燃えるような赤髪に白い肌。その顔立ちは均整が取れているにも関わらず、どこか抜けた印象を与えてくる。
身長163cmほどの起伏の大きい体を常に甲冑で包んでいる。

ナイトメアとして生を受け、生後早々にミリッツァ神殿に預けられる。
神官として神の声を聞くに至るが、ジルダの性格は神官向きではなく、仕事を任されるたびに問題を起こした。
ある時出会った壁の守り人に魔神使いとしての適性を見出され、神官の身分を捨てて弟子入りする。
免許皆伝となってからは、冒険者として一人で各地を回っている。

「師匠！見てくれ！クロの言うとおりにしてみたら沢山魔神を召喚できたぞ！」
そう嬉々として語りかけてきた弟子のジルダ。その背後には数多の魔神の姿があった。
思わずその内の一体と目が合う。射すくめるような視線を向けられ、漸く俺は事態を理解するに至った。
「何してくれとんじゃボケえええええええ！！！」

「お前、破門な」
魔域を破壊して早々、俺は馬鹿弟子に破門を言い渡した。
「な、なんでぇ！？」
「お前が小魔に騙されて魔域なんぞ生み出すからだろうが！」
「おう！いっぱい魔神を召喚したぞ！」
「じゃかあしいわ！誰のせいでこんな目に遭ってたと思っとんじゃボケ！！」
「これは相当ご立腹だな！
一体誰だ！？師匠をこんな目に合わせた輩は！？」
「お前だよ！！！」
「なんとぉ！？」
「しらばっくれてんじゃねえ！
それにいつも駄々ばかり捏ねやがって！お前の面倒なんて見切れねえんだわ！」
「うわああああああん！！師匠が私をいじめる〜！」
「うるせえ！いいから出て行く準備をしとけ！アホ！」
俺は勢いよく扉を閉めるとそのまま拠点を後にした。

「おかえり様だぞ、師匠！
強そうな魔神を召喚できたから見てくれ！」
翌日帰って早々、ジルダが訳のわからないことを宣い出した。
「召喚って、え、おま、どういうこと？？？」
「なんかでっかい蜘蛛がいたから、試しに供物で使ってみた！
そしたら、なんか強そうなのが出てきた！」
「そういうことじゃねえよ！なにやってくれてんだ！」
「え？」
「あー、もういい！そいつは今どこにいる！」
「し、師匠の後ろ…」
「は？」
振り向こうとしたその瞬間、衝撃と鋭い痛みが俺の背中を襲った。
「ぐっ…！」
咄嗟に振り払ったが、背中に何かを注入された感覚がある。
間違いない、これは毒だ。
「し、師匠！？」
咄嗟にジルダの安全を確認する。
なんかジルダが8人くらいいた。なんて悪夢だ。
「心配はいいからよく聞け！そいつはモヴキラって魔神で幻覚を見せる毒を使ってくる！
俺が動けるようになるまで耐えろ！」
「わ、わかった！」
思考が混乱する中、かろうじて指示を飛ばす。しかし、目の前がグラグラと揺れてモヴキラを視界に収めることができない。
「し、師匠！危ない！」
ガギンッ！と金属同士がぶつかったような音が響く。その音を聞いて漸く俺の目も覚めた。
「よし！あとは俺に任せ——」
「よくも師匠を！これでも喰らえ！」
ジルダの放った拳がモブキラの脳天に突き刺さる。
よほど当たりどころが悪かったのだろう。モヴキラはその一撃で絶命してしまった。
「ヨシ！」
ジルダの勝ち誇った顔に滅茶苦茶ムカついた。

結論から言うと、俺はジルダの破門を撤回した。
こいつを中途半端な状態で放り出したら何をしでかすかわからないからだ。
「やったー！これでまだ色々教えてもらえるぞー！」
「はあ…」
何故、俺はこんな奴を弟子に取ってしまったのだろうか。
あまりにしつこく頼みこまれたから、こいつなら最悪魔神を殴り殺せるからいっか！みたいな考えで最終的に許可した覚えがある。
なんと浅はかなことか。
「これからもよろしくだ！師匠！」
俺は泣いた。

大雑把でガサツ。おまけに頭の出来も良くない。
その一方で、彼女の言動からは魔神ですら真意を読みきることができない。
それはひとえに、彼女の規格外の馬鹿さ加減が常識の埒外にあるからだ。

一人称は「私(ワタシ)」。
尊大な口調で訳のわからないことを宣う。

圧倒的な防護で味方を守護することで、その痛みと怒りを返報しつつ、瞬間的に大きな出力を得る。