容姿・経歴・その他メモ

A 1-6 憧れる冒険者がいる
B 3-5 年の離れた友人がいる（いた）
C 6-4 空腹のあまり失神したことがある
冒険に出た理由 4-1 恐怖に打ち勝つため

・会ったこともない伝説の冒険者に憧れるタビット。英雄的な行動をしがちで、動物（特に馬）が好き

　テリーヴには親友がいた。それはかつて、数々の冒険をくぐり抜けた後、テリーヴの住む村に定住することとなったという、一頭の馬だった。とある偉大な冒険者の相棒だったという馬は、幼きテリーヴに夢をくれた。額についた生傷は激しい戦闘の残滓を、草を食むだけの毎日でも、未だ強靭な足腰は、彼が歩んだ旅路をテリーヴに空想させた。
　なによりテリーヴは、この馬の持ち主だったという、冒険者に憧れていた。テリーヴが馬と遊ぶたびに、村の人たちは冒険者の話をしてくれた。銀の両手剣を背負い、魔法を扱い、戦場を駆け、神に仕え、山熊のような肉体を持つという、乗馬服とサークレットを身につけた冒険者と、その相棒の伝説に、テリーヴは憧れた。

　そんなテリーヴにとって、親友の死は心身の健康に異常をきたすほどの衝撃だった。村が蛮族に夜襲をかけられ、勇敢なる戦死を遂げたと聞かされた直後に、テリーヴは部屋に籠って操霊魔法の習熟に励もうとした。両親も止めはしなかったが、流石に数日間籠りっぱなしとなると心配になった。実際、部屋に踏み込んだ両親が目にしたのは、空腹によって半分仮死状態になってしまっているテリーヴの姿だった。
　結局、テリーヴは暖かいスープの口触りで目を覚ましたが、直後に、日数が経ちすぎてしまったせいで、親友はもう蘇生できないということを知らされたことで、また部屋に籠ってしまった。目標を無くした、今度のテリーヴを引きこもりに誘ったのは、己の親友でさえ、伝説の冒険者の相棒でさえ、蛮族に打ち負かされることがあり得てしまうという、世界への恐怖だった。

　しかし、テリーヴの頭に記憶された冒険者の伝説は、彼に勇気を与えた。自分も彼のような冒険者になれば、自分自身や、親くなった人を、脅威から救い出すことができるはずだ。そう考えた彼は、すぐさま村を飛び出して冒険者となり、修練に励み始めた。
　そうして、タビットにしては十分すぎるだけの期間、経験を積んだ彼はいつしか、乗馬服とサークレットを身につけ、腰に銀の両手剣を下げて、魔法を扱い、肉体を熊のように肥大化させる術を持つ冒険者になっていた。神に仕えることはできなかったが、それ以外の点で言えば、テリーヴはあの伝説の冒険者そっくりになっていた。

　今の彼はきっと、今後どんな恐怖に直面することになったとしても、真正面から立ち向かうことができるだろう。なぜなら、彼の瞳の先には、いつだってあの冒険者がいるのだがら。なぜなら、彼の心の中には、村の皆を守るため戦った、あの親友が生きているのだから。
　例え、その親友が、本当はただの老いた馬車馬だったとしても、例え、その本当の死因が、単なる村の食糧不足だったとしても、例え、現在にまで乗馬服の冒険者の伝説を覚えているのが彼一人だけだったとしても。彼にとっては問題にならない。
　なぜなら彼はあの、子供をからかうホラ吹きだらけの村を、もう飛び出してしまったのだから。

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