各地の貴族や王族とも付き合いのある『クレスティアラ家』の次女。
代々『弱者の盾となる騎士』を輩出する家柄だが、幼い頃のアシュリーは病弱だった。
様々な知識を得る機会だけは幸い潤沢にあり、身体も騎士としての訓練を経て健康に育つことはできた。
そのまま一族のように領民を守る騎士として育つことを家族は疑っていなかった。
しかし、なまじ賢かった彼女は世界が自分の屋敷と領地だけではないことを知っていた。
屋敷の外、領地の外、自分の知る世界の外を思えば思うほどに自らのこれからが矮小なものに思えてしまうのだ。
もちろんその生き方とて恥ずべきものではない、伸ばせる手には限度があるし、領民は大事だ。
やがて成人し、騎士となってしばらくののちに両親に悩みを打ち明けた。
頭の固い両親との話は平行線、結果はこれまでにない大喧嘩。
「なんのためにこれまで育ってこられたと思っている」「家名に泥を塗る気か」とまで言われれば、何が弱者のための騎士だと激昂するもやむなし。
彼女は屋敷を飛び出し、これまで乗ったこともない旅馬車に乗って行方をくらませ、数日ののちに見知らぬ土地で茹で上がった勢いそのまま、ギルドに飛び込んで冒険者となったのだ。
領民のことを思うと後悔もしたが、どうにもこうにも帰る術がないのだからとやがて前を向いた。

ちょっとした裏話

世間知らずのアシュリーの家出がまんまと成功してしまったのは屋敷の人間や領民の手引きである。
彼女の悩みを薄々勘づいていた彼らはいつか彼女が旅に出て欲しいなと思っていたのだ。
途中から姿を見失ってしまったが、あとは野となれ山となれ、彼女ならたくましく生きるであろう。