小銭稼ぎがてら冒険者が集まる探索イベントに出発。久しぶりのご主人と列車旅でるんるんな中、別車両がバイクに乗った盗賊に襲われた。わたしとご主人の幸せな時間を奪った大罪人を生かしておくわけにはいかない、すぐに粛清だJust now。はたから見れば化け物モード全開の私の進軍にかまわずついてくる変わり者のシャドウがいた。が、このシャドウ、全然攻撃が当たらない。化け物に加勢する御大層な正義感をお持ちのわりに運命の神からは愛されていないらしい。結局支援の手間が増えた。だが、ご主人と熱い抱擁をすることができたので総合的にはいい日であったと言う事にしておこう。ご主人いいにおい。
盗賊連中は組織的な犯行が見え隠れしていたが、、、

　目的地に到着。そこでは攻城戦と見まがうほどの巨大な筒を海に落としてそこから海水を抜き、海底遺跡を露わにするというとても頭の悪いことが行われていた。その底だまりでビチビチは跳ねんばかりにひしめき合う魔物を腕試し代わりに狩るオーバーなんちゃらというお祭りに参加したが、前衛としてPTを組んだのはくだんの攻撃の当たらないシャドウだった。名前をルナと言うらしい。
　妖精の加護で全員水中で問題なく動けた。ご主人がほめてくれた。私大活躍。ご主人の支援を受けていながら今日も元気に攻撃の当たらないルナ。夕飯にする予定だったヘビを消し炭にしてしまう私。それでもこんなで何とか連戦にも慣れてきた矢先、疲労からか油断からか、終了目前に敵の群れに先手を許し陣形を崩され撤退を余儀なくされる。
　ギルド係員に手当てをしてもらい、ご主人を敵の攻撃にさらしてしまった己の不甲斐なさに打ちひしがれているとのこのことサンダーバードがやってきた。よし、やつを今夜のメインに据えて挽回だそうしよう今。やる気にの炎でジリジリと鳥を炙り、あと一歩のところでなんとご主人がとどめを刺した。流石私のご主人。ちょーかっこいい、大好き、わーい！ちなみにルナは私が飛ばしてやったにも拘らず攻撃が２回くらいしか当たってなかった(さすがに分が悪かったのだが)。しかもこのサンダーバード、宝石を２つも生成していた。今夜の料理は御馳走が振舞えそうだ。
　サンダーバードの撃破と、割と有名だったらしいおばけイソギンチャクをなんだかんだ５体ほど倒したのが評価されたらしく、ギルドは私たちのことを駆け出しにしてはやり手のものと判断したらしい。私は報酬が良ければ何でもいい。

　前回の祭りで周囲からもいっぱしの冒険者として認識された私たちは、ようやくギルドに腰を据えることができた。しばらくの拠点となるギルドの名は海傑の宴というらしい。なるほど、波に打たれる馬鹿デカい鉄の塊の町にはぴったりの名前だ。
　数日おいてギルドから男が訪ねてきた。いかにもよく働きそうな好青年といったところか。彼は私たちに依頼を割り振る担当になったとのこと。担当としては当たりの部類だろう、これで割のいい依頼をこなしてご主人にもっといい服を着てもらおう。
　今回提示された依頼は２つ、人探しと遺跡探索だ。人探しなんてかったるいことはしていられない、お宝が私とご主人を待っている‼が、ルナはどうやら人探しの方をしたかったらしい。ふーん、ご主人がそっちでもいいっていうなら譲ってやらないでもないが私から切り出すのは癪にさわ、いいや私はあいつのことなんて気にしてない、いざ宝探しだ。
　現地に着くと聞いていた通りレールと配管が這い回りタールと潮の匂いが溜まったよくあるタイプのアルメナスの遺跡であった。入り口で朽ちていた蛮族の死骸を蹴飛ばして探索を進めていくと、ここが兵器工場であったこと、私たちでは対峙が難しい魔導機が巡回していることがわかった。その魔導機に鉢合わせないように探索を進めていくと特徴的な敵2体と遭遇した。1体目はガラクタを被ったイカだ。いかにもな雰囲気で潜んでいたのでお宝を隠しているのかと思いきや拾えたのは糸の絡まった鉄屑のみ。ルナが持って帰ろうというので拾ったが、これが一体何になるというのか。身の方もタール臭くて食えたものではない。今度タール抜きも覚えておかないと…もう一体は人が搭載するパワースーツ型の魔動機。コイツ本体というよりは守るように立っていた扉が周りと比べて老朽化していなかったことが不自然だった。今も整備されているから壊れてないのかと思いきやくだんのロボの中身はだいぶ前に死んでるわ、扉そのものも開かないわでこの場で結論は出ない。情報として持ち帰ろう。ロボが振っていた獲物をルナが回収していた。アイツはつくづくガラクタが好きなようだ。
　探索終了目前で小さな黒いスイレンの入ったガラス玉のようなものを発見。どうやらこの施設が生きていた時の研究対象だったようだ。ご主人が「シエルに似合いそう」と言ってくれたので早速装着。突如生気を半分近く落とすような感覚に襲われたが、ご主人の「似合ってるよ」で相殺どころか胸いっぱいのご褒美だ。
　猶予は4日あったが2日で地図を書き上げたので早々に切り上げた。早期完了で追加報酬を期待したが、報酬はきっちり提示分だった。こいつもただヘラヘラしているわけではないらしい。とはいえ今回の報酬で念願のマナスタッフを購入できた。ご主人は何と古代の魔術を習得されていた。さすがご主人、亡き御当主様もお喜びでしょう。ルナは今回探索地図制作と悪くない仕事量をこなしていたがさらに斥候としてレベルアップしていた。当然だ、ご主人の横に立つものとして精進を止めてはならない。(ちょっと上機嫌)
　次回はくだんの扉に専門の技師を連れて乗り込むらしい。お宝だけ眠っててくれればいいのだが、、、

　技師や傭兵を集めるまで数日かかるというので、翌日、私たちはすこしランティスを散歩することにした。考えてみればこの町をまともに見て回るのは初めてかもしれない。ぶらぶらしていると路銀稼ぎの大道芸人に行き当たった。名のある芸人なのかそれなりに賑わっていてができていたので、ご主人を肩車して見物する。するとリーダーらしきピエロが帽子のしっぽを揺らしながら、「そこの小さな天子さんたち、ボクたちのショーに協力してくれないかな？」と声をかけてきた。ほう、ご主人を天使に例えるとはなかなか見どころのある道化じゃないか。しかし私は究極のメイドであって小さなお子様ではない。名乗ったうえでその旨しっかり主張すると、「これは失敬、ミス・シエル。それではその奉仕の腕前を私どもに見せては頂けないかな？」と振ってきた。いいでしょう。私は慣れた手つきでティーセットを取り出し、妖精と協力して最高の紅茶を用意した。「ご主人、紅茶がはいりました。」スカートの端を軽くつまみお辞儀をすると、観客から一気に歓声が溢れた。おお、これはなかなか悪い気分ではない。思わず手を上げどーもどーもと歓声に答えながら、手伝ってくれた妖精とはにかむ。しかし、ピエロに悪いことしたかな、なんて考えていた私は気づくことができなかった。ご主人がそれはもう緊張していたのだ。いつも以上に小指を立ててカップを持ったご主人はそのまま指をつっていしまい、頭から盛大に紅茶をかぶってしまった。私が駆け寄ろうとした矢先、くだんのピエロが飛び出す。「おっと、こんなこともあろうととっておきのおまじないを用意しておいたのサ。いくよ！ビビデ・バビデ・ブー！」掛け声と共に大袈裟にステッキを振ると、ボン！という小さな破裂音とともにご主人が煙に包まれる。するとさっきまでびっしゃりだったのが信じられないほど、髪は乾き、服なんかアイロンを当てたようにパキッとしているではないか。観客がこれまで以上の歓声を上げたのは言うまでもない。やはりプロはすごい。後でやり方教えてもらおう。
　さて、早くもギルドから招集がかかった。今回はこの街の技術主任者から直々に説明が行われるらしい。からくり仕掛けの街の技師長のお目にかかるのだ。どんな偏屈者が出てくるだろうと身構えていた私たちの前に現れたのは-のじゃロリ調の天使-だった。リーシャと名乗った彼女は、一般にはメタリックな赤毛の小柄な少女、いかにもドワーフと言われるであろう容姿だ。だが私は見逃さない。幼い容姿のドワーフの中でも頭二つも三つも飛び抜けたぷにっと感のほっぺを油で黒ずませ、シイタケ目で今回の報告書を読む小さな肩はロリの一つの正解と言っても過言ではない。勿論ご主人には到底及ばないが。
　遺跡調査の功労者として歓迎されたのをいいことに、リーシャたんをずっと膝の上に乗せて今回の追加調査のの説明をしてもらった。もっとも私は天使の体温を感じながら「ぐへへ〜、おねーちゃんみたいな怪しい人についていっちゃダメですからね〜」とご満悦だったので全然内容を覚えていないのだが。要するにリーシャを遺跡の最奥をデートコースにすればいいだけだ、考えるまでもない。
　今回の調査は事前情報の通り複数部隊を組み大規模に行う。多くの冒険者が前回来た範囲の詳細な調査に割り当てられたが、私たちの担当は勿論くだんの扉の先だ。扉の前までくると、リーシャたんがいとも容易く開けてみせる。中はいかにもな研究施設といった感じだ。謎解きを読み飛ばし、警備魔道期を蹴散らしながらヤサガシを進めていく。さて次の部屋、と扉を開けると、そこが海底の遺跡内とは到底思えない明らかな野外が広がっていた。しかも開けるたびに密林、荒野、雪原、高山など風貌が変わる。リーシャたんが「試験施設かの？」と一言。なるほど、こういう設備は「自然も含め万物は我々の手によって再現可能」といってるようで、その傲慢な感じが好きになれない。だが今はご主人とリーシャたんで両手に花だ。私だけの愛の花園と思えば悪い気はしないか。
　しばらく進むと一組の調査パーティにであった。なんだか浮いていたので顔も覚えていたが、彼らの担当箇所はここではないはずだ。何か事情があったのかと聞くと向こうから正体を表してきた。蛮族だ。話し合いの余地がないならしょうがないとサクッと縛り上げると、「やはりお前たちか、何度も邪魔しおってー！これ以上お前らの思い通りになると思わないことだ！」みたいなことを言って勝手に死んだ。先日の列車ジャックの集団と関係があるのだろうか。
　……おかしい。もう数日歩いているが一向に出口が見えない。思えば同じような場所を何度か通った気もしたが、空間を焼き増ししてるから景色が似てるのか、同じ地点まで戻されているのか、あるいは単純に迷っているのか。どちらにせよ踏み入ってしまった以上は進む他ない。次からはちゃんと下調べしてから突入しよう。
　それでも進んでいくと1体の魔物にであった、が、攻撃してくる気配がない。この試験場に住み着いたのか、はたまたこいつもシステムの一部なのか。ご主人曰く、魔剣を持っていることが多い悪魔とのことだ。よく見るとなるほど確かに、杖のようなものを持っている。お宝とあらば黙ってはいられない。3人で万全の準備を敷いて挑む。なかなかの強敵だった。一度の魔法で私たち全員を攻撃しつつ自分ももりもり回復しやがるのだ。ともあれこの反則魔法を可能にしている魔剣掻っ払っうことができた。リーシャたんが涎を垂らしながら早口でしてくれた解説によると愛憎のスタッフと呼ばれる国宝級の魔導機らしい。流石にもらってもいいものかと悩んでいると、涎を拭いて依頼主の顔になったリーシャたんが「依頼内容は護衛であろう？拾得物も冒険者の収入源なのじゃ！」と気前よく渡してくれた。今は役割的に私が預かっている。魔導機は性に合わないと思っていたが、黒水蓮と合わせて身につけると統一感が出て悪い気はしない。しかも親密な間柄の者への回復魔法の効果が増幅されるおまけ付きだ！試しに2人にウィスパービールをかけてみると確かにご主人がいつもより多めに回復していた。ご主人だけか。いやこれは予想通りだ、これはご主人と私のための魔剣なんだ！シエル大満足。ただ、リーシャたんがすごく物欲しそうな目でこちらを見てくるのでランティスに帰ったらしばらく貸してあげよう。
　さて、やっと思いで試験施設を突破すると制御室を発見した。リーシャたんがカチャカチャやりながら、この先には下へと続く巨大なエレベーターホールがあるがシステムの応答がない旨を教えてくれた。仕方がないので徒歩で向かうとそこには穴は穴でも空間の穴、シャロウアビスが広がっていた。エレベーターホールを分断するように存在しているようだ。うわぁ……と4人で下を眺めていると、アビスから影を伝って一体の魔神が現れた。強敵だ。見るからに毒液が滴る爪、素早い身のこなし、そして何より圧倒的な威圧感。少しでも気を抜けば体の自由を奪われてなぶり殺しにされる情景を本能で感じる。一度も攻撃を喰らってはいけないという覚悟でなんとか勝利することができた。実際ルナがあと1発もらっていたらどうなっていたかわからない。
　戦闘後の傷の手当てなどが終わり、やっと安堵していた頃。リーシャたんが徐に悪魔の大結晶板を取り出した。大血小板とはなかなかオーバースペックな、私も初めてお目にかかる。ともあれこれで驚異度がわかるだろうと結果を待っていると、あろうことが砕け散ってしまった。大結晶板が、だ。……私たちは思っていたよりも大変なことに首を突っ込んでしまったのかもしれない。
　今回はルナを筆頭に剥ぎ取りがうまく行ったのでだいぶ懐が暖かくなった。私もウェポンホルダーを購入してマナスタッフと愛憎のスタッフの使い分けができるようになった。それ以外のところに運を吸われたように思うのは、きっと気のせいだろう。

　結構な大冒険を終えて地上に戻ってきた私たち。しばらくはお日様の下で平穏無事にくらいしたいと思っていたが、どうやらこっちも穏やかではないらしい。連日町の方で派手な強盗が起きているそうだ。すぐに向かってくれとのことだったので休む間もなく列車に乗り込む。
　現場に着くと聞いていた通り魔動機術ギルドの前の地面にドデカい穴が開いている。取り合えず愛想を振りまきながら聞き込みを行うと、およそ似たような返事が返ってきた。数日おきに、四つ足の魔動機に乗った悪党が夜間派手に建物を壊して強奪しているそうだ。ただ気になる点として、四つ足の色の情報が毎度異なっている。組織的な犯行なのか？盗まれたのもの目録を見てもかなり雑多で、金目の物目当ての可能性が高い。あえて共通点を上げるとランティスから売りに出された魔動機が共通する。あくまで特に危険なものや貴重なものがあったわけではないが。
　ともかく次狙われる可能性としては貨物倉庫の可能性が高い。あそこなら盗むものはごまんとある。もちろんランティス産の魔動機もだ。貨物倉庫に山を張って聞き込みを続ける。すると最近夜間に物音がするとの情報を手に入れた。ビンゴ、張り込み場所はここで決定だな。
　そのまま倉庫で張り込みを続けると予想通り派手な喋りの男がデカい魔動機に乗って表れた。なるほど、このアホ面なら隠密なんか関係なく建物だろうが地面だろうがブチ抜くのも納得だ。ノリノリで襲い掛かってきたので抗戦。機械だけあってルナは会心の一撃は出せず、私とご主人の魔法もなかなか調子が出ない。が、単純にあまり脅威ではなかった。近接攻撃はルナにとって危険なほどの命中力はなく、２回に一回後衛に向かって打ってくる砲撃の回復さえ間に合えば、さほど高くない耐久を魔法でジリジリ削るだけだ。持久戦を制した私たちに男がふざけて笑って見せる「さすがに見くびってたナァ！次はアーマー装備して相手してやるから震えて待ってろヨ、アデュー！」意外と余裕で逃げていくターゲットを追いかけようと走り出す私をご主人が引き留めた。確かに負けこそ見えなかったが、改めて見渡すと二人の顔にはかなりの疲れが見える。ジリ貧はお互い様だったようだ。さすがご主人。状況を俯瞰で捉えらえて安全を優先できる。ご主人 is big love。
　帰り道、ご主人が私に聞いてきた。「シエルあの強盗と戦ってるとき楽しそうだった。ああいうの、すきなの、、、？」いやいやいやありえない。私は自然とご主人を愛し、妖精と精霊と心を交わすメイドさん。まさか「歯車に囲まれた黒睡蓮キレイだな、魔動機も悪くないかも」とか思ってないし「アーマーとかついちゃうんだカッコいい、見たい」とかいう理由で追いかけようとしたわけでもないし、「ニヒルなヒールっていいな」とか、そんな小さい男の子みたいな憧れなんかあるわけがない、、、はず！
　今回せっかく都会に来たのだからと遊んだギャンブルで大穴を叩き出した。ご主人は教育によくないのでちょっとだけ。その資金でついに念願のグリーンベルト購入！これでポンコツスカウトに代わって私も探索ができるようになりました！