迷宮チカトロを住処とするミノタウロスの子として生を受けるも、彼女はウィークリングと呼ばれる穢れの少ない者だった。
親や同族からは爪弾き者として扱われ、ある日とうとう迷宮の外へ放逐されてしまう。
自分と同じ境遇の友人がいなければ、きっと野垂れ死にしていた事だろう。

それから彼女は迷宮からやや東へと進んだ森を拠点として過ごしていた。
狩りをして肉を得たり、川で魚を採ったりで糧を得て日々を生活していた。
友人と一緒ならこんな平々凡々な暮らしに何の不満も無かった。

変化が訪れたのは、ある日一人の人間がこの森へとやってきた事だった。
ヴァイスと名乗った男は、この森の蛮族の討伐に来たと言った。
自分たちは確かに蛮族であったが、人族を襲った事など過去に一度も無くどうして討伐の対象とされるのか理解できなかった自分はそのことを彼に問うた。
彼は、その言葉に一瞬だけ呆けた顔をして笑いながら返してくれた。

──俺が討伐しに来たのは｢国に害を為す存在｣であって、｢蛮族｣という言葉で括るべきではなかった。言葉を間違えたな、ふかいにさせてすまない。──

自分たちにそんな謝罪をする人族など一度も出会った事は無く。
ユーナラーミムは彼に興味が湧いた。

それから、ヴァイスは時間のある時にこの森を何度か訪れてくれた。
彼の話はいつも新鮮で面白く、友人と共にいつも聞き入っていた。
冒険者としての活動報告は、遠征先の風景や遺跡の探索の緊張具合など臨場感に溢れたものでいつもワクワクしながら聞いていた。

自分も、彼と一緒に冒険に出られて。
彼と同じ目線で、そんなワクワクを楽しめればな。
内心でそんな事を思い、彼との冒険劇を時折夢に見る事さえあった。

そんなある日、また唐突に森へと来訪したヴァイスはユーナラーミムにこう告げた。


──お前の事、冒険者ギルドに紹介してきたから。登録を済ませたなら今後は活動よろしくな。──


…………はい？
そんな唐突な彼の言葉と、笑顔で見送る友人(絶対に自分が面倒事に巻き込まれるのを嫌がってこちらを人身御供に差し出す顔をしていた)を尻目に、ユーナラーミムは冒険者ギルド《月狼亭》の門を叩く事となった。

【経歴】
・国王に会ったことがある
・予知夢を見たことがある
・冒険に誘われたことがある

【冒険に出た理由】
・なりゆき