幼い頃に攫われてから長い時を蛮族の奴隷として過ごしてきた。教養はもちろん、ろくな知恵も力も持たぬ子供が野蛮な主人達の元で生き抜くとなれば、ひたすら従順に自身より強い者の機嫌を損ねぬよう過ごすより他は無かった。
粗悪な環境で息を潜めるように生きる彼の話し相手は、闇の中から聞こえる魔神の声であった。初めこそ怯えて心身を食われまいと争っていたものの、幼いアルヴはその声から様々な知恵を授かった。人属の言葉を、魔神の言葉を、強かに生き抜く術を、そして魔神を呼ぶ方法を。
しかして、召異に必要な徽章も供物も奴隷の身で手に入るはずもなく。その才は本人の中でひた隠しにされ、ある程度身体が発達すれば密偵としての訓練を受けることとなった。人族でありながら蛮族の密偵として暗躍することの屈辱と罪の意識は次第に隷属からの脱却を願う熱量へと昇華し、彼が19歳の青年となった時、ついに奴隷の仲間と共に蛮族の元からの脱走計画が決行された。
しかし現実は非常である。人と蛮族、奴隷と主人、多勢に無勢、何より殺戮への躊躇の有無。弱き奴隷風情の集団はいとも容易く追手に捕らわれ、踏み躙られた。共に立ち上がり蛮族と刃を交えた同胞は、ユキ1人を残して皆惨たらしく殺された。たった1人逃げおおせた。同じ道を歩んだはずなのに自分1人だけが生き残ってしまった。
それ以来、彼の命を燃す炎は己の無力さと蛮族へ向ける憎悪に染まり、力を身につけ蛮族を滅ぼさんとヴァグランツの道を選ぶのも自然な成り行きだった。なお、本人は殺戮への躊躇が無くなるのが遅過ぎたと考えている。
奈落の魔域の討伐にも積極的で冒険者との共同戦線にも意欲的な反面、奴隷時代の仲間と共に蛮族へ抗い自分1人だけが生き残ったことが精神へ深く根を張っているのか、共に旅をする大切な仲間ができることに少し臆病になる

各地を放浪し奈落と蛮族を討伐し続ける中、幼い子供の前で人族に化けた魔物を殺したことがある。トラウマになっていないといいのだけど……

【生まれた環境】
攫われ蛮族の奴隷となる

【幼少期】
魔神から様々な知識を授けられた

【少年期】
12歳の頃、「第四の剣の声を聞いた」
密偵となるため訓練をうけた

【青年期】
19の時、「1人だけ生き残ってしまった」
戦場における魔力の使い方を覚える。多勢との戦いへ備えるすべを身につける「拡大/数」

27歳で「誰かを殺した」