容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■冒険に誘われたことがある
■役に立たない得意技がある
■血縁者と死別したことがある
【冒険に出た理由】
■蛮族を倒すため

フィーレンは、異端の街の異端児だった。

物心ついた頃には、楽しそうな声が常に鼓膜越しに脳に響いていた。
冒涜的で背徳的で、蠱惑的で魅惑的な言葉。
フィーレンはある日その声の通りに門を開いた。
その結果、フィーレンは親から捨てられ、住んでいた街から追放された。

この声に従ってはいけないんだ、と誰に教わるでもなく理解する。その日から、その声は意図的に無視するようにした。
ただ、少ししてからその声以外に別の声が聞こえるようになった。一人では生きていけないフィーレンは、今度はその声に従うようになる。
導かれた先は、追放された神官が集う街だった。異端者として虐げられた者、やむを得なく罪を犯した者、過度な期待に疲れた者。
そんな人々が、安寧と平穏を求めて集っている場所だった。

幼いフィーレンは、心優しい人々に迎え入れられ、幸せな生活を送った。
ただ、それも長くは続かなかった。

フィーレンは、その街で奇異の目を向けられた。その理由は、フィーレンだけがこの街において罪を犯していたからだった。
平穏を脅かし、安寧を崩しかねない、魔神。魔神語を理解する者も少なくないこの街において、フィーレンの小魔がささやく声は皆の不安を煽っていた。優しい神官たちは、それ以上に怖がりで。小さな綻びからこの街が崩壊するのを強く恐れた。

その結果、彼らは平穏のためと嘯いてフィーレンを追放する計画を立てた。ここでいう追放とはすなわち、殺害に他ならない。何故なら行き場がないから集った者たち、この場所を追い出されれば生きていくことなどできはしない。
そのことに目をつぶって…この子を殺すのは私たちではない、勇気ある行動をさせただけ、そんなどうしようもない言い訳を言い合って。
フィーレンは、街の近くに出た蛮族の討伐を命じられた。

分かっていた。この街でも居場所がないことくらい。
奇異の目に曝されることは、生まれた時からあったことだから。
それは魔神使い以前に、ナイトメアだったから。
神官たちもきっと言っただろう。穢れを持った、忌み子だからと。

別に死にたいわけではなかった。導きの声が次に何を齎すのか、知り続けたかったから。
だが、もうこの世界で生きていることが出来ないのなら。
ただ言われるままに、導かれるままに、命を投げ捨てよう。
無視することに慣れていた方の声が、やけに大きく響いたんだ。

街を離れて、すたすたと歩きだす。足取りは重くならなかった。言われた通りに、進めばいいだけだから。
『その先へ向かえば、もう苦しまなくていいんだよ』
という声が聞こえる。その通りに進みながら、驚くほど心が動かないことに気が付いていた。
もう苦しまなくていい、なんて的外れ。苦しくなんて、ないのに。

蛮族と遭遇する。死ぬと分かっていながら、ただ当たり前のように抗う。異界の門を開く。
そのまま死んでいったことを、しかしフィーレンは覚えていない。気が付いた時には見知らぬ建物で、木目の天井が視界に映った。話を聞けば、どうやらこの場所は月狼亭という冒険者ギルドらしい。

ふたつの声が、フィーレンに囁く。この場所で、冒険者として生きていこう、と。
自らを救ってくれた冒険者たちにも促されて、フィーレンは導かれるままに冒険者となるのだった。

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