容姿・経歴・その他メモ

　彼は気が付いたらとある浜にいた。持ち物は身に着けた衣服のみ。それ以外には何もない。武器も、金も、何もない。なぜここにいるか記憶もない。どうしようもない彼が選んだ最初の選択肢は、金稼ぎだった。

　金稼ぎをしよう、さてなにをしようか。ここにあるのは服とただ一つの鍛え上げられた肉体。ならやっぱり力仕事だよな。そう考えた彼は、荷物運びといった仕事をするために近くに見える街に向かった。それこそが始まりの国、ハーヴェスト王国。荒くれものどもが集う夢の国だった。町を歩いて三千里、どこか仕事をくれるものはいないかと歩いていると、ある老人から話しかけられた。

「おいそこゆくマッチョや、見れば解る。おまえの強さ。冒険者だな？その肉体、鍛え上げられている。至高の領域に近い。ワシの依頼を受けないか？」

　話を聞くと、どうやら彼の孫娘が悪そうなチャラ男と付き合い始めて最近自分に冷たいそうだ。孫娘に悪影響が出てるからどうにかチャラ男を痛めつけてほしいとのこと。そんなことはできねぇと言ったが、老人の華麗な話術によっておだてられたことと依頼報酬の高さに目がくらんでこの依頼を受けることにした。

　実際、この依頼を受けたことは正しかったのだろう。ソレイユである彼の圧倒的体格からくる"ゴリ押し"はいわゆるチンピラどもによく効き、悪童どもを蹴散らした。孫娘には泣かれたが、娘の涙より爺の金。当面の飯と宿には困らなさそうな金を手に入れた。

「ようやった！おまえならあの"闘技場"でも優勝できるわい！」
「ふーん、闘技場、ね。俺が出たらどうなる？」
「そりゃもうバリバリに金稼いで"最強"の二つ名を得られるわい！」
「へぇ・・・なるほどね。」

　一つ失敗した点としては、彼は老人におだてられすぎてしまったことだろう。実際、チャラ男どもに圧倒的な力の差で勝てたこと。それがよくなかった。そうして、彼は地獄の道を歩み始めた。

　ジニアスタ闘技場に現れた筋肉であるアルジャミール。彼の初陣は初戦敗退だった。彼の肉体を見て彼に賭けた観客たちによるブーイングの嵐。ボコボコにやられた彼にとってはあまりにもつらい雨だった。めげずに何度も何度も参加費を払い、闘技場に挑戦する彼。しかし、闘技場で鍛え上げられた技術を持つ猛者たちに彼はどうしても勝てない。そうしてついに、金が尽きた。

　いつのまにか、彼は砂漠を一人で歩いていた。まるで浜に打ち上げられた時のようになにも持たず、ただひたすら歩いた。その歩みも次第に遅くなり、そして何もない砂浜に倒れた。意識を失う寸前、彼の耳に人の声が聞こえた。

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