
　普段は、防犯対策として店長にボディガードを付けられたり、腕っぷしの強い同僚に送られたりしているので、結構新鮮だ。
　「う～ん。いい空気だね。仕事終わりにはちょうどいい」
　「そうですか？　俺は気が気じゃないですよ」
　眠そうな目をこすりながら、新芽ちゃんは答える。　
　流石に夜の仕事とはいえ、午前1時になると眠気が襲ってくるようだ。
　何気ない会話をしながら、俺は辺りを見渡す。
　怪しい影は、まだ出てこないようだ。
　「そう言えば先輩、一人で大丈夫なんすか？」
　と、新芽ちゃんが質問してきた。
　「大丈夫だよ。俺は真語と操霊魔法の心得はあるし、何より、男二人を襲ってくる人なんていないだろう？」
　わざとらしく笑って見せるが、新芽ちゃんは気が気じゃないようだ。
　「そうだねぇ……――深、第一階位の幻。幻惑、虚像――小魔」
　右手の指をくるくると回しながら、そう唱える。
　すると、肩のハエトリソウの葉っぱが、小さな炎が吹き出した。
　「わっ！？　先輩！？　何してるんすか！？」
　「何って、ちょっとした宴会芸だよ。空気が暗くなってしまったからね――」
　と、言葉をつづけようとしたとき、視界の端に、ナイフを持った男が映った。
　
　「危ない！」
　俺は新芽ちゃんを押しのける。
　その間にも、ナイフを持った男が迫ってくる！
　「真、第一階位の攻。瞬閃、熱――」
　右手を動かして、呪文を唱える。
　だが、ナイフを持って迫りくる男には、その詠唱は遅すぎた。
　
　腹部に冷たい何かが刺さり、引き抜かれると同時に焼かれたように熱くなる。
　痛い。熱い。
　「――先輩！」
　新芽ちゃんの叫び声が聞こえる。
　足がふらつき、俺は地面に倒れ伏した。
　「は、早く救急車を――」
　新芽ちゃんは慌てて震える手でマギスフィアを取り出すが、落としてしまう。
　マギスフィアが転がり、俺の体にこつんと当たった。
　「先輩！　大丈夫ですか！　しっかりしてください！」
　新芽ちゃんが俺を抱き起こす。
　そんなに慌てるな。早く、救急車を呼ぶんだ――
　薄目を開けると、遠目に、何人もの人がこちらを見ていた。
　ああ、目撃者が、何人もいるのか。
　見ているのなら、早く、救急車を呼んでくれ。
　「先輩！　先輩！」
　「……新芽ちゃん」
　意識が薄れながらも、ふり絞った俺の声は、とても消え入りそうで――
　「あわてるな。早く、救急車を……呼ぶん……だ……」
　ああ、瞼が重い。
　新芽ちゃんは、救急車を呼んでくれただろうか？
　できれば、病院のベッドで目覚めたいな……
　その思考を最後に、俺の意識は、闇に溶けていった――
　

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