ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

イヴ・シュヴァンシュタイン - ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

冷鉄の執行者(れいてつのエンフォーサー)イヴ・シュヴァンシュタイン

プレイヤー:roido

人は変わるものです。たとえ今日が変わらなくても、一か月後、一年後と時間が経つうちに必ず変化していく。それが人の弱さでもあり、強さでもあるのでしょう。

種族
ルーンフォーク
年齢
4
性別
種族特徴
[暗視][HP変換]
生まれ
魔動機師
信仰
ランク
〈始まりの剣〉
穢れ
12
8
6
8
4
11
6
12
6
成長
15
成長
3
成長
2
成長
6
成長
17
成長
11
器用度
35
敏捷度
19
筋力
21
生命力
20
知力
35
精神力
23
増強
5
増強
-6
増強
0
増強
0
増強
6
増強
1
器用度
6
敏捷度
2
筋力
3
生命力
3
知力
6
精神力
4
生命抵抗
16
精神抵抗
17+2=19
HP
59+2=61
MP
54+2=56
冒険者レベル
13

経験点

使用
83,000
残り
240
総計
83,240

技能

シューター
13
マギテック
10
ウォーリーダー
5
セージ
4
エンハンサー
2

一般技能

コンポーザー
1
オーサー
2
エンジニア
3
ソルジャー
4

戦闘特技

  • 《ターゲッティング》
  • 《牽制攻撃Ⅲ》
  • 《鷹の目》
  • 《鼓咆陣率追加Ⅱ》
  • 《武器習熟A/ガン》
  • 《両手利き》
  • 《二刀流》

練技

  • 【キャッツアイ】
  • 【アンチボディ】

鼓咆/陣率

  • 【怒涛の攻陣Ⅰ】
  • 【怒涛の攻陣Ⅱ:烈火】
  • 【陣率:効力亢進Ⅰ】
  • 【陣率:軍師の知略】
  • 【陣率:慮外なる烈撃Ⅰ】
  • 【怒涛の攻陣Ⅲ:旋刃】
  • 【怒涛の攻陣Ⅳ:爆焔】

判定パッケージ

セージ技能レベル4 知識 10
ウォーリーダー技能レベル5 先制 7
先制(知) +1= 12
魔物知識
10
先制力
12
制限移動
3 m
移動力
15+2=17 m
全力移動
51 m

言語

会話読文
交易共通語
魔動機文明語
汎用蛮族語
魔神語
魔法文明語
神紀文明語

魔法

魔力行使
基準値
ダメージ
上昇効果
専用
マギテック技能レベル10 魔動機術 +1=18 18 +0 知力+2
技能・特技 必筋
上限
命中力 C値 追加D
シューター技能レベル13 21 19 16
《武器習熟A/ガン》 1
武器 用法 必筋 命中力 威力 C値 追加D 専用 備考
牽制テンペスト+1 2H 10 +4=24 0 11 +3=22 魔法の武器+1
牽制デリンジャー+1 1H 1 +5=25 0 10 +1=20 魔法の武器+1
デリンジャー+1 1H 1 +2=22 0 10 +1=20 魔法の武器+1
技能・特技 必筋
上限
回避力 防護点
技能なし 21 0
防具 必筋 回避力 防護点 専用 備考
マナタイトの防弾強化チェインメイル 21 -1 7 回避-1
合計: すべて -1 7
装飾品 専用 効果
軍師微章 ✔MP
ラルヴェイネの髪飾り
ラルヴェイネの金鎖 その他追加
スマルティエの銀鈴 その他追加
背中 セービングマント 回避・抵抗失敗時ダメージ-4
右手 正しき信念のリング ✔HP 精神抵抗+2
左手 能力増強の腕輪 器用
不撓のバックル
バレッドポーチ 弾丸24発収納可能
マギスフィア(大)
ウェポンホルダー
ラルヴェイネのダウンルッカー 魔力+1
所持金
1,830 G
預金/借金
0 G / 0 G

所持品

冒険者セット
弾丸 57発
活性弾 15発
潜行弾 12発
魔香水 4本
熱狂の酒 3本
アウェイクポーション 5本
栄養カプセル

使いやすい調理道具セット
軽い羽ペン
インク
書き切った本*5
普段着
水着
秘密の封蝋*4
魔晶石5*4
マギスフィア(小)
マギスフィア(中)
能力増強の腕輪 器用
スマルティエの能力増強の腕輪 精神
スマルティエの能力増強の腕輪 知力
ミサイルトラッパー
蝙蝠の耳飾り

名誉点
147
ランク
〈始まりの剣〉

名誉アイテム

点数
冒険者ランク1000
専用チェインメイル
専用軍師微章
専用正しき信念のリング
専用デリンジャー
専用テンペスト
専用マギテック

容姿・経歴・その他メモ

キャラ設定 ダイス結果
300年前のあったりなかったりしたかもしれない無駄な知識を知っている
元々暗殺者として生まれた境遇があるがそれは知られたくない秘密なので話さない
一応純潔?である

自身や他の同族のある種の境遇が、ルーンフォークという種族が人造人間で魂が無いから
神の声が聞こえず穢れないのではないかという話と
ルーンフォークの為の神がいない事が問題であるという考えの元
過去に剣が神を作ったという事、剣が魂を作り、種族を作ったという話から
逆説的に剣があればルーンフォークも魂を得られる可能性があるという結論に至り
始まりの剣を見つけ神になり、ルーンフォークに魂を与え、ジェネレーターに縛られないようにする事を
最終的な目的として旅に出る

という真面目な目的ではあるが、まぁ無理だろうからあくまで目標として最終的に神になって
自分の魂の存在の有無くらいは確認出来たら良いかな位に思っている

現実的かつ実利的で合理的、物事の判断は速いタイプだが一般的な物指しとは少しズレがある
感情的な事柄に対し理解はしているが、自身に経験がない為必要性がなければ周りの感情に対し考慮や配慮はしない
例えば自身がコンジュラーだったら情報を得る為に死ぬまで拷問して蘇生をアンデットになるまで繰り返すし
デーモンルーラーだったら人前であれ何であれ必要であれば迷わず魔神も使う

客観と主観を明確に分けて考えている
必要性があるか無いか、効率が良いか悪いか、客観的立場からは1か0かで判断する事が多いが
主観的立場からは面白さなどを優先して非効率、非合理な行動をとったりする事もある
割とボケたり突拍子もない事を言ったりするなど、本来は事務的で暗い性格をしているわけではない

ルーンフォークという種族の利用される為に生まれる生い立ちが個人的に気に入らない
同族だけでなく人々の幸福と世界の平和を本気で願っている
暗殺者という生まれを否定したのは、それによる起こる無意味な死や人生を許容できなかったため
そう思えるきっかけは教育の際に知った神話や物語から、それらを生み、残した人々がいる事実から

死ぬ理由の無い者たちを理不尽な死から救うため、死ぬしかない誰かを殺す
それが多くを救える方法であり、そのためには冷酷非情になる必要があると思っている
人を殺める為の方法しか学べなかった少女には、誰かを幸福にする為にそういうやり方しか思いつかなかった

旅立ちの経緯


暗い金属の壁で出来た無機質な部屋に不快な喇叭のような機械音が鳴り響く
すると部屋の中で唯一の建造物である柱ような巨大な溶液で満たされた
筒状の機械が動き出し溜まっていた溶液が排出されていく
やがて機械音が鳴りやみ部屋が静寂に包まれると、機械の蓋が開き中から少女が現れ
少女はそのまま重力に抵抗することなく床に倒れこんだ
少しして少女はゆっくりと目を開け上体を起こす
背後には今しがた少女を生み出したのだろう、自身の胎盤であった機械が淡い光を放っていて
それから伸びた太い配線がまるで血管の様に部屋に張り巡らされ何処かへ伸びている
「………」
そこから動かない少女の白い絹のような頬から不釣り合いな金属質の首筋へ滴が伝い落ちる
長い金糸のような金髪は地面に広がり、サファイアの様に青い瞳はぼんやりと虚空を見つめ意思がある様には見えない

少女がしゃがみ込んでから少しした頃、鉄の壁の一部が横へと開き男が入ってきた
中肉中背、質の良い服を着ている事を除けば大して特徴もない男だ

『こっちへ来なさい』

低く抑揚のない声で言うと、男は手に持っていた質素な布を少女に掛け腕をつかんで歩き出すと
少女はそれに抵抗する事も無く立ち上がりついていく

二人が出た部屋の外には鉄くずの様に煩雑に並べられた、少女と同じように人の肌と機械の肌を持った男女達が
体の一部を剝ぎ取られ、濁った瞳で虚空を見つめていた

それから少女は男の元で暗殺者としての「教育訓練」を受けていた
道具の扱い、他人に近づく手練手管、周囲に溶け込む方法、常識など最終的には人を殺す為に必要になる知識

『お前は「生みの親の為に働く物」だ』

男の為に人を殺す、それが少女が生まれた意味だと男は言う
男にとってはここで生み出される者達は、金を得るための道具に過ぎないのだろう
少女の他にも先に教育を受けている者もいたが、任務でいなくなった者に再び会う事は無かった

男以外の会話は無く、少女にとって気を抜ける瞬間があるとすれば
常識として学ぶ創世の歴史や、魔動機文明語を学ぶ上での教材となった当時の話ぐらいの物で
人としての扱いは受けていななかった
少女にとってはそれ自体は当たり前で特に疑問に思う事は無かったが
唯一つ男の言う「生みの親の為に働く物」という言葉だけが少女の中で沸々と燻っていた


『次はお前の番だ』

3年の教育期間を得た頃、男は少女に満足げに話す
役割をこなせる準備が出来た少女には名前が与えられた
〈イヴ・シュヴァンシュタイン〉
対象へ近づくための道具としての名前
それから任務に必要な銃と魔動機
任務の内容を聞きながらイヴは慣れた手つきで装備を確認し弾丸を装填する
男はそんなイヴを横目に対象の説明を続けている
順当に行けば暗殺者として、この男の言う相手を殺すだけでいい

「結局、どうして私が貴方の為に何かをしなければならないのかわかりませんでした」

イヴはそういいながら徐に銃を男に向けるとそのまま弾丸を発射した。
耳をつんざく様な轟音が鳴り、男は頭部から血飛沫をあげて後方吹き飛ぶ
男はそのまま床に転がって糸の切れた人形の様に動かなくなった

「育ててくれてありがとうございますお義父さん、貴方が言った通り生みの親の為に働く
 私はその通りにさせて頂きます」

イヴは興味なさげに呟きながら、男の死体に一瞥もくれずその場を後にする
金属の床を踏む足音が徐々に離れていき冷たい金属質の部屋には静寂だけが残った

幾つか部屋を回り、必要な物を集めるとイヴはある場所へ向かう
金属で出来た通路を進んだ先、自分と同じ、しかし動かなくなった同族が眠る部屋
朽ちる事も出来ず、身体を剥がされ、死してなお道具として扱われた者達
自身の材料となった者達を前に足を止める

「お父さん達、お母さん達、貴方達のおかげで私は生まれる事が出来ました、ありがとうございます」

そう一言呟くとイヴは念入りにかき集めた弾薬や火薬で施設を破壊していく
自身を生んだ機械も、親達も何もかもが炎に飲まれていくのを見届け、イヴは施設の外へと向かった

 余りにもあっけなくてくだらない……

自分がどうして仲間達と違い疑問を抱いたのかはわからないし
あの男に利用された仲間達は何故あんな物に従ったのかもわからない
しかし知る必要は感じない

燃えていく自身の生まれ故郷を尻目にイヴはため息を吐く
自分と同じ者があんな間抜けな最後を辿るような者に弄ばれている現実
自分達が剣より生まれた人でないがゆえの歪んだ出生
生まれるのではなく生み出されるという立場
何より自分の生まれがこんなくだらない物である事に苛立ちを覚える

こんな出来事が起こる事を解決する方法があるとすればこの世に一つしかない
始まりの剣を見つけ、この歪みを是正する
ルーンフォークという種族を新たな人としての形に定義しなおす。
それを目指す事が自分の出来る生みの親、殺された同族の為に働くという事だと
イヴはそう判断した。

当然それは殆ど不可能だと理解しているので、あくまで重視するのは結果ではなく過程
その為に生きて死ぬ、それが何もない自分の出発点で終着点
イヴにとってそれが何のために生きていくのか、この先へ進むのに必要な目標だった

それから出発してどれだけ歩いただろうか
鬱葱とした森を抜け街道近くに出たイヴは道の真ん中でばったりと倒れこむ
目指している街への方角は間違っていない、しかし情けない事に外に出たのは初めてだった
知識としての距離と実際の自身の歩く距離はまったく予想と違っていて、魔物や地形の状況で遠回りも余儀なくされる
知識以上に外は過酷な環境だった
ここで少し休むくらいの時間はある

自身の認識を改める必要があるだろうと思いながらイヴは仰向けになり全身の力を抜くと
移動時には意識していなかった青い空の下木漏れ日と深い木々の青々とした匂いと土の匂いが体の緊張をほぐしていく

幾つかあった手持ちの栄養カプセルも無くなって暫くたつ
ここからは更に慎重に行動し体力を温存する必要がある
それにここで寝転がっていれば運が良ければ街道を誰か通る可能性もあるかもしれない
打算的で後ろ向きな思考ではあるが、今のイヴにはこのまま進んでは街にたどり着く前に限界が来る事は明白だった

 休憩も兼ねて状況を整理するべきですね……

ずいぶんと辺境の場所で生み出された物だと、空を見上げながら一人、イヴは考える
目を閉じ、意識を深く沈めて自身の記憶の中を探る、現状を打開するに辺り何から手を付けるべきか

「こんなところで何をしているのだ」

そんなイヴに唐突に声をかける者がいた
バイクの魔道具に乗りここまで来たらしいタビットの青年は訝し気にイヴを覗き込む

確かウサギは鶏肉に似ていて味は淡白で美味しいそうだ
空腹で一瞬武器を武器抜きそうになったが、イヴは思考を切り替える

 なるほど、一番可能性が低いと思っていましたが、これは渡りに船ですね

「知っていますか、ウサギさん。人には3の法則というのがあって……」
 
                                 旅立ちの経緯 終

プロローグの雑記

タビットのレブルに同行させてもらう事になりました
道中フレイヤという女性の一行が盗賊に襲われていたので結果的に助ける事に

報酬があるという事でそのまま護衛に同行する事にします
元々護衛していたのはオズリク、ギセル、ヴロムの3人、計6人での移動になります

道中盗賊との戦闘がありましたが前衛の耐久度には難があり、商人の少女が瀕死になりました
彼らがどういった理由で冒険者をしているかはわかりませんが、最後まで役割がこなせるなら問題ありません
ただ殺傷に躊躇いが見られる事、死に対して感傷的な事は、この仕事をしている限り後に致命的な問題を生みかねないでしょう
戦闘になると殺意を露わにして叫んでいるのにどういった心理なのかわかりません

森にあった温泉は妙な力が働いていましたが、あれが精霊というものでしょうか

街について護衛も終わり、報酬も得ました
暫くは仕事をこなして魔剣の手がかりを探しましょう

半年間

街についてからの半年間は基本的に冒険者ギルドで討伐依頼、手っ取り早く金銭を得るため特に盗賊など人相手の依頼を受け
報酬は全て装備に回し、盗賊退治の戦利品はあるだけ生活費に回して早々に使い切ってしまう
「前の持ち主の様に使えなくなっては意味がないでしょう?」くらいの感覚

殆どを依頼の時間に費やす生活な上、魔物相手は余り無かったので戦闘技術は上がったがセージ知識は特に伸びなかった
隙間時間に自分の知っている300年前に存在した(かもしれない)物語を編纂するのが日課

護衛をしたメンバーとはその後協力して依頼を受けたり交流はある
依頼の為に何度かその他のパーティーに入ったりもしている

第壱話「冒険都市と地下迷宮」の雑記


半年前の護衛のメンバーで地下迷宮に行く事に
目的は冒険者フレイヤの捜索
多少の繋がりは続いていましたが、このメンバー全員で再び、依頼をこなす事になるとは思いませんでした
おおよその状況を聞く限り、死亡している可能性が高い為、本来であれば自分達の最優先に安全を確保すべきですが
彼らはそうではないようで、警戒はしながらもかなり急いで進み、幾つかの罠にかかりながら最奥へ向かいました

音の出る石像は即座に破壊しないのに、扉などは破壊するのは何の違いがあるのでしょうか
周囲の無駄な警戒のお陰で不必要な罠にかかる事になりました

最奥では魔動機文明の機械が配置されていました
かなり強力な兵器で再び前衛が崩壊しかけましたが、どうにも運はあるのかギリギリの所で持ちこたえたようです

そして私達は全員落とし穴に落ちました

第弐話「ようこそ地下都市へ」の雑記


目が覚めると、洞窟にいました
どうやら近くにいたレプラカーンの女性に助けられたようです

地上に行く手段が無いと言われましたが、魔剣があるというのなら何処でも問題ありません
地下都市があるという事で向かう道中、蛮族と接敵、その際問題が発生しました

レブルが敵と会話を試み、停戦を申し出たのです
その行動自体は問題ありません、ただそれを本気で実行しようとした問題です相手が問題です
相手は人の心臓を食らう蛮族、和平の余地はありません
存在しているだけで他者を殺傷した証拠になります、初めから共生の道など無い敵です
後方から襲われる可能性もありますし、今後、この辺りで人が襲われる事は確実でしょう

敵は撤退せずこちらの行動次第で戦闘を継続すると言いました
先制の手番を渡すというならそれで充分です、そのまま引き金を引きました

レブルは戦闘に参加せず、ギセルはそれに対し怒りを露わにしていましたが
前衛と違い戦闘で使えないなら初めから数に入れなければ良いだけなので、呆れはしますがどちらでも良いです

ただ戦う必要が無いと参加しないと言いながら、その相手が落とした戦利品の報酬は貰うという姿勢は少々一貫性が無いので
短絡的で大した考えも無いのでしょう、単純に物事の優先順位と判断力が欠けている様です
私自身も周囲への伝達は怠りましたが、あの場では時間の無駄でしょう
こちらから仕掛ける事が出来て、見逃すという選択肢が存在しないのですから
敵が油断している間に戦う以外、初めから考える事も話し合う事も無い筈です

街に着くとメリカというアルヴの経営する小さなギルドに所属する事になりました
面倒な制約も無く、拠点としては十分でしょう

その後洞窟を占拠した蛮族の掃討を頼まれたので向かう事になりました
道中奴隷にされていたコボルトと戦闘、回収し、最奥へ
街に来るまでの道中にいたオーガ種などがその場を占拠していました
少々魔法が厄介でしたが戦闘自体は問題なく終了、依頼は完了しました

コボルトはレフ太郎と名づけられてギルドでコックをする事になりました
欲望に忠実なだけの生き物は可愛げがあります
そう言えば地下世界の動物は何処から迷い込んだのでしょうね

一か月間


基本的に能動的に他にやる事が無いので、簡単な依頼として街周辺の動物や蛮族を倒したりしていて
余った動物の肉などはレフ太郎にあげている
ブロードソード級のランクになったりしたので、何かの拍子に知り合った子供達などに編纂した物語を話したりしているかもしれない
それをメリカやPTのメンバーが知っているかどうかは自分では一々言ってないので各々次第

第参話「好奇心は兎を殺す」の雑記


久しぶりに大きい依頼が来ました
内容は地下遺跡に向かうランドルフというタビットの護衛です
ただ現地についてみると、護衛対象はおらず、出発して既に一日が経過しているとの事
屋敷にいた従者の故意の行動という事で、それなら急ぐ必要も無いでしょうし
死亡しているなら此方の落ち度ではないですから、死体の方が面倒が少なくて助かると思うのですが
周りはやはりそうではないようです

地下遺跡は妙な仕掛けがしてありました
結果がどうあれ先に進めれば問題はありません

道中にどういうわけかジェネレーターがありました
周りに守る者もおらず蛮族に利用されているようで、私は言いようのない苛立ちを覚えました
それは個人的な理由からです、だからこそコレを見て他者がどう考えるかはどうでもよい事でした

自我も無いままに利用されるだけの同族を生み出すわけにはいきません
即座に破壊しようとしましたが、迷宮には所有権がある様で皆に静止されました

命を生み出す物を持っているだけで放置して、無駄な生命を生み出している状況を放置して
今、蛮族に利用されている彼らの人生の責任を一体誰が取るというのでしょうか
家畜のように消費されるだけの同族を生み出す装置など、破壊してしかるべきです
その権利がルーンフォークである私達には在ります
それ以外の者意見など歯牙に掛ける必要も道理もありません

寿命、病気、事故、捕食、生き物が死ぬのは当たり前です
そして自身の選択によって結果的に死なねばならないのは仕方ありません
ですが初めから利用される為に、死ぬ為に生まれてくる命など認められる物ではないのです
それをつまらない理由で認めざる得ないと言うのであれば、私はそれらの敵という事になるでしょう

結局装置についてはランドルフ達が管理するという事で引き下がりました

それにしても従者が自分の素材を投入したのは驚きです
どの道あの程度では素材が足りませんが、使用すると言う意思があるのなら装置を無下にする事も無いでしょう
もし今後、正しい形で使用されないのであれば、後ほど無理やりにでも破壊します

遺跡の奥でランドルフを発見できましたが、どういう訳かかなり厄介な敵と戦闘状態にありました
部屋の仕掛けを解いた先がアレなら一体この仕掛けの正否になんの意味があるのでしょうか

ウォードゥーム、アレの主砲は強力でオズリクの回復では限界があります
戦闘自体は何とか勝利出来たものの取り巻きのリガークアの一撃でとうとうヴロムが死亡しました

あの様子だと遅かれ早かれこういった結果にはなったでしょうが、場の状況は最悪で
悲観に暮れるのは、護衛対象との帰還や蘇生とやるべき事をやってからでしょうに
彼らは遺跡内で俯いたまま言葉を発そうとしません
ギセル、レブルは勿論、オズリクまで全く動けなくなるとは思いませんでした
彼ならもう少し周りの者を取り纏められると思ったのですが、彼も普通の人の様です

戦闘になれば当然死者も出るでしょう
此処にいたのは彼女の選択の結果です、気負いする必要は誰にもありません
何より実利も無い、生産性も無い、先の考えも無く立ち止まって、この場で悲しんで見せる事に何の意味があるのでしょう
目的の為に切り捨てるなら、個人の感情など最も簡単に捨てる事の出来る物です

大勢の命が弄ばれるかもしれないあのジェネレーターを見て何も思わないのに、味方一人いなくなってコレとは
やはり彼等の感性を理解できても、共有する事は出来なさそうです
多分彼らの感覚は冒険者に向いていません
冒険者として優先すべきは大勢から少数、その為に自身と味方を優先する
小を見据えて大を取りこぼすのは本末転倒だと思います

蘇生の為にはヴロムをある程度早急に運ぶ必要もありますし、ここからまだ敵が来たらどうするつもりでしょうか
何にせよやるべき事は最低限しておく必要があります
一先ず戦利品の確保とランドルフには蘇生の段取りと遺跡で手に入れた情報の共有を取り付けました

ヴロムの死自体は彼の護衛として来ただけで、戦闘で死亡した以上、彼には何の責任もありませんが
ランドルフは自身の行いの結果であるか、一応悩んでいるようで彼がかなりの操霊魔法の使い手である事から
その場の状況の雰囲気に頼って利用させて貰いました
正直な所、蘇生費用が浮くのならそれに越したことはありません

宿に戻り、ヴロムさんの蘇生が行われました
此方はメリカと依頼の終了手続きと報酬の段取りなど話をする必要があったので詳細はわかりません

依頼を終えて一息つくと少し疲れを感じました
ヴロムに関しては戦闘力として重要な前衛の攻撃力でしたが残念です

いえ、この場合は単純に仲間としてでしょうか、確かにあの瞬間引き金に添えた指に力が入りました
実際に仲間の死を目にすると意外と自身の感情の把握が難しい物ですね
その後は周りの反応の方に気を取られて気にする間がありませんでしたが

今回は戻ってきてくれて嬉しい限りですが、どちらにせよティダンの信徒が蘇生されるとなると本人に難しい問題が残りそうです
今度レフ太郎のついでに動物の肉でも差し入れてみましょうか

蛮族に利用されていた同族達は結果的にこちらで回収、状態的に住む場所と教育が必要でしょう
メリカの許可が下りるならこのまま暫くはここで教育をして、無理ならマギテック教会辺りに頼ってみましょう
自身で道を選ぶくらいには自我を持ってほしい所です

しかしこの街を出る度に妙な同行者が出来ますね、旅は道連れというのはこういう事でしょうか

ランドルフの屋敷には興味深い書物もありましたし、ジェネレーターの様子も気になるので一度訪ねておきましょう
魔剣の情報に操霊魔法、今後の私達には必要です

蘇生後、同じ部屋のヴロムの様子が少々気になる所です
穢れようのない私には彼女の感情を理解する事はかなわないでしょうし、出来ると思うべきでもないでしょうね
真っ当な人と呼べないのだろう私には偏見を抱きようが無いのですが、神経を逆なでする恐れもありますし
彼女の問題である以上、彼女自身が何か行動を起こさないのなら、穢れようのない私が関与すべきではありません
何より彼女とは已然として溝がある様に思います
彼女の部屋での様子だと元から外見を隠す理由があるのでしょうし、その他の行動を見るにメリカと同じ種族なのかもしれませんね

一か月間

先月と同じように基本的にはやっている事は変わらず、レフ太郎や猫に餌付けしたり、ヴロムに何か差し入れしたり
ランドルフの屋敷にはそれなりに赴いて、研究の話を聞いたり書物を借りたりしている
前回の戦闘の内容を鑑みて、自身の戦闘知識を戦闘の指揮系統に使用可能に出来るようまとめ直した

第肆話「惚れた病に薬なし」の雑記


前回の依頼から暫くたったある日
ギルドの端でずいぶんとうなだれた様子の男がいました
名前をテレンス、オズリクと同じティダンの神官でどうやら思い人の浮気が気になっているとの事

彼はその浮気調査をオズリクに依頼したいと言い出しました
周りも困惑しつつ受けるようで、黙って見ていた私に皆の視線が集まります

正直、内容はどうでも良いですし、この手の依頼に私は必要でしょうか
ハッキリ言って依頼の内容にも適材適所、得手不得手があると思いますが
ギルドマスターのメリカもどうやらそうして欲しいようですし、手伝う必要があると言うなら構いません
今回は後方待機しつつ荒事になったら参加するぐらいで良いでしょう

テレンスに更に詳しく聞いてみると、浮気調査をして欲しい彼女の名前はラヴィーン
歓楽街の酒場の歌姫である事以外何も知らないと言います
住んでいる場所、仕事以外で何をしているのか、普段の生活の様子、趣味
何一つ、対象のまともな情報がありません
ハッキリ言って呆れます
テレンスとラヴィーン、歓楽街の娼婦達と客、二つの関係を比べても大して差が無いのですから

手がかりは怪しげな男とスラムで話していたという情報のみ
一先ず私達はティダン神殿に行く事にしました
フラッペ、件の手がかりの情報をテレンスに与えた神官に会うためです

彼が言うには男は露出が少なく人相はわからない
ラヴィーンが隣にいたのは間違いないと、また大して新しい情報はありませんでした

次にスラムに向かいました
変装してそれぞれの方法で情報を集めてみると
男の名前はネイサン、ゴロツキ達の元締めをしている元冒険者
それ以上は遺跡ギルドに情報があるかもしれないとの事で私達はそちらへ向かいます

遺跡ギルドの中は陰気な酒場のような場所で
ポーカーをしている男たちにギセルとヴロムが徐に参加していきました

どういう訳か賭けでヴロムが勝ち、そのまま彼らが情報屋という事で話をします
どうやらネイサンは街の様々な情報を協力者を介して集めているらしく
そのどれもが悪用されれば厄介な事になる情報ばかりです
ラヴィーンは協力者の一人のようで少々気になる点が出てきました
テレンスとの関係もこの為なのでしょうか

ヴロム達はそれからも必要なのかどうかわからない情報を買ったりしていましたが
意味があったんでしょうか
フレイヤに関しては本人に聞けば良いのでは

しかしどうにもきな臭い相手が出てきました、思っていたよりも厄介な相手かもしれません
これは只の浮気調査では無くなってきましたね
テレンスの依頼としては、この辺りで十分な気がしますが、周りはまだ調査を続ける様です
調査続行自体は同感ですが

私達は続いて夜の酒場へ向かいます
月夜の歌姫、店としてかなり繁盛しているようで、店内は喧騒で溢れています
その中にはランドルフの姿がありましたが、今は変装もしていますし依頼とは関係ないので無視しておきます

ネイサンは魔剣に関しても調べているようですが
彼は研究に関しては口が堅いというか、重要な部分は勿体ぶって話さなかったりして
自身を大きく見えようとするタイプなので大丈夫でしょう

店内にはラヴィーンの姿もありました
数名がラヴィーンに話しかけてみますがいかにもな態度ではぐらかされてしまいます
その後彼女の歌が始まりました、どうやら呪歌の類を扱うようです
他者の許諾の無い魔法は犯罪ですがこれは良いのでしょうか?

正直得られた情報とこの呪歌から考えると、仕事終わりに拘束して話をした方が手っ取り早い状況です

歌が終わって間もなく、酔っ払いがラヴィーンに絡み始めました
個人的には今後の状況を鑑みると一度どうするのか観察していても良かったのですが
ヴロムが酒に当てられたのか意気揚々と動き出します

結果的に言えばそのまま酔っ払いと戦闘になりそれを撃退
ヴロムが集中攻撃を受けてあわや瀕死
手加減をする武器ではないので、まぁ互いに死ななくて良かったですね

怪我の巧妙というべきか、ラヴィーンと話をする切っ掛けが出来ました
彼女が情報収集の協力者である事は明確なので、レブルがオズリクを情報提供者として優秀な人材である事を
それとなく会話に盛り込みます

この辺りの悪知恵を働かせるのは上手いようです

彼女自身についてはいまいち判然としませんでした
結局の所、魚が餌に食いつくのを待つしかないようです

その後オズリクだけが店内に残り私達は退店し、外の離れた所で待機します
閉店の時間になった頃、オズリクが外に出てきました
そして見送りに出てきたラヴィーンにオズリクが声を掛けます
すかさずレブルが妖精魔法で会話を届けるようにして成り行きを見守ります

テレンスの話から押しに弱いという情報もあってか上手く翌日の予定を確保したようです
これで少しは情報を得られる可能性が見えてきました

翌日、念のため感知魔法をオズリクに掛けて送り出します
律儀に約束を守る用で尾行も無く、一人で待ち合わせ場所に向かいました

そして日が暮れて帰ってきた彼はひどく疲れた様子で何も得られなかった報告したのです
心拍数を見るに当人なりには何か遭ったように見えますがどうでしょうね
結局荒事は避けられなさそうです

これが……本当に只の浮気調査ならどれだけ良かったでしょうね……

スラムに向かい、ネイサンとラヴィーンが話している現場を直接抑える事になりました
スラムに向かう道すがら妙な気配がする事に気が付きます
皆が警戒して確認すると、そこにはテレンスがいました
彼も神官ですし、戦闘の役には立つでしょう、そのままついてくることにになりました
何より帰れと言って突っぱねて、下手に単独で動かれても困りますしね

寂れた倉庫の一角に彼女達はいました
どうやら上手く話がまとまっていないようで、ラヴィーンが協力を拒むとネイサンは有無を言わさずに首を締めあげます
彼女はぐったりと動かなくなり、ネイサンは彼女を抱えて奥へと進んでいきます

皆で突入しますが、ネイサンは部下に後を任せてそのまま姿を消しました
ドーンリッパー3体とオーガとの戦闘なり処理

少しネイサンの正体が見えてきましたが、ラヴィーンは……?

戦闘後、彼らが落とした手記はどうやら汎用蛮族語で書かれているようで、読む事が出来ませんでした
辛うじて描かれている内容から地図のようで、印がつけられている所へ行ってみます

そこには廃れた廃坑と放置された設備がありました
見張りは一人、気づかれない様に回り込み中を覗き込むと、ネイサンと仲間が一人、
そして少し離れた位置にラヴィーンがいました

施設の裏口から侵入し、ラヴィーンの救出を優先します
オズリクが彼女を助け、ネイサンを止めると約束し、テレンスもそれに続きます
そして、ネイサンとの戦闘が始まりました

皆が一様に彼女の事を助け出そうとする様子は美しい物なのでしょう、ただ私にはどうしても言いようのない違和感が残ります
ただラヴィーンは一体どういう理由でネイサンに協力していたのか、不審な点は解決していません
そして、その見落としが問題を起こします

ネイサンとの睨み合いになり最初に動いたのはラヴィーンでした
彼女は彼女を愛していると言ったテレンスを背後から攻撃したのです

床に血が滴り落ち、テレンスはそのまま床に倒れ動かなくなります
辛うじて息はある様ですが手当てしなければ、それも続かないでしょう

彼女は振るえながら言いました、彼に逆らうのが怖いのだと
あの時穢れのある体を受け入れてくれると言ってくれていたらと
その視線はオズリクに向けられていて、彼は酷く苦い顔をして拳を握りしめています
彼女の足が巨大な蛇の胴体へと変わり、ラミアへと変貌しました
それを見たネイサンは笑みを浮かべて声を上げます
ネイサンの正体はオーガウィザード、共生のしようが無い人類の敵です

自然にある絶対の法則は弱肉強食
別に殺したいなら殺せばいい、只やられる側にも同じ権利があるだけです
倫理とか善とか悪とか罪とか罰とかそれは人のルールであって別の世界で生きる物には関係ありません
守りたいものがあるのなら、それを脅かす対象は排除する
それ自体は生まれも育ちも関係ない
そうしなければ、失うだけです

誰かを救いたい、人を救いたい、蛮族を救いたいそれら全てが出来るなら苦労はしません
全ての物が互いに手を取り合い笑っていられる世界
土台不可能なのですそんな事は
それは神様ですら出来なかった事
始まりの剣は人を生み出し、調和の剣と解放の剣は対立し、それを見た第三の剣は自らその身を破壊しました
それが結果です、それが限界です、大陸を作り海を割った神ですらそれは出来なかった
故にすべてを救う奇跡などこの世界には存在しない

そんな風に世界は出来ていないから、私達はそれを受け入れるしかないのです

どちらかしか救えない、その天秤を前にして両方を取る事は許されない
どちらか選べないなら、どちらも捨てるしかないのです、選べないものに権利は無い
全てを救う、そんな夢はただ傲慢でしかありません

だから自分で守れる物を、この手で掬える物を取りこぼさない様にするしかないと私は思います

彼は殺さねばなりません、ですがこの場で彼女を救おうとしている人達はそれが必要ないと思っている

この戦いは私の戦いではありません、依頼は彼を倒す事ではないのです
ならここは当初の予定通り、荒事の処理をすべきでしょう、彼らなりのやり方で

ラヴィーンは一度はオズリクに手を出すも、オズリクは必死にラヴィーンに声をかけています
その結果ラヴィーンはそれ以降は傍観に徹していました

戦況はネイサンの不利に傾き、戦闘は私達の勝利で終わります

互いに向き合ったままのオズリクとラヴィーンを横目にテレンスの手当てをすると
彼は傷を押さえながらもすぐに起き上がりました

その後の事は割愛します
結果的には今回のやり方で正しかったのでしょう
オズリクの正面から向き合った対話の結果だと思えます

ネイサンは連行され、依頼は完了となりました

岐路


一辺の明かりも届かない地下世界
人が作り出した太陽が消えてなお、街の明かりで世界は照らされている
周囲は喧騒でにぎわい、夜と言われる時間になってなお人通りは多い
そんな中を依頼を終えた一行は帰路に着く

些細な浮気調査から、街を揺るがす陰謀を暴き、一つの愛を守った
そんな満足感からかその足は疲労を感じさせないほど軽やかに見える

そんな一行からイヴはゆっくりと距離を離していく
いつも隊列の後方にいる事、周りの特別にこちらを気にしたりはしない事から
彼らから気取られずに離れるのは容易だった

人々が賑わい、仲間達が進む魔石の照らす大通りを離れ、暗くすすけた裏路地へとイヴは進んでいった

明かりの無い裏路地でマギスフィアを起動する

「シャドウボディ、ジャンプブーツ」

詠唱を受けたマギスフィアは命令通りにその魔法を実行する
体にはくらい影が纏わりつき、靴は機械仕掛けの跳躍靴に変化する
イヴが軽く膝を曲げて飛び上がると、その小さな体はあっさりと建物の上を通り越し
屋根の上へと着地する
そしてそのまま屋根の上を飛び跳ねるように街を進む

目的は、連行されたネイサン

オーガウィザードが連行されるのは前代未聞だ
奴は街に出入りいていて、守りの剣すら搔い潜って見せた
他にどんな情報を持っていて、協力者がどれくらい居るのかわからない
オーガの人化を見破るのは不可能だ

もし仲間がいて誰かが襲われたら?
もし奴が逃げだしたら?

何より、もしラヴィーンの共犯を裏付ける証拠があったら?
ネイサンとラヴィーンの関係はスラムで目撃されている
情報屋もネイサンが何をしていたか知っている

奴に時間を与えるのは危険すぎる
もしも何かがあったとしたら、仲間達が行った事が全て無駄になってしまう
たとえそれがオズリクとラヴィーンの約束に反したとしてもそれだけは避けなければならない

最短距離を抜け、やがてネイサンを連行する衛兵達に追いつく
彼を連行する馬車はゆっくりと街を進んでいた
建物の上を少し先回りし狙撃しやすい位置へ着く

「ターゲットサイト」

詠唱を受けた最後のマギスフィアが変形し照準器へと変わる
警戒していない相手を仕留めるのは容易い
後はいつも通り引き金を引けば良いのだから

眼前にネイサンの頭部が迫る

正直今日の結果には感心した
仲間達は天秤の振れ幅を自身を担保にして入れ替えた
誰かを救うために自ら危険な方法を選び、その結果、一応は賭けに勝って見せたのだ
戦わない選択肢があった訳ではない、それを彼女が蹴ったから
それでなお、彼はそれを貫いた
きっと彼女が攻撃を続けても、彼が手を出す事は無かった筈だ

そして少なくとも自分以外はネイサンを殺さなくて良いと思っていた
殺し合う道だけが答え出ないとラヴィーンに示すために
でもこれは誰かがすべき事なのだ、それが皆にとって最善ではなくとも最良の結果を生み出すのだから

引き金にかかる指に力が入りゆっくりと動き出す

ニャー

「なっ……!」

突然の鳴き声に引き金から指を離す
そこにはいつも餌をあげている黒猫がいた

一体どうやってこんな所に上がってきたのか、暗がりで丸く大きくなった金色の瞳が怪訝そうにこちらを見つめている

「今は何も持っていませんよ……」

いつも餌だけ貰って大して懐きもしない現金な奴
いつも通り、何の気なしに手を伸ばすと今日は何故か頭を寄せて来た
思わぬ行動に自然と緊張が緩んでしまう

「ふふ、今日は機嫌が良いんですね、何か良い事がありましたか……?」

黒猫は当然答えない、少しこちらの顔を見詰ると軒先を伝って大通りの方へ走り去ってしまった
それをイヴは見届けると先ほどの場所へと振り返る

ネイサンの姿はもうない、追いかけたとて気づかれずに狙撃するのはもう無理だろう
危険は残る、しかしもうどうする事も出来ない

自分は撃てなかった
自分にはそれしか出来ないのに役割をこなせなかった
どういう訳かそれを余り気にしていない自分がいる

それを咎める者は此処にはいない、諫める者も、正しいと言う者も

ぼんやりと佇むイヴの首筋を冷たい地下の風が通り抜けていく

テレンスが助かったのは運が良かっただけだ、毎回こうはならない
彼らはこれからどれくらい同じような選択をするのだろう
その時自分はどうすべきだろうか

自分には引き金を引くしか出来ない
でもそれ以外の選択肢が他にあるとすれば……?

それが最悪の危険があったとしても……?
その責任は誰がとる……?
どんな災害が起きる……?

今の自分にはそれは選べない
選ぶべきではない
でなければ自分はきっと弱くなってしまう

大通りの光の中を進んでいった彼らが頭をよぎる

彼らにはどうしてそれが出来るのかわからない

イヴはそのまま引き返し路地裏へ降り立つと、閑散とした大通りを抜け帰路に着いた

冷鉄の執行者

テレンスの依頼の一件が終わって、暫くたった頃
各々がそれぞれの時間を過ごす中、イヴも自身の日常を過ごしていた

朝の狩りを終えてイヴはギルドへ戻る
射撃の練習と食糧調達、それから周辺の治安維持を兼ねた日課のような物だ

一階の酒場は大した規模ではないし、レフ太郎が来るまでは料理も美味しくなかった
色褪せた木板に埃の乗った梁が古ぼけた印象を与える

そんな酒場の一角にはレブルとヴロムが何やら話し込んでいる
丸テーブルの上のスケッチブックが広げられ、そこには幾つかの絵が描かれていた
会話も弾んでいるようだ
内容からして前に話していた服の話だろうとイヴは察して、目を逸らした

あの手の話はどうも引っかかる
違和感があるのではなく、ただ胸に引っかかる物があるのだ

二人の脇を通り抜け、厨房へ行きレフ太郎へ獲物を引き渡すと、イヴはランドルフの所へ向かう
この街に豪邸を建て、魔剣の研究に勤しむ彼は、優秀ではあるがどうにも難しい性格をしている
自分の好きな事を話しているうちは大した問題は無いし、ギセルに魔法を教えている辺り面倒見が良くはあるのだろう

扉をノックするとランドルフの使用人であるシャオⅡが扉を開けてイヴを出迎える

使用人にしては客に対してかなり砕けた発言をする事がある自分と同じルーンフォークの女性
正直な所、彼女の事は少し苦手だ

軽く挨拶をして中に入ると、イヴはランドルフの所へいつも通り案内された
道すがらレブルの事についてあれこれ話すシャオⅡに、イヴはてきとうに当たり障りない返事で返す

ランドルフは相変わらず研究に勤しんでいて、以前遺跡から見つけた物の解読が今の所もっぱらの研究対象らしい
彼が持つ知識には及ばないが、理解が出来ないほどではない

魔剣についての話なら上機嫌で彼は話す
イヴはそれについて幾つかの質問をする
ランドルフはそれについて回答する
そんな問答を暫く繰り返していると、ランドルフは唐突に何かを思いついて、自身の研究に没頭し始める
そうなると周りの声が聞こえなくなるので、イヴは幾らか本を借りて退席する
それが今の所、二人のお決まりの流れになっていた

イヴは部屋にある蔵書の内の一つを手に取る
それは魔剣を手にした青年が邪龍を倒し、神の使いと恋に落ちる
大雑把言えばそんな英雄譚を元にした恋愛小説だった

学術的な物から、物語まで魔剣という単語があれば何でも良いのか、シャオⅡの趣味もあるのか
ここにある本の種類は雑多だ
普段は興味のない内容だったが何となく気になる事があって今日はそれを借りて出ていくことにした

イヴは街の宿泊地の側の地底湖の近くまでやってくるとてきとうな場所で腰を下ろした
湖近くの通りにはそれを眺めるためのベンチなどが設置されている
昼もとうに過ぎて周り人の往来はそれなりだ
暗い地下ある巨大な湖は、街のマギトーチの光を反射して、キラキラと輝いている
雨の降らない地下ではこの地底湖は街の人の生命線の一つだろう

本を読みながら思い出すのはテレンスとラヴィーンのやり取り
ネイサンを倒した後、手当てを受けた彼が真っ先に口にしたのは、悲観でも落胆でも恐怖でもなく、ラヴィーンへの愛だった

 「我ながら情けない話ですね……」

本から目線を外しイヴはぼんやりと呟く
二人のあのやり取りを自分は見ていられなかったのだ
それは何故か、シャオⅡや朝のレブル達の話の違和感は何故か

考えてみると簡単な事だった

 私は嫉妬したんですね……
 必要とされている同族に、愛されて生まれ来る同族に、何の貴賤も無く愛し合える相手がいる彼らに
 自分にはそれが無かったから

 この名前も顔も手足も全てどこかの誰かを殺す為に用意された物でしかない
 何処にも「私」である必要など無かった
 何処にも「私」を望む相手はいなかった
 だからだろう、それらを見てひどく胸が締め付けられるのは
 自分の役割をこなさなければならないという焦りもきっとそこからくるものだ 
 何もない自分では何をすれば良いかわからないから

 自分には出来て、彼等には出来るのは何故か
 彼らはきっと少なからずそれを知っているから、きっと別の物が見えている

マギトーチの光が落ち始めた頃、地底湖から吹いた冷たい風が肌を撫でる

 少し長いし過ぎましたね……

 「あ!イヴだ!」

立ち去ろうとした矢先、唐突に声をかけられて振り返る
同時に赤みがかった栗毛の少年が走り寄ってきた
歳は丁度10歳程だろう如何にも年頃の少年といった活発そうな笑顔をしている
背丈はイヴより頭一つ低い、同年代の子より少し小柄だ
名前はアマド、イヴが時節子供達に物語を話す切っ掛けを作った少年だ
偶然近くで遊んでいたらしい

 「何か読んでたの?」

少年はイヴの手元を覗き込みながら質問する

 「……ええ、まぁ、次のお話の参考になりそうだったので」

イヴは咄嗟に本を背後へと隠した
アマドは特に気にすることなく話を続ける

 「そっか、楽しみにしてるね!また冒険の話も聞かせてよ、オレもいつか冒険者になるんだ!」

 「そうですか、ならもっと勉強しないといけませんね」

冒険者には死が付きまとう、そういう意味も含めての発言だった

 「やってるよ!オレが強くなったらイヴの冒険にも連れて行ってくれるよね!
  バシッと前で守ってあげるよ!」

そんな発言に対してアマダはただ純粋に言葉を返す

 「……もっと背が伸びたら考えましょうか」

イヴがそういうと、もう少ししたら伸びるんだとアマドは両手を振り上げて抗議する
そのまま他愛のない少し話をして、夕飯の時間だからとアマドは帰っていった

辺りの通りには明かりがつき始めている
イヴの背中に当たる風は少し暖かさを取り戻していた

少年の夢が叶うかはわからない
或いは別の夢が出来るかもしれない

それならそれで構わない
闘う事以外に存在価値のない躯
それしか知らない冷たい鉄の躯

ただこの本を読むような、誰かのほんの一時の甘い夢を幕が閉じるその時まで守るためなら
自身の役割に迷う事は無い

一か月

いつものルーティンは変わらず
他者への自身の感情について考える事が増えた
メンバーとはほとんど最低限しか接していない

第伍話「邂逅」の雑記


今回の依頼は都市防衛
ネイサンの一件から街への攻撃の計画が発覚した
守りの剣の儀式で発生する結界の消える隙を狙って奇襲する計画があるとの事

それに対してこちらはスラムに展開
住民をあらかじめ非難したのち、街におびき寄せ衛兵含め、それらを包囲殲滅する作戦

衛士長カルドハイムはその作戦に信用できる戦力として私達に助力を依頼してきました

スラムへの被害を出しながらゴブリンの群れと大型の魔動機を倒した直後、宿泊区が襲撃されたという情報が入ります

私達は宿泊区に急行しました

火の海になった宿泊区の奥
そこには瀕死のカルドハイムとランドルフ、シャオⅡが倒れていました

立っていたのは二人の男女
ドレイクの男と人間の魔女
                                           □
魔女はランドルフの石板を持って撤退                         □□□
ドレイクとはそのまま戦闘になり、圧倒的な能力に首の皮一枚の所で持ちこたえて、撤退さ□□□□□功しました
                                          □□□
戦いには勝利しました                                 □
 
                      □                    □□
でも、宿泊区の襲われた人の  ほとんどは □□□しまった               □□
                      □        □
私は                            □□□               □
                             □□□□□     
わたし  は                        □□□ 
           まも れ な か  た         □                      □
                                     □□              □□□
                       □             □□             □□□□□

守るべき物

目的の場所へ真っすぐ走る
焼けた肉と煤の匂い、辺りから立ち上る黒い煙は息を吸う毎に喉を焼く
一面は焼けて崩れた建物と未だ燃え続ける炎で埋め尽くされている
瓦礫の下には吹き飛ばされた子供達の四肢が
道端には苦悶に歪む子供達の頭が転がっている
それらが一様にこちらに目線を向けていた

 「……っ!」

イヴは肩で息をしながら飛び起き頬を拭う
宿泊地の一件から毎晩同じ夢を見ていた

隣で怪我をした黒猫がイヴを真っすぐ見つめている
たまたま見つける事が出来て連れ帰ったのだが
思いのほか大人しい
軽く撫でてやると何事もなかったかの様に丸くなった

 疑問はあった敵の戦力で街に入ったとして、何をしたいのだろう
 ただ街を襲う?わざわざ裏工作までして最後の詰めが余りにもおざなりではないか?
 ネイサンがそんな重要な作戦を吐いたのは何故?
 
 疑問はあれど選択肢は無かった
 敵が来る事に変わりない
 狙いが何であれ敵を食い止める事が結果的に被害が抑えられると思っていた

 でも情報はあった筈だ、スラムで仕入れた情報に敵の狙いが魔剣だと
 前回の一件はネイサンの言うあの方の計画だったと

 被害は確かに抑えられた、あの魔動機を止められなかったら被害はもっとひどかっただろう
 正しい事をした筈なのに、間違っていなかった筈なのに
 息が苦しくて仕方がない

 それ守るとその為に戦った筈がそれらは手元から零れ落ちてしまった
 あの時真っすぐ進まずに誰かを探していたら、誰かを助けられたかもしれない
 あの時ランドルフ達以外にも連れて帰れば助かる人がいたかもしれない

 でもそれは出来なかった
 敵を排除する必要があった、目の前の情報を持つ助けられる者を優先すべきだったから

当たり前の事をした、そう思う自身の胸を締め付ける感情をイヴは今だ理解できないでいた
 
襲撃から翌日の事、宿泊区の襲撃地点周辺は廃墟以外何も残っていなかった
一晩中燃え続けた瓦礫は未だに近づく物を拒絶するように熱を放っている
いつも人の喧騒に賑わっていた通りには灰と煤が積もり、衛兵が行き来する足音しか聞こえない
死体は焼かれ潰され、吹き飛ばされて、殆どが誰のどれなのかも判別できない

イヴは踵を返し避難所へ向かう
集会所を間借りしている避難所には多くの人が寄り集まっていた
誰もが暗い顔をして俯いている
怪我人の手当てをしている教会の人間だけが世話しなく辺りを動いていた
子供達の目は赤く腫れ、夜通し眠れなかったのだろう、日が昇ってもまだ眠っている子供が多い

見知った子もいるが「あの子」はその中に見当たらなかった
それはつまりそういう事だ

敵の戦力は圧倒的でそれこそ奇跡でも起こらない限り勝ち目はなく、そして仲間達が死ななかったのは紛れもない奇跡だ
儀式の終わりが近く、敵が撤退しなければ終わっていた
一部は自身の力不足が招いた結果だ

何も出来なかった、そして今も何も出来ずにいる
救出すべき対象の為にそれ以外を見なかった
生き残った人達に声をかける事も出来ない

最良の判断をした筈なのに、無力感と罪悪感で胸が押しつぶされそうになる

 少し前なら当たり前な事と受け入れていた筈なのに
 わからない
 やっぱり私は弱くなってしまった

走り出しそうな足を抑えて、歩き出す
此処にいても出来る事など何もなかった
誰を意識するでもなく、イヴは静かにその場を後にした

地下世界の月明かりの無い暗い部屋
隣のベッドではヴロムが寝息をたてている
イヴの目には暗闇は何の意味もない
イヴは机に置いてあった水瓶からコップに水を注ぎ一息に飲み干す

 犠牲を払って守った物を守り抜くためにはこれが正しい事だ
 彼らは必ず殺す、残った物の為に必ず
 だから今はやるべき事をするしかない

何処からくるか解らない体の熱を拳を握りしめて抑え込む
奥歯から軋む音が頭に響いた
 
 全ては救えない、街の人々の被害は最小限に抑えられた
 だから救い上げた物の為に最善と思う事をする……
 でなければ奴らに勝てない
 弱くなった自分では駄目だ、もっと強く在らないと
 
 冷たい鉄の様に

あの光景が目の前から消える事消える事は無く
先の見えない深い暗闇は少女の目でも見通す事は出来ないでいた

一か月

深く眠れなくなった
負傷した猫の世話やルーンフォークの教育など基本的にはやる事は変わらず
傍目には様子はあまり変わらない
以前以上に蛮族の討伐依頼を受けている

第陸話「憧れは海より深く」の雑記

あれから一か月が経ちました
街は復興の為にあちこちで忙しなく人が動き、何かを叩く音が聞こえています
日常に戻れない「一部の人々」を置いて、日に日に何も無かったかのように街は戻っていきます

ジェネレーターの生成が終わり、シャオⅡの子供がギルドに突撃してきました
名前をせびり小うるさく騒いでいると音からランドルフ達がやってきます
私達が受けた護衛任務の際入手した魔剣に関連した石板を盗まれたそうですが
研究自体に問題はなさそうで、捜索の方も別の所に依頼したとの事
そしてどうやらこちらのギルドでランドルフ以外の二人は寝泊りする事にするそうでした

正直な所あの二人には余り係わりたくはありませんね
会話の内容がどうも疲れます……

そんな折街の生命線の一つである地底湖に問題があると、私達に依頼が来ました
生き残った人々の為にも面倒な問題は直ぐに片付けるべきです
何より銃を握っている方が無駄な事を考えなくてすみます

地底湖に向かった私達を待っていたのはドワーフの女性でした
名前をトーラ、地底湖で暴れている魔物の所へ私達を案内してくれる今回の依頼人です

街のマギトーチの光を反射する地底湖は街と同等近く大きく、深い
暗い地下都市を差し引いてもほぼ向こう岸が見えず、水底は暗い漆黒の闇です

今回の目的は地底湖の魔物の討伐ですが、漁で使うような大きな船があるのなら泳がなくてすみそうで助かりました
訓練で泳ぎは出来ますが、経験が乏しいのは事実なので本音を言えば避けたかったのです

ただ出発の際、まるで芋の怪物のような格好になったヴロムから袋に入った荷物を差し出されました
妙に可愛らしく装飾された袋の中身は水着だそうで、私は袋とヴロムを交互に見ながら何とも言えない気持ちになりました

嫌だったわけではありません
どうしたら良いかわかりませんでした
今まで「私」の為に何かを用意された事は無かったからです

水辺に行く予定などなかった筈なのに、何の為に私の分までこんな物を用意したのかわかりません
彼女にどんな利点があるのか
彼女がどんな事を考えているのか
そういう事が真っ先に私は頭を過ります

でも覗き穴から漏れる声はそんな打算的な事を感じさせる物ではありませんでした
それはそうしたしたかっただけというだけの調子で
街の子供達のような、「あの子」のような……私には理解できない類の物です……

手を伸ばして受け取ると
妙にこそばゆい感覚がしたのに戸惑って、私は思わず目を逸らしました
彼女にそれがどう見えたのかわかりませんが、彼女は気にした風には見えませんでした

着替えの為に船室に行き、袋の中身を見て私は硬直しました
袋を開けると中身はごく普通の水着でした
そう、本当にただの可愛いだけの水着です
白と黒を基調にした、ビキニのセパレートタイプに短いパレオが付いている水着
多分普通の女の子というのはこういった物を着るのでしょうが、自分にはいまいちピンと来ません
水中戦の可能性もあると考えると、金属鎧は装備すべきではないですし
普通の水着にもタクティカルアドバンテージがあると言えるのでしょうが……

---これを私が着る……?---

そう考えると途端に顔が熱くなるのを感じて、私は生まれて初めて頭を抱えました
別に私は美少女に見える様作られているので、それで当たり前ですから見た目は特に問題は無いと思いますが
ただこれはどういう事でしょう、これを着て自分が行動するのを考えるとどうにも落ち着きません
本当に彼女はどういう考えで私にこんな物を……?
そもそも彼女が来ている物と違いすぎませんか……?

悶々と考えながら船倉で暫くの間水着と睨みあった後、何とか着替えを済ませ外に出ると
ギセルとオズリクも水着で既に甲板に待機しているのがみえました

そうして戻った直後大きく船が揺れます
突然湖面には巨大な渦潮が発生し、眼前にシーサーペントが現れました

ヴロムはそのまま飛び込み
レブルがドラゴネットに乗り飛び立ちます
それぞれが攻撃を加えるとあっさりと敵は湖面に巨大な水しぶきを上げて崩れ落ちました

ですが事態はそれでは終わりません、渦潮は消えることなく私達は中心に引き込まれ波に飲まれました
渦潮の中心には漆黒の穴がぽっかりと開いていました

体に当たるひんやりとした水の感覚に目を覚ますと、そこは見た事のない景色が広がっていました
輝く太陽に照らされた白い砂浜と海
照りつけられる体の熱を足元を行き来する水面が攫って行く
透き通った青い水の中をキラキラと鱗を輝かせた魚達が来訪者を気にする素振りも無く
自由にその身を躍らせている

奈落の魔域とは思えない美しいと誰もが素直に言えるだろう光景がそこには広がっていました
辺りを探索していると、ヴロムやギセルはまるで子供の様にはしゃぎだします
空から探索していた

遊ぶ二人を置いて、私とレブル、そしてオズリクの三人で
白い外壁で包まれた街へ向かいます

そこにはヴィオラと名乗るエルフの女性が居ました
たった一人でいた事と、この領域の状況を見るに彼女がここの主で間違いないのでしょう
だからと言ってどうする事も出来ません
彼女が言うにはここには後、小さな森と同じく小さな岩礁地帯があり
岩礁地帯には洞窟があり、そこの探索はまだしていないとの事でした

その話を聞いた私達は魚を沢山抱えたヴロム、ギセルの二人と合流し
そのまま洞窟へ向かいました

岩に覆われた岩礁地帯は波が緩やかに打ち付けられる音が響き
弾けた水の飛沫が太陽を反射して眩いくらいに輝いています

そんな光景を眺めていると、私はふと何かに駆られるような衝動に負けて
何となく水に手を付けて両手で水を掬い上げました
手から流れ落ちる水に太陽が当たる様はとても綺麗で
少しだけ、このまま此処にいても良いのではないかと思わせる程でした

そんな事を何度か繰り返していたら、何を思ったのかヴロムが此方に水を掛けて来たので
お返しに思いっきり掛け返してやりました

ヴィオラの案内で洞窟にたどり着くとそこは水で完全に水没していて、泳いでいくしか道はありませんでした
レブルの魔法のお陰で水中で呼吸が可能になり私達は難なく先へ進みます

洞窟を抜けると私達は吹き抜けた広い場所へと出ました
どうやら話に出た森の真下に出たようです
中心には奈落の核が不自然に浮いていました
木漏れ日が差し込む洞窟の中心で浮かぶ穴のような黒い球体はこれ以上に無いほど異質な雰囲気を醸し出しています

念のためその他に気になる物が無いか、レブルのドラゴネットの力で吹き抜けから外に出て
周辺を探索しましたが特にその他に行方不明の人物などはいませんでした

私達は核の場所へ戻り、ここに残ろうと言うヴィオラの静止を振り切りそのまま破壊を試みます

するとドロリと黒い液体が核から吹き出し私達の肩口程までせりあがってきます
そして眼前には二体の魔神、そして様子の豹変したヴィオラ
どうやら彼女は魔人に憑依されているようでした

私達は隊列はバラバラで、身体はほぼ水中という状況で3体の魔人を相手にする状況に陥りました
オズリクが危険な状況になるも私達はこれを速攻陣形で片付けなんとか討伐する事が出来ました

その後核を破壊すると、核が大きく広がりあたりの物を勢いよく吸い込みだします
私達は次々に吸い込まれそこで意識を失いました

次に目が覚めたのはギルドのベッドの上でした
どうやら漂流していた私達をトーラが船で回収してくれたようです
ヴィオラも無事帰路に着いたようで、私達の依頼はこれで完了となりました

いつまでもこの格好のままでいるわけにはいきません
私はヴロムに一応水着のお礼を言って、そそくさとその場を後にしました

自室の部屋の扉に背中を預けると急に力が抜けました
火が出そうなほど顔が熱く感じます
きっとこの時の自分の顔は他人に見せられた物ではなかったでしょう
さっさと部屋を出たのは自分の緩んだ顔を見られたく無かったからです

本当はこんな事をしている場合ではないと思っている
でもこの内からくる感覚はどうしようもなくて……

無意味なやさしさは一瞬で自分達を危険に晒す
それは間違いではないと思う
でも今は、少しだけゆだねてみたいと思っています

新しい風


街の復興は更に進み、地底で寄り集まった人々の底知れない力強さを主張するように
彼方此方で物が運ばれ、人が流れていく
戻らないモノはあれど、それを感じさせぬ程に新しい物がその上に積みあがっていた
きっとこの分で行けば街が元の姿になる日も近いだろうとイヴは思う

騒動の収まった港は落ち着くどころか騒々しさを増し、漁師や市場の人々が左右行きかっている
そこから離れた地底湖の岸辺にイヴは座って遠く、それを眺めていた

 「不思議な物です……」

呟いた言葉は風に乗って湖畔へと消えていく
イヴがあの場所を出ていつの間にか一年が経った

本の中で見た出来事と現実に体験する出来事は全く違った

偶々出会った筈の人達と一つ屋根の下、共に色々な敵と戦ってこれたのは不思議でしかない
少なくともあの場所からでた瞬間は全く予想していなかった事だ
何よりそうやって得た自分の変化に驚いていた

前回の依頼を踏まえ、自身の水泳の練習の為に訪れたのだが
実際は唯の建前だ

岸辺を湖の水が昇り、そこへ座るイヴの水着を濡らしていく

必要な時引き金を引く事だけが強さではない
必要な時行動する事が正しさではない

今もそう思えるわけではないけれど
それでもと言える事、それ以外にもと思える事が
時に何かを変えるという事を彼らと街の人々を見て良くわかった

確率や合理性、理屈ではない何かが時に運命を変えるのだ

同族達も街の人々の様に普通に生きる事を選んで世界で生きていけたら良いと思うけれど
その実、あの蛮族に生み出された者達やそれに利用された者達の様な者がきっと世界には沢山いる
少しでもそんな者達を救う事が出来るならそうすべきだと思っていた
そしてその方法はもしかしたら自分が思う他にもあるのかもしれないと思い始めている
救う事の出来る数は少なくても現実的な方法が
何にせよ自分がこれから先、生き残っていればの話ではあるが

  強く在ろうと思う反面、どうすれば良いのかわからなくなってしまいました……
 
以前までならただそうある事だけの物に疑問を持つことは無かった
その結果、最大ではないにしろ最良の結果を得られた筈だった
問題はきっと疑問を持つ事ではない
疑問を持ったままでいる事だ
それでは最大も最良も選べない、それでは何もかも取りこぼしてしまう
撃つのも撃たないのも、自身で選択して結果に責任を持つべきだ
でも今の自分にはその選択を迫られた時、選ぶ事が出来るだろうか
自分の思う正しさは果たして本当に正しいのだろうか

  わからない……この感覚を何というべきなのでしょうか……

考えに耽っていたせいか急に湖畔の風が冷たく感じて、イヴは咄嗟に自身の体を掻き抱いた

いつかそういう状態での選択を迫られる時が来る
その結果は今のままでは良い物にはならないだろう
それはどれほど鉄の様に心を固めようと分け入ってくるからだ

何故かふと、イヴの頭にいなくなったあの子の顔が過る

  ああ、分け入ってきたのはそういう物ばかりではありませんでしたね……

それらも紛れもなく自分を変えたものだ
そういう事があるという他人事ではない
自分に向けられたが故の経験
それらのお陰で今日は此処にこんな格好で座っているのだから
 
 「これでは……らしくないと、怒られてしまいます……」

イヴは一度深呼吸するとその場から立ち上がり、身体についた砂を払った

 私は生きていてやるべき事がある、そしてやりたい事も
 であれば立ち止まる事は出来ない
 自分の中に未だ理解の範疇に無い事はあれど、多少の事はきっとどうとでもなる
 「私」は独りではないのだから
 私は私の選択に責任を持てば良い
 目指す物は変わらない

 先ずはもう一度、今度は幻ではなく本物の太陽の下で皆と過ごす事が出来たら良いと思う

イヴは軽く伸びをすると着替えのためその場を離れる
そんなイヴの背中を淡い緩やかな風が髪を撫でる様に通りすぎていった

一か月

かなり眠れるようになった
ルーティンはさほど変わらず、肉の代わりに魚を捕りにでたりした、釣果は良くない
整えてやるだけだった2d6と3d6に髪の切り方を教えた後日
二人にレフ太郎が滅茶苦茶なトリミングをされている所に出くわして、初めて声を出して笑った
一応見つけた段階で二人は止めが、体の半分くらいは滅茶苦茶に刈られてた その笑い声を仲間が見聞きしたかはわからない
黒猫の傷は治ったが、居たり居なかったりする
宿泊区の子供達の所には今も物語を話しに行っている
お話の他にも何か出来ないかとせびられたので子供達にも歌いやすい地上の様子を絡めた歌を作っている
作るに当たって歌もこっそり練習しているが、仲間が聞いたかはわからない
以前と比べると、態度はともかくよりいろいろと能動的に行動するようになった

作った体の物
うちへ帰ろう


風はとおく
雲はゆるく
うつろいゆくときよ
花はつぼみ
木々は休む
暮れゆく 大地

恵みくれたおひさま
赤く染まり沈むよ
やさしい やさしい
夢をみるのかな…

鳥は空へ
虫は葉陰
それぞれの家路よ
一番星光った
うちへ帰ろう
あたたかい我が家へ

(歌: 水樹奈々 作詞: 江幡育子 作曲: 江幡育子 編曲者: 磯江俊道 江幡育子)

第漆話「温泉狂」の雑記


端的に言えば今回の依頼は護衛依頼でした
かなり貴重な体験が出来た依頼です

いきさつはというと、いつも通り一階で2d6と3d6の学習中、食事をしていた他の仲間達が妙な違和感に気が付きます
視線の先にはいつの間にか一人で座って食事をとるフレイヤが居ました
いつもなら色々と騒がしい人物の筈ですが、どういう訳か今日は様子が違います

聞けば石板を取り返しに行った結果、成功はしたものの帰って来たのはフレイヤだけだったそうです
仲間の死が原因でふさぎ込んでいると見るのが自然でしょうが
正直な所、あの戦力で勝ち目があったようには思えません
オズリクが話していて見ても結果は芳しくなく、様子はおかしいままです

可能性としては、たまたまあの二人はおらず、戦った相手が別の相手で話通りの結果になったか
或いはそもそもフレイヤ本人ではないか……
ディスガイズは時間が……何らかの洗脳系の魔法か……アンデット化して操る?
どれも現実的ではありません
オーガを従えている以上、最悪……その可能性も……?

ありうるけれど、それは余りにも最悪で突飛な考えに思えてなりませんでした
そうであってほしくないという願望が、彼女は仲間を失ってふさぎ込んでいるだけだという先入観が
私が違和感に口を挿むのを止めさせました
以前ならそうはしなかったと思いますが
あの宿泊区の一件を思い出して、彼女の境遇を重ねてしまったのかもしれません

考えを巡らせている間にどうやらギセルが新しい依頼の話を聞いたようです
詳細は依頼人から確認するという事で、依頼人の所へ向かう事になります
その際、ヴロムが半ば拉致するような形でフレイヤを連行しました

着いた場所は公衆浴場、それも遠い東の文化の様式の珍しい外観をしていました
本で見た事がありましたが、実物として見る事になるとは思いませんでした
この地下には一体どれだけの物が流れ着いているのでしょうか
最早探せば何でもある気がしてなりません

そんな奇妙な浴場に足を踏み入れた私達を出迎えたのはホノカと名乗るエルフで今回の依頼人でした
彼女はひとしきり温泉という物への情熱を語った後、私達にそれを掘りに行くための護衛を依頼してきます
報酬は申し分ありません
ひとしきり話をしてそのまま浴場に入る事になり、翌日の朝集合する事になりました
ランドルフといい護衛を頼む人物は何処か妙な性格をしていますね

翌朝、集合地点で待っていると何処からともなく地面をハンマーでたたく様な地響きが聞こえてきました
見ればそこには鉄杭の様な形をした四足歩行に両腕に採掘用ブレードを付けた巨大なゾウぐらいはありそうな魔動機が
此方に向かって街中を歩いてきていました
それは私達の目の前で止まり、中からホノカが現れます
どうやらこれで温泉を掘るつもりの様です

衛兵のアインが飛んできて当然の様に事の状況について問いただしましたが、今回もどういう訳か不問になりました
見た目の割には頑丈そうではありませんし、護衛が必要というのも分かりましたが
もう少し何とかならなかったのでしょうか……

出発した先の目的地は、地下でも苔類などの光で明るい岩山地帯でした
地下でも数少ない植物類が生えている地帯で、薬草などが取れたりするようですが
その分生き物や蛮族がうろついているようです

ホノカが温泉の場所を探り当てる魔法を使い、そちらの方角へ歩みを進めると、
薬草の群生地や不快な正気を放つ植物や
なぜかパイソンがいて、確保のため追いかけると、ファンガスキノコに突っ込んだり蛮族との戦闘になり
スケールイーターのいる川を魔動機を渡らせるために丹念に処理して抜けました
すると私達に聞き覚えのない言語で何かが語り掛けてきました
どうやら妖精語のようで、妖精魔法を使うレブルにしかわかりません
どうやら近づくなというような事を言っているようですが
ホノカと何人かは聞く耳を持ちません
私も妖精という物自体には一つ興味があったので先に進むのは構いませんでした
その先で道を塞いでいた石の壁をくり抜き、私達はようやく目的の場所へとたどり着きました

そこにはマナタイト鉱石があり、どうやらこの下に温泉がある様でした
そして採掘を始めたところ、辺りからぞろぞろと妖精たちが現れたようです
説得も行い、一応話が通じた者もいましたが、マナタイトを奪いに来たと思っている
妖精の抵抗は止まる事なく、そのまま戦闘に入りました

ようですというのは私の目には何も見えなかったからです
ルーンフォークの私には妖精が見えない、当然の結果ですね
ただ声が聞こえる事、自身のつけている装飾品のお陰でそこに何かがいる事はわかります
実に奇妙な感覚です
撃った弾が虚空へ吸い込まれるように消えていく
キラキラとマナが煌めいて、手応えと共にそこにいる見えない何かの存在がハッキリとわかります

今後の戦闘経験としてはこれ以上に無い体験です
対象が見えない状況でも比較的問題なく戦う事が出来るという事が分かりました
ただ不意打ちにはどうしようもなさそうですね……

虚空から砂嵐が発生したり風や地割れが起こったりと、聞こえるとはいえ対処の難しい戦闘ではありましたが
途中妖精側が戦意を喪失して引いた為、温泉の切削作業に集中する事ができました
本音を言えばもう少しこの状況で、戦闘を続けたい所でしたが仕方ありません
向こうはただ危険な蛮族とは違いますしね

暫く掘り進めると、見事に地面から温泉が噴き出しました
妖精達もこの光景には驚いていたようです

その後私達はひとしきり温泉を堪能して帰路に着きました

個別ならばともかくあの二人を倒すにはまだ力が足りません
もっと経験を積んで実力を上げなければ……
残された時間はそう長くは無い、そんな気がしてならないのです

第捌話「世界樹が枯れるまで」の雑記?






ごめんなさい
私には貴方だけを救う選択肢が選べなかった
辛かったでしょう
生きたかったでしょう




ごめんなさい
私には自分の為に他者を使い潰すという選択肢を選べなかった
そういう者が許せなかったから
生き方を変えられなかったから




後悔はしているし
これからもきっとし続ける
だけど私は何度でも同じ選択をするでしょう




だからごめんなさい
そうなる前に守ってあげられなくて
そうなる前に助けてあげられなくて




さようなら
最初に「やさしさ」を教えてくれた人




どうかこんな選択肢しか選べない非情な私を許してください
本当にごめんなさい

惜別


思わぬ形でフレイヤと再会し
館の探索を終え
イヴ達は館の地下に足を踏み入れた

そこは明かりで照らされた地下洞窟
通路は広くかなり奥まで続いていて、異常なほどの腐臭が鼻につく

目的は奪われた石板の奪取だが
イヴにとってはそれだけではなかった
ランドルフに直接呼び出された自分はハルを止めて欲しいと依頼された
そして生死は問わない、話し合いで止まる筈がないからと言われている
それにはイヴも同感だった
彼女は殺すと決めていた

だから彼の内にどんな思いがあるにせよ、そう切り出した彼の殺しの依頼をイヴは受けたのだ

 彼女は殺さねばならない
 理由は復讐ではない、宿泊区であの目を見た時はっきりとわかった
 アレはあの男と一緒だ
 自分の目的の為に他者を食い潰す
 生まれた者の意思も意味も簡単に踏みにじって無にしてしまう
 存在を許してはならない
 アレを見過ごす事は「私」自身を否定する事と同じだ

 そして館で見つけたメモを見て、それは改めて正しかったと認識した

仲間達も顔をしかめながら先へ進むと
一匹のダークトロールが気絶したまま壁に繋がれていた

そこにあったメモは他者に別の魂を入れ替える研究について書かれていた
イヴはフレイヤはその成功例、ではそこのトロールはつまりは失敗例だろうと考える

ギセルがそのダークトロールを起こし
話をしようとするが案の定殆どうめき声にしかならない

イヴが無駄な事をとそう思っていた時、目の前のそれは自分を見て確かに言葉を発した

 「ーーーーーーー」

確かに言った言葉はそのままイヴの耳を抜けていく
目の前の者が発した言葉の情報と状況を自身の脳が理解を拒んだ
そして感情のままに叫びそうになった
しかし直ぐに感情を切り離す
訓練を受けたイヴにはそれが出来てしまう

 この感情は今の目的には関係のない物だ
 やるべき事をするためには私情は切り離すべき物だから

 でも今の言葉だけでこの状況がどういう事になっているのかわかってしまった
 彼が誰で自分が何をしなければならない事も

イヴは冷静さを取り戻している間にギセルがダークトロールを殴ろうと拳を振り上げた
イヴは反射的にそれを止めてしまう
咄嗟にそれらしい理由を述べてギセルを諌めると
ギセルは大人しくそれに従った

 「イヴさんを見て何か言ったように見えましたが何かわかりますか?」

ヴロムがイヴを見てそう言うがイヴはいいえと答えるしかなかった

仲間達が関係のない事に気を取られる必要はない
何よりこの後の事をイヴは邪魔されたくは無かった

もはや話す事もない一刻も早くこの仕事を終わらせたい
そう思う気持ちがイヴを誰よりも先に奥へと進ませた

先で見つけたメモは彼が受けた行いの一端を垣間見せる物だった
そして更に奥へと進みハルの元へと一行は辿り着いた

予めフレイヤにはリターンの魔動機を破壊しに向かってもらい
いつもの五人で突入する

各々が彼女に質問するが帰ってくる答えに大した価値など無かった

イヴにとって今必要な情報はあのトロールを元の体に戻せるかだけ
そしてその答えは予想通りだった
ならばもうこれ以上生かしておく意味は無い

戦闘が始まり余裕の表情を浮かべていたハルが一瞬顔を曇らせる
イヴ達以外の存在を確認する台詞を吐いた
フレイヤが魔動機を破壊した
作戦の成功を確信した一行は一気に攻勢にでる

ハルはフレイヤの仲間達を繋ぎ合わせたアンデットを呼び出すも
それを一行は降し、ハルを拘束した

仲間達の質問に拘束されてなお飄々と答えるハルの口からは自分本位の事しか出てこない
そこには後悔も自責の念も無かった

それにイヴは驚かなかった
仲間達がだんだんと不愉快さに席を立ち
最後に残ったレブルにイヴはこの拠点に残っている見張りの排除を頼んだ

仲間達に自分が依頼として殺しをする所を見られたくなかった
そして彼の事に邪魔が入って欲しくなかったからだ

二人きりの空間に沈黙が続く
先に口を開いたのはハルだった

机の上の本をランドルフに届けて欲しいと言う
それにはハルが研究していた魂を移す方法が書かれている物だった
イヴはそれを承諾した

対してイヴのいまさら意味のない質問にハルの意味のない答えが返ってくる
実験に使った者の事など覚えていない彼女はそう答えた
その答えを最後にイヴは迷わず引き金を引いた
そしてイヴはハルの死体に一瞥もくれる事なくその場を後にする

向かった先は壁に繋がれたダークトロールの所
イヴは迷わずその拘束を外すと体を抱きとめる

 結論は出ているけれどそれをするのは苦しくて仕方がない
 私はこれから一緒に冒険に出たいと言った少年を殺さねばならない
 私はこれから自分に大事な事を教えてくれた恩人を殺さねばならい
 私はこれから信念の為に外の世界にあこがれた唯の少年を殺さねばならない
 私はこれから必ず守ると誓った者を殺さなければならない

 この少年を救う方法が無いわけではない
 今殺したハルの体に入れ替えれば良い
 何処かの少年でもいい
 或いは仲間達でも

 しかしそれは出来ない
 それでは同じだ、あの男やハルと
 私はそれを許容するわけにはいかない
 私が引き金を引いたのは、ハルの犠牲になった人々に
 大切な物を失った人々の心に少しでも安寧を送るためだ
 自分の為に他者の命を利用する
 そういう選択肢を自分で引き金を引く事で自ら潰す為だ

 生きた年月はこの少年の方が長い
 けれど自分は胸を張ってこの少年のお姉ちゃんで居たかった
 本の中のヒーローに、多くを救う英雄に
 それこそがこの少年が冒険に出たいと憧れた理由だったから
 それは自分も同じだった
 
 だから選べない
 自分本位ではいられない
 これ以外の選択肢など私の中には存在しない
 それを選ぶという事は私が私ではなくなるという事だ
 二度と冒険に出る事も無いだろう
 
 だからごめんなさい
 私にはこんな方法しか選べなくて
 これが救いだとは言わない
 貴方もそう思ってくれていると傲慢な事は思わない
 だからごめんなさい

イヴは変わり果てた少年の体を強く抱きしめながらゆっくりとその顎下から銃の引き金を引いた

燃えそうな物を集めて少年の亡骸に火をつける
黒い煙を上げながらそれは黒い塊へと変わっていく
ありがとうと最後に少年が呟いた言葉がやまびこの様に頭の中で反響する

 「あぁ……ぅああぁぁ……ああああ!!」

それを見つめていたイヴは膝から崩れ落ちて
嗚咽交じりの慟哭が洞窟に響く
押さえていた感情が決壊した様に涙と共に溢れ出す
少年が受けた仕打ちを考えると悲しくて、悔しくて、こんな結末しか選べない自分が恨めしい
感情のままに少年の為に糾弾する事も出来ない自分の非情さに嫌気がさす
たった一人の少年の為に何もしてあげられなかった無力感に押しつぶされる

目の前で大切な人が唯の物へと変わっていく
街は壊されてその人が存在した事実はもうどこにも残っていない
あの笑顔も何ももう見る事は叶わない
もっと前に一度理解した筈なのに、ずっとずっと重くその事実がのしかかった
どの様な形であれ自分はその可能性を自ら否定したのだ

ただ茫然とイヴは死体が燃えていくのを見詰ていると
燃える炎の熱が撫でる様に頬を伝う涙を乾かしていく

 「そうですね、もっとしっかりしなければ……」
 まだ自分にはまだやるべき事が沢山残っている

イヴは立ち上がると、魔法で自身の姿を自分で模す
時期に仲間たちもこちらに戻ってくるだろう
その時に情けない顔ではいられない

イヴは踵を返してハルの死体を回収しに戻る
その場にはそんなイヴを見送る様に燃えた炎の熱だけが残っていた

故郷


イヴは街の宿泊地の側の地底湖の近くまでやってくるとてきとうな場所で腰を下ろした
湖近くの通りにはそれを眺めるためのベンチなどが設置されている
昼もとうに過ぎて周り人の往来はそれなりだ
暗い地下ある巨大な湖は、街のマギトーチの光を反射して、キラキラと輝いている

 あの子に最後に会ったのはここでしたね

一度破壊された街は元通りになり
あの時と変わらない日常が戻っている
元に戻らないモノも沢山ある
それでも周りに広がる景色は以前と同じように其処にあった

話したい事は沢山あった
仲間達の事も話しておきたかった
けれどそれはもう叶わない

同族の死体の山から人を殺す為に生まれた自分はあの継ぎ接ぎのアンデッドと同じだ
利用される為に生まれて、用がなくなれば同じ様に死体の山に積み上げられる
そんな役割すら放棄した自分には生きている意味が無くて、怒りをその意味にした
本の英雄の様に誰かの為になる事をして多くを救う事が正しい役割だと考えた

でも本当に求めていた物は何処かで誰かに「私」という存在を認めて欲しかったのだと思う
これもある意味ルーンフォークとしての性なのだろうか
結局は自分を必要としてくれる相手を求めている

そういう感情に気づけたのもあの子や仲間達、街の人のおかげだろう
地下にきて1年に満たない期間で本当に様々な事があった

マギトーチの明かりも落ち、ふと地底湖から吹いた冷たい風がイヴの肌を撫でる
それもあの時と変わらない
時間は何事も無く先へと進んでいく
大してイヴの頭の中にあるのは以前の事ばかりだった

 どうしてでしょうね……ここにいても誰も来るはずがないのに

余りにも無駄な自分の行動に自嘲気味に笑う
引き金を引いたのは自分だ
誰よりも理解している
そんな事はあり得ないし、その資格も無い

 帰りましょう……

 「あ!イヴだ!」

立ち去ろうとした矢先、唐突に声をかけられてイヴは反射的に振り返る
余りにも出来過ぎていて、眩暈がしそうなほど心臓が跳ね上がった

そこには宿泊区の子供達がいた
らしくない動揺を隠そうと冷静を取り繕う

 「皆さん、こんなところでどうかしましたか?」

 「大人がここでイヴを見たって言ってたから来たの!」

 「みんなイヴ達の事話してるよ、凄い冒険者だって」

イヴの質問に子供達は我先にと口を開き直ぐに収拾がつかなくなる
話題は魔物の襲撃や地底湖の魔物や温泉や次のお話だとか遊びだとか
ころころと話が変わっていく
必死に話す子供達の様子を見るだけで自分達の行って来た影響がどういう物かよくわかった

 「わ、わかりました、話はまたの機会にしましょう
  街灯の明かりも点き始めています、今日は解散しましょう」

一方的に話を聞いているだけで、文字通り一日が終わってしまう
静止するイヴに子供達からは不満が出るも渋々受け入れた

 「「それじゃあ、またねーーー!」」

大きく手を振りながら笑顔で去っていく子供達にイヴも軽く手を振り返す
その表情には自然と笑みが零れていた

あの時と変わらない日常が戻っている
周りに広がる景色は以前と同じように此処にある
それこそが自分達が守った物

あの子が笑っていた世界は変わらず此処にある
子供達が笑っていられる場所が此処にはある
自分を必要とする人達がここには沢山いる
なら守り切らないといけない

アルクィバスを止める
仲間達とならきっとそれが叶うだろう
そして皆でもう一度外の世界に帰還する
子供達に物語の中だけではない本当の空を見せる

あの子が笑っていた世界を守る、その為なら私は全てを掛けられる

子供達が去っていた道から視線を外しイヴも歩き出す
すると路地から何処からともなくいつもの黒猫が足元に現れた

 にゃ~

 「貴方も変わりませんね……」

足元で餌の催促をしながら座り込んだ黒猫を抱いてイヴは再び歩き出す
進む大通りはいつかの仲間達が歩いていた時の様に魔石の明かりで眩しいほどに照らされていた

一か月


「誰」に聞かせようも出来ない歌を作った
朝帰りやギルドに帰ってこない日などが殆どだった
利き手出ないほうで食事をしたりしている
(両利きでの射撃練習や体や右目の能力確認などの為)

作った体の物
願い


いつも心のどこか 誰かをもとめていた
こんな私を必要なんだといってくれる

広いこの空の下 そんな人に逢えたら
少しだけ自信を持っていける 気がしていたから

風が吹いてる 木々がざわめく
それだけで 不安な心
優しい声で 名前を呼んで
ただ それだけでいいの

いつも心のどこか あなたを探していた
こんな私を そのままでいいと いってくれた人

夜が明けてく 今日が始まる
あなたが微笑(わら)うこの世界
私にできる全てをかけて
守りたいと願うの

大切なものを知った 信じあうことを知った
愛することを知ったの‥‥

風が吹いてる 木々がざわめく
それだけで 不安な心
優しい声で 名前を呼んで
ただ それだけでいいの

夜が明けてく 今日が始まる
あなたが微笑(わら)うこの世界
私にできる全てをかけて
守りたいと願う
全てをかけても
守りたいと願う 強く


歌:引田香織 作詞:tomo 作曲・編曲:西脇辰弥

第玖話「色褪せた記憶」の雑記


ハルを倒してから暫くしてランドルフが石板の解読が終わったとギルドに飛び込んできました
彼自身を縛っていた物が軽くなったせいか以前よりも明るくなっているようです

石板の記す場所はどうやら地底湖の中にある様で彼はそこに行く手段の実現に頭を抱えているようでした
水中へ潜る事の出来る魔動機を設計したは良い物のそれを作成する職人の協力が得られなかったらしく
私達にどうにか説得してもらえないかと直談判しにここへ来たと本人は捲し立てます
依頼した端から話も聞かずに断られたようで取り付く島もない状況らしいのですが
地下からの脱出は多くの人の夢ではあると思うのですが一体どういう事なのでしょうか
しかしランドルフからはそれ以上の事はわかりません
私達にとっても急務の問題なのでいまいち状況は理解ないままその職人の元へと向かう事にしました

件の職人がいる武具屋へ入ると若い職人が私達を出迎えてくれました
人当たりの良さそうな快活な青年という印象を受けます
どうやら彼は私の事を知っているようでしたが、どうにも大げさな話でした
二つ名も私が名乗った事は無いので正直な所、面と向かって言われると少し恥ずかしさがあります
一応彼の言うようにエプロンに名前を書いてあげましたが、アレにどれほどの意味があるのかいまいち自分ではわかりません
彼に目的を話すと直ぐに奥へと通してくれました

そこは暗く窓のない部屋で巨大な石の炉が熱気と赤く燃え盛る炎を口から吐き出しています
周辺には金床や火かき棒、大きな火鋏、大小のハンマーが炉の前から手の届く範囲に乱雑に置かれたり
金具を打ち付けた丸太の周りに引っ掛ける様に吊るされたり
バケツに入った鍛冶水や溶接用の砂など様々な道具が置かれています
足元には鉄が叩かれた際に出る屑や灰が積もっていて工場は少し埃っぽい印象を受けます
そんな場所で作業をしていたのはダークドワーフの男性で、彼の持つイグニタイトの加工技術が潜水艦に必須だという話です
名前をガフという職人で、話してみるといかにも気難しい職人という感じの人でした

彼は私達の話にも聞く耳を持ちません
話に興味が無いというよりは聞く気がないというような様子です
何か理由がありそうですが、それを知る術が私達にはありません
そんな時、工場に置いてあった写真立てが目に入りました
そこにはドワーフの女性が写った写真が収められています
ここではかなり珍しい物です

同行していたフレイヤがその女性について聞くとガフは自身の妻だと説明してくれました
自分が地下に来る前、100年程前に冒険に出てそれっきりだそうです
向こうでは10年程になりますが、自分の事などもう忘れているだろうと諦めた様にガフは言います
確かにそうかもしれませんが、彼はきっとそうなっている事が恐ろしいのでしょう
彼女の隣に自分以外の誰かがいる事が、自分の事など忘れてしまっているという現実を
外に出て実際に目の当たりにするのが恐ろしい
でなければ100年も大切に自身の仕事場に写真を飾っておく筈がありません

彼の時間は大切な人と離れてから100年間止まったまま、前に進む事が出来ずにいる
見た目の割に女々しいと思わずにいられませんが、私情なので黙っておきます

気持ちがわからないでも無いですが、もう二度と会えない相手という訳でもなく
目の前にその機会がありながらそれに手を出さず
自分が100年思う程の相手の10年を信じられないというのはなんだか腹が立ちますね

そんな事を考えていると彼が最後に妻が作った「コカトリスの丸焼き」が食べたいと呟きました
未練が残りすぎていて呆れます

まあそれで協力が得られる可能性があるならと私達はその料理について調べる事にしました
火竜の胃袋で食事した後、手始めにコカトリスを狩りに出かけます

以前温泉を掘りに行った道中見つけた花畑に到着するとそこへギセルが罠を張ります
ランドルフが言うにはコカトリスはここのヘンルーダの花しか食べられないそうです
そもそも地下に生息していなければどうしようもないですがその心配は杞憂でした

暫くするとコカトリスが3体現れました
体長は5mほど、鶏に似た風貌に脚や尻尾が爬虫類の様になっています
どう見ても丸焼きにする大きさではありませんし、気軽に仕留められる強さでもありません
いくら大味な料理を作るドワーフといえどもこれを食卓には並べないでしょう
一応仕留めた後、軽く料理してみるも味も良く無いようでした
私とレブルは食べませんでしたが、他が食べ進めるとフレイヤが突然石化しました
半ば予想通り肉にも石化の毒がある様でなおの事その可能性は消えました

後日スラムに行き、情報屋を頼り、怪しい肉屋にいってコカトリスの肉の調理法を聞いたり
色々と歩き回って酒場で貴族の宴の席で食べた事があるという情報を経て
図書館で調べてみると、見事にその料理の情報を見つける事が出来ました

その正体は子豚の上半身と鶏の下半身を繋ぎ合わせた肉詰めという何とも悪趣味としか言いようがない物でしたが
一先ずはその材料を手に入れる為肉屋に向かってみると
何とも莫大な額の金銭を要求されました
一体この地下で誰が買う事が出来るのでしょうか……?
金銭の代わりに困っている事はないか聞いてみると、仕入れを邪魔する魔物がいるそうで
それを討伐する事になりました

餌代わりの腐りかけの何かわからない肉を持たされて向かった先はまたあの花畑です
私達が倒したコカトリスが倒れていて周辺には肉をくらった生き物が石化していました
マギスフィアのスコープで探してみると数キロ先に巨大な飛行物体が見えました
距離からすると恐ろしい大きさですが、仕方ありません

私達がそちらの方へ向かうと向こうから近づいてきます
その正体は30mもあるロック鳥で、羽ばたきだけで簡単に飛ばされそうになるぐらいです
互いに連携して討伐する事は出来ましたが、この巨体では討伐証をどうするか悩みました

しかしギセルはいつの間にかとても強くなりましたね
本人の努力の結果でしょう、後はもう少し自信がついて余裕が出れば良いのですが

無事に肉屋に帰還した私達は材料を手に入れ、ギルドに戻ります
料理はレフ太郎にお願いして、一応の完成は見ましたがやはり実物は悪趣味でした

私達がそれを鍛冶場に持っていきガフに見せるとガフは無言で席に着きゆっくりと食べ始めます
そしてしっかりと完食すると一言うまいといってランドルフから設計図を貰い仕事を始めると言いました

紆余曲折ありましたがこれで潜水艦の作成の目処がたったようです

なんだか下手な依頼より疲れた二日間でした
ただ最後に残った食材でコカトリスの丸焼きをみんなで作りましたがそれは良かったと思います
悪趣味な料理でしたが味は悪くはありませんでした
ただこれをコカトリスと言って宮廷料理として作る文化を私は好きになる事は無いでしょうね
実物を見て、なおかつ戦ってみるとなおの事です

あとはやはり実際の石化の様子を見ると右目の魔力を弾丸にのせる研究を何処かでしてみたくなりました
弾丸を直接見たり、飛ばしてる弾丸を見ても弾丸が石に変わるだけでしたから
やはりマギスフィアを介してどうにかすべきでしょうか
それなら魔力を強力にする事も出来そうですしね

一か月

普段やってきた事をしながら、ランドルフやマギテック協会などを訪ねて石化の魔眼の活用法を調べた
そのおかげでマギスフィアの扱いは上手くなったが、自分以上のクラスの人間が少なく研究自体は余り進まなかった
実際問題アイデアは出たが時間が足りない
新しいマギテックの魔法を開発して、銃に石化の魔力を送り込めるようにするとか
マギスフィアを介して目と同じ石化の魔法陣を作って重ねたり増強するとか、ため込んで収束して放つとか
実現すれば比較的容易に対象を非殺傷で無力化できるのではないかというのが動機

その他にもフレイヤの寿命の寿命を魔動機とハルの研究を応用すれば、解決できるのではないかと思索している
ラットへの実験で課題はあるが移植は成功、しかし試作した魔動機が上手く機能しなかった為中断
設備や資材が揃っていれば可能性はあるが現状では難しく、臨床試験の時間の確保、技術の出所
何より技術の危険性の問題などでこれ以上続けるべきか悩んでいる

最終話「黎明」の雑記


潜水艦が出来る約束の日の朝、私達を残して黒百合停がもぬけの殻になっていました
現状時間が無かったためそのまま約束の場所へ向かうと、途中様々な人に声をかけられました
街の人々も魔剣の入手に向かうと知っているようで、今までの行いの賞賛や今後の期待の言葉を投げかけてきます

私は必ず守らなければなりません、その為に多くの屍を積み上げてきました

鳥は高く天上に蔵れ、魚は深く水中に潜む
鳥の声聴くべく、魚の肉啖ふべし。これを取除けたるは人の依怙也

という古い言葉があります

鳥も魚も隠れるように生き、鳥は声を聴く為に行かされる事はあるが、魚はただ肉の為に殺される
両者の不平等はただ人の都合で決められるものであるという意味です

一の死も千の死も命に違いはありません
無差別で殺す事も選んで殺す事も違いはありません
他者の命を奪う事を正当化する高尚な意味など存在していい筈がありません
生かすも殺すも、こちらの勝手な都合です

だからこそ私達は仕方なく命を奪っています
たった一つ、生きる為に

それだけの都合でこの地下で百の蛮族を殺し、数千の人々を救いました
それは必要な事だったと私は思います

約束の潜水艦がある地底湖の待ち合わせ場所に行くと、ランドルフさん達が待機していました
運転は私でも出来たのですがホノカが行うそうで少し残念でした
彼女が運転したほうが脱出の際、不都合が起こりにくいので仕方がありません
私が機能しない状況になった場合、脱出出来なくなりますから

その後は黒百合停の担保にした仮面を返しに貰いに行っていたメリカなどが合流し
皆に見送られながら潜水艦に乗り込み私達は水底へと進んでいきました

見えてきたのは全長300m程の巨大な魔動機、コロッサス・カーディナル
前文明の貴重な遺産が機能する状態で私達の目の前に現れました
研究が出来ればどれほどの技術が得られるかわかりません
私達は踵の入り口から内部に侵入、内部を進んでいきます

驚くことに、内部は本機が直立しているにもかかわらず
寝ているときの様に上にではなく平面に移動が可能なようになっていました

内部の情報端末から得た情報によると既にアルクィバスにシステムを掌握されているようです
最早一刻の猶予もありません
制御室の頭部へ向かう途中、胸部でボルクの猛者が待ち構えていました
アルクィバスの時間稼ぎの為に待ち構えていたようです

彼は言いました
今まで殺した蛮族の数を覚えているかと
そんな物、逆説的に覚える意味などありません

互いに戦うのに必要な理由があり意味があった
何も無ければ初めから争いなど起きてはいないし、殺す必要も無かったのだから
そしてその場にいる時点で本来は拳や剣を握り、引き金に指をかけた時点で他者の命を奪う覚悟は出来ている筈です

それが数千でも万でも必要があればそうした
その時はそれ以上のモノが私達の背後にはある筈だから
奪う物の大きさは初めから分かっている、彼等より私達にとってそれ以上に守る者の大きさが大きかっただけの話
互いの都合がぶつかり合い、結果的に彼らの方が弱く、私達が生き残っただけで条件は同じです
私達の行動が変わる事は無かった、故に数など数えても意味がない

自分達の道理を押し通し、その上で勝手に自身の行いを悲観したり、相手に同情するなど、それこそ傲慢という物でしょう
他者の命を奪った上で、後でそれが間違いだったというのなら、初めから武器等持たずに路上で叫んでいればいい
優しさは必要です、けれどただ甘いだけの人は戦場では邪魔でしかないのだから

そうして今まで通り私達が戦いに勝利し頭部へと進みます
隔壁を開き奥へと進むとアルクィバスが居ました
彼は私達に気づくと話をしようと持ち掛けてきます

私達を地上へ帰す代わりにこのまま見逃して欲しい
自分は魔剣とカーディナルを持ってこの地下を去る
目的はないが蛮族を大勢殺す技術を置いてはいけない
街の人達まで救う義理はない
仲間を殺された仇を無事に帰すと言っているのだからそれで十分だろうと彼は言います

ありえません、先ず信用に値しない
彼は一度私達を欺き、街を破壊して、石板を奪っている狡猾な人物です
そして仲間を殺された蛮族は皆、その事に怒りを覚えて此方を糾弾しました
石板の為にその仲間を捨て駒に使うような作戦を展開してもいます
彼の熱の籠らない言葉を鑑みれば真に仲間意識など存在しないのは明白です
死ぬのが嫌なら私達が来る前に魔剣だけ持って全て捨てて逃げればいい
けれど彼はそうせずにいる
要するに彼には戦っても勝算があり、こちらの要求を呑む事はないという事です

余りにも意味のない会話
魔剣も、街の人々も、カーディナル、只の一つも渡すわけにはいきません
人々は魔剣の入手を待ちわびている
地上への脱出を待ちわびている
私達が見逃したせいで、魔剣や魔動機の戦火に包まれた地上に還らせるなどあってはならない
どんな形であれ、彼がこの場で全てを捨てないのであれば戦う以外にあり得ないのです

根本はハルと同じ、他者を気にせず自分の為に生きた者と他者を思えず自分の為にしか生きられない者の違いはあれど
彼が今この場で誰かを信じられないのなら、この先もきっと多くの命を奪い続けるでしょう

結果譲歩の出来ない状況に戦闘になり、彼は竜化の力を使ってなお私達に及びませんでした
しかし彼は最後に初めて本心らしい恨み言を絞り出し、何かしらのコードを呟きました
直後にランドルフから通信が入ります
彼が言うにはどうやらカーディナルが動き出した様です
ランドルフが急いで脱出を促します
皆で急いで制御室を出ていこうとする中
私はそちらを振り向きます

本来であれば一人が此処で制御室を破壊する事が確実です
ただしそうなれば生き残れない可能性の方が高いでしょう
けれど、多くを確実に救うならそうすべきです

私ならそれが出来る
けれど皆がそれを許しはしないでしょう
その議論の時間が致命的になりうる

全長300mの一国を滅ぼしうる魔動機
それに正面から戦闘を挑むか、一人の犠牲で確実に破壊するか
どちらを選ぶべきかは明白です

でも、そうではないかもしれない
この世界に不可能な事は沢山あります
けれどそれが不可能であるかはやってみなければわからない
それで一人でも多く救えるのならそれに賭けるのも間違いではないと
私はこの旅で学びました
そして私達はそれを現実にする力が間違いなくある

そう思い信じられるだけの冒険を私は皆として来たから
私は制御室から目を離し、皆の後を追いました

脱出した私達をランドルフ達が出迎えます
カーディナルはものの数分で此方へと到着すると言われました
私達は迎撃の準備を整え、これを待ち構えます

戦闘の最中、避難した筈の知り合い達が私達の為に加勢に来ました
数にして十数人に満たないにも関わらずカーディナルを押し返していきます
膝を附き、腕は破壊され、肩から崩れていく
中枢がむき出しになり、全ての攻撃をそこへ集中させます
そうすると凄まじい轟音を立てながらカーディナルの巨体が崩れ、辺りが眩い光に包まれます
目を開けた時には天から別の
今は懐かしさを感じる暖かな光が差し込んでいました
私達は等々カーディナルの破壊に成功したのです

それからは街は毎日がお祭り騒ぎで、地上への昇降機を作るために多くの人が作業をしました
突如現れた地下の国に諸外国の反応は様々でしたが、結果的に自治が認められました
私達は当初の地下に来た切っ掛けを作った目的を果たす為にベーメキアからグランゼールに向かいました

一年にも満たない地下の生活で私は多くを学び、多くを得ました
何も無かった自分に故郷と呼べるほどの場所まで出来た
でもそれは少なくない犠牲の上に成り立っています
生きている限りそれは続くでしょう
それは自然の摂理と言っていい一つの真理だと思います

どんな事があろうと、多くの可能性を前に人は変わるものです
たとえ今日が変わらなくても、一か月後、一年後と時間が経つうちに必ず変化していく

人はその度に笑い、悩み、苦しんで、それぞれの答えを出し
時には手を取り合い、争い合う
その時、それでもと立ち止まったり、それでもと前に進める事
それが人の弱さでもあり、強さでもあるのでしょう

その後
冒険が終わった後は魔導都市ユーシズを拠点に活動して、ギルドの仕事をしながら魔動機や魔動機術の研究をしはじめた
冬の間など学園が落ち着く頃はベーメキアを自身の故郷として帰省し
宿泊区の子供達やランドルフ、メリカなどに会いに行きそこで活動している
フレイヤとは定期的に連絡を取り合うようになった

多くの人の出会いと別れの経験は命を奪う事しか知らない少女を年相応の少女に成長させた
ただ成長途中の彼女の少女らしさを知るのはまだそれほど多くはないだろうが

自身の求めていた物を自覚し、それを手に入れた彼女はこれから様々な人や物に出会いながら目標の為に邁進していく

後日談
魔導都市の日常


ユーシズ魔導公国を訪れて暫く
変化した環境にもイヴは大分慣れ始めていた
イヴは大通りを抜け国の中央広場、その真ん中に位置する噴水の近くのベンチで腰を下ろす
目の前の潔き噴水と呼ばれる噴水の中央には、鉄兜を被った巨大な頭像が設置されている
非常時には地下から体が現れ、ゴーレムとして戦うとまことしやかに噂されていたりするこの国の観光名物の一つだ

周辺の歓楽街は飲食店や劇場、商店が軒と連ね
宿泊施設も多い為、老脈男女様々な種族の人々が大勢行きかっている
行きかう人々の表情の明るさは、この国の技術と安全性の高さからくるものだろう
残念ながらそれでも噂やスリなど小さな犯罪は絶えないが

朝方からこの中央区に建っている、冒険者ギルドの簡単な依頼をこなしたイヴは
この噴水の前で休憩するのが当たり前になっていた
なんでも300年近く、この国の再興当時から続いて来た老舗のギルド支部らしく
イヴは東区の図書館にも近い為このギルド支部に頻繁に出入りしている
ベーメキアでの出来事は救った事は話さなかった為、魔法アリーナで実力を披露する事で
色々と国から協力してもらえるようになった
実力主義というのがこの国の風土らしい

この街には印刷機に始まり様々な魔動機が使われている
それ故に研究に必要な情報や素材には援助もあって困ることは無い
その分騎獣の脱走や魔動機の暴走などのマギスイーパーの手伝いや、コロロポッカの森での採集など働く量は桁違いではあるが

コロロポッカの森にレッサードラゴンが居るという話で大騒ぎになった時は、どう話すべきか悩んだが今の所は落ち着いている
あのタビットはそういった事を気にしていないのだろうが、やはりもう少し視野を広げて欲しい所だ

石化についての研究はまだいまいちだが、人工心臓については概ね上手くいった
一日に最大のマナチャージクリスタルを二つ、昼夜使う必要があるが、豚の被検体の様子を見るに機能自体は上手くいっている
後はどれくらいそれが持ち、身体に悪影響が出ないかを観察するだけでいい
技術について聞き出そうとしてくる者や、軍部からの勧誘などが現状は面倒なくらいで順風満帆と言っていいだろう

 次は南門に向かわないといけませんね……

今日、やるべき事を反芻しながらイヴは中央区から北にうっすらと見える白亜の壁と
その向こうに頭だけが見える魔法学園「七色のマナ」の尖塔を見つめる

本音を言えばこの国の学園に入り、魔動機の研究が出来ればよかったのだが、実力的に断られてしまった
かわりにマギスイーパーの手伝いなどする事で、一応同等の援助は受けられるようになった
別にそれで過不足は無いのだが、学園生活という物にも興味があったので、学園に入学出来なかった事は少し落ち込んだ

午後からはこの学園の生徒のフィールドワークの護衛をする事になっていて
五・六年生の3人の生徒と護衛役の自分とマギスイーパーが二人

マギスイーパーとは学園の敷地内に作られた冒険者ギルドに所属する、学園内の問題を解決する冒険者の事だ
魔法生物の暴走や護衛、国の地下で見つかった遺跡の探索など活動は多岐に渡る

それぞれの役割はスカウトのファイターと、レンジャーのタンクのマギスイーパーと
生徒の三人は五年生の魔動機術、妖精魔法使い、六年生の神聖魔法使いと戦力的に見れば
熟練の冒険者のパーティとさほど変わらない規模だ

イヴがここにきてから一番大きな仕事の類になる
目的はツリーワームの種子などの素材の採集
そのためにはそれなりにコロロポッカの森の奥深くに行く必要があり、今回の様な編成になった

イヴは休憩を終え、南門の待ち合わせ場所に到着すると、人々の往来はあれど、メンバーの姿は見当たらなかった
学園のある北区から、反対側の南区までくるのはそれなりにかかるだろうと、そのまま待機する
そうして待ち人が来たのはそれから二時間ほどしてからだった

 「申し訳ない、随分遅れてしまって……」
 「何か問題がありましたか?」
 「問題があった訳ではなくて、何というか……魔法使いの感覚の違いって奴なのかなぁ……」

先頭にいた少し顔にほうれい線の見え始めた、人間の中肉中背の男がそういいながら
短髪の黒髪の後頭部に手を当てて、申し訳なさそうに笑う
イヴの頭は彼の胸程なので多少見上げる必要がある
腰にはミスリルソード、背中にはカイトシールドを背負っていて
鎧はハードレザーの革製鎧を着こんでいる
名前はウォーレン、今回のスカウトを担うファイターだ
それなりに真語魔法も習得しているらしい

 「ダリルが寝過ごして遅刻したんですよ!これだから妖精魔法使いは困るんですよね!」

ウォーレンとさほど身長は変わらない栗毛の青年が横から飛び出して、大きな声で話す
学園の外套をしっかりと着こなして、胸には青色のリボンが着けられている
名前はニール、彼は魔動機術学科の生徒で、イヴが魔法アリーナで実力を披露した際、そこにいたらしく
初めて会った当初は色々と質問攻めにあった

 「どうせ向こうの宿場町で一泊するじゃないか」
 「そういう問題じゃないだろう!遊びじゃないんだ、他人の都合も考えてくれ!」

ニールがあれこれと捲し立てるが
ダリルと呼ばれた青年は興味なさげに言葉を返す
ウォーレン達とは頭一つ程小さい人間の妖精使いで、どうもあまり周囲に興味がないのか
赤毛の頭は未だに寝癖が残っている
外套は着崩れて青いリボンも少しくたびれている様に見える
学園の他の妖精使いは見た目には気を配っていた様に見えたが彼は違うらしい
森の妖精の対処に妖精使いが居た方が良いという事だったが
五年生の時点で優秀なのは間違いなく、事前の顔合わせも済ませてはいるのだが、この様子だと少し不安になる

 「二人ともやめてください、まだ時間を浪費するおつもりですか?」

怒鳴るニールとそれを聞き流すダリルを引きはがす様に二人の間にエルフの少女が割って入ると
背中程まである後ろで纏めた長い金髪を軽く揺らしながら、腰に手を当てて二人を睨みつける
名前はフェリシア、身長は女性型ルーンフォークの中でも小柄な自分より少し高い程度で
見た目のほどは華奢で成人しているのかわからないくらいだ
とはいえ実際のエルフの年齢は見た目では推察しようがないがないので、この二人より年上かもしれない
そんな彼女の綺麗に整えられた外套には紫のリボンが輝いている
聞いた話では妖精神アステリアの神官で能力、人格ともに優秀な人物らしい

 「うっ……すみません」
 「僕は……別に何も言ってないけど……」

六年生の少女の威圧感に青年二人は目を逸らして委縮する

 「ではそろそろ出発とするか、話は後でいくらでも出来よう」

白い髪と髭を蓄えたドワーフの男性が口を開く
ミスリルプレートにグレートウォール、そして腰には幅広のブロードソード
如何にも重装備の冒険者で、この国では珍しい純粋な戦士だ
名前はグンナル、レンジャーとタンクとしての能力だけでなく
自身でも鍛冶仕事をしていて装備の強化を自分で行っているほどの腕もあるようだ

 「仲良き事は美しきかな、若いとは良いものだな、ウォーレン」
 「まぁ成人して数年くらいならこういう物なんでしょうね……」
 「ワシらも気合を入れんとなぁ」

マギスイーパーの二人を先頭に移動を開始する、最後尾は少し居心地が悪そうな二人
先ずはコロロポッカ近くの宿場町へ、数時間は馬車で移動する事になる
午後に街を出た理由は生徒側の準備などと、此処で一泊するため朝に出る必要が無かったからだ
宿場町には商人や冒険者の為の宿や食事処の他保存食などを取り扱う商店、守衛詰所、馬屋など様々な施設がある

 「イヴさんはこの国の外から来た冒険者さんだそうですが、ガンを三丁もお使いになるのですか?」 
 「そうですね、状況によって使い分ける必要があるので」
 「ガンを扱う方が珍しいわけでありませんが、そこまでの装備は初めて見ました」
 「合理的なガン使いはこうなる事は珍しくないと思いますよ」
 「合理的……ですか……?」

合理的とはとても見えない見た目のイヴの言葉にフェリシアは目を丸くする

 「……森の妖精達の対処の為に僕が呼ばれたのはわかるけど、そこに向かう内二人が魔動機術使いで
  しかも一人はルーンフォークだなんて、見えないのに敵対的な妖精がいたらどうするのさ」
 「戦闘の経験ならありますから問題ありません、見えないだけでそこにいる事を認識できる方法はありますから」
 「なるほどね……話せる妖精が出てきた時は黙っててよ」
 「失礼じゃないか、ダリル!イヴさんは俺以上の魔動機術の使い手で国で右に出る者はいないくらいのガンの実力者だぞ!」
 「何度も聞いたよ、おまけに何故か石化の邪眼まで持ってるって話もね。何をしたらそうなるんだか……妖精が怯えてるよ」
 「お前な!」
 「構いません、ニールさんは少し落ち着いてください。馬車が揺れます」

馬車の中で立ち上がって今にも掴みかかりそうなニールをイヴが静止する
フェリシアは呆れたように頬に手を当てて溜息を吐く
ニールが小さく謝りながら着席すると、黙って様子を見ていたウォーレンが興味深そうに口を開いた

 「そういう事なら少し気になってたんだ。経歴を見せて貰ったけど
  冒険者ギルドでは3年生くらいでも何とかなるような依頼しか受けていなかっただろう?
  一体何があったのか聞いても構わないかな」
 「最近現れた地下都市はご存知ですよね、私はグランゼールの遺跡の探索中、巻き込まれてそこに居ました
  地上と繋がるまであそこは時間の流れが地上よりずっと早く、結果的に経歴以上に経験を積む事が出来ました」
 「ほう、グランゼールの南に出た穴の下の都市じゃったか。ワシも暇が出来た行ってみようかと思っていた所じゃわい」
 「じゃあ修羅場を潜ってるのは間違いないわけか。確か500年は地下にあったって話だったか。まぁ出てこれて良かったなぁ」
 「そうですね、そちらも優秀な前衛として頼りにしています」
 「年季だけならワシらはオヌシらに負けんからのう。任せておけ!」

ウォーレンの肩を抱いてグンナルは快活な声で笑う
その後は宿場町に着くまで、それぞれの休日の過ごし方や、学園での生活の話など他愛のない会話が続いた

宿場町に着くころには辺りは完全に暗くなっており
翌日、朝が早い事もあってウォーレンが宿を取って簡単な食事をした後すぐに解散となった
部屋割はウォーレンとグンナル、イヴとフェリシア、そしてニールとダリル
二人はかなり不服そうな顔をして何か言いたそうな様子だったが何も言わずに部屋へと向かっていった
マギスイーパー二人はそれを何とも言えない柔和な笑みで見届けると、此方に軽く挨拶をして部屋へと入っていった

イヴ達が部屋の扉を開けると、手に持っていたランプの光が部屋を照らし出す
木造の年季の入った部屋には奥に左右に分かれてベッドが二つそれぞれサイドラックがあり
左手に机と椅子、クローゼットが右手に一つと扉の対面には両開きの窓が備え付けられている

イヴは片方のベッドの脇に荷物を下ろし、ランプをサイドラックの上に置いてガンの整備を始める
後から入ってきたフェリシアも荷物を下ろしてベッドに腰かけていた

 「明日は何事も無く上手くいくと良いのですけれど……」
 「そうですね、レッサードラゴンの目撃情報から、森の魔物の動きが変わっているとの事で
  今回は採取だけでなくその調査と、異変があれば対処も含まれていますから」

不安そうなフェリシアの言葉にイヴはガンから目を離さずに続ける
  
 「実際にツリーワームが目撃された場所は、本来の予想される場所より比較的森の表層に近いので、
  その辺りにまだいれば戦闘になるでしょう。ですが戦力的には心配の必要はありませんよ」
 「アステリア様の神官としては自然の中での戦闘は避けたいのですけど……それよりもあの二人の仲が心配です」
 「学園でもああなのですか?」
 「いえ、私は6年生ですし、今回が初対面なのでなんとも、あの二人は学科も違いますのですれ違う事はあっても
  話した事は無いのではないかと思います」
 「そうですか……でもそれは今気にしても意味がありません。最悪戦力にならなくても戦えはします。
  敵を前にしてもそうなら数に入れずに動けば問題ありませんから」
 「確かにそれはそうなのでしょうけれど……極論すぎませんの……?マギスイーパーの方達も何も言いませんし
  冒険者の人達の中ではそういう物なのでしょうか……」

イヴはフェリシアの言葉にふと以前の仲間達の冒険を思い出す
口論は何度もあったし、理解できない事もあった
しかし最終的にはベーメキアを救うまでになったのだ

 「いえ、あくまで私の考えです。ウォーレンさん達は単純に彼らを信じているだけでしょう
  意見の相違や対立は悪い事ではありません、多種多様な考えがあるからこそ状況が打開できるのです
  今は譲歩や理解が出来なくとも、目的の為に動く事が出来るならそれで良いと思います」
 「そうですわね、二人の事は自然の流れにお任せするしかないのでしょう……
  どうか二人にアステリア様のご加護がありますように……」

フェリシアは聖印を両手で握りしめて妖精神アステリアに祈りをささげる
彼女の真剣な表情は幼げな顔つきとエルフの端正な顔が相まってどこか神秘的な印象を与える
きっと見る者がみれば一瞬で心を射抜かれてしまうだろう
イヴはそんな仲間の様子を憂いて祈るフェリシアの姿に何となく既視感を覚えた  
  
 「何となく以前一緒にいた神官の事を思い出しますね」
 「……地下都市でご一緒だった方ですか?」 

祈りを終えたフェリシアは一瞬不思議そうな顔をした後、思い出した様に言葉を返す

 「そうですね、ティダン神の神官で、彼もよく仲間の様子を見て色々と考えていました。
   私もその対象だったでしょうが。とても頼りになる神官でしたよ。別れる頃には他者の穢れすら払う事が出来ましたから」
 「穢れを払うって普通国でも数えるほどもいない様な大・大・大神官じゃないですか!
   一体イヴさん達はどんな集団だったのですか……」
 「どうでしょうね……変わった集団だったのではないでしょうか?」
 「全く分かりません……」   

言いながらベーメキアで一緒に冒険した仲間達の事を思い出す
別れてから大した時間は経っていないが、不思議と懐かしさが込み上げてくる
一年に満たない冒険だったがそれでも様々な事があった
それは自身の成長が物語っている
自身にとってはどれも大切な思い出だ

 「そろそろ寝ましょうか、明日は朝から出発ですから」
 「個人的にも、神官としても、とても気になるお話なのですが、時間は仕方がありませんね……」

しょんぼりとした顔でフェリシアはベッドへと潜り込んだ
ガンを収納したイヴはランプの明かりを消す
窓から差し込む月明りが淡く部屋の中を照らし出している

 「私達には必要ない物ですが、火の明かりというのは不思議と落ち着く物ですね」
 「そうですね、こういう月明かりもいいですよね」
 「ええ、私もそう思います。地下にはない物でしたから」

宿の主人が流れで用意してくれたが、ルーンンフォークとエルフの二人の目に明かりは必要ない
地下での生活では同室の人物の為に使用していたせいか、自然と使っていたせいだろうか、違和感を覚えなかった
その相手にも実際は必要なかったのだが
イヴはベッドに入りながら奇妙な一致に不思議と口元が緩む

 「確かに、地下にはないですよね……一体地下都市の人々はどうやって暮していたんですか?」
 「それは町の中心に巨大なマギトーチが設置されていて、昼夜を知らせるようになっていました
  繁華街はマギトーチが消えると魔石灯が着いて、地上と同じように酒場が賑わい始めます
  街は主にティダン信仰が盛んで、冒険者ギルドやその他施設も地上と同じくらい充実していまいした」
 「皆さん逞しいんですね……けれど一体どうやってそんなに資材が地下にあったんでしょう……」
 「それはですね……」

二人はいつの間にか時間を忘れて話し込んでいく
町の寝静まった静けさの中、小さな部屋の少女達のベッドの上で声だけが弾んでいた

木を隠すなら


日が昇ると同時にイヴは起床する
睡眠時間が多少少なくても、つい決めた時間に起きてしまう
昔の訓練の影響だが、こういう仕事では役に立つ


窓から差し込む光が顔に当たっのか、隣のベッドでフェリシアがもぞもぞと寝返りをうっている
出発までは時間があるので、イヴはフェリシアを起こさないよう静かに、体を動かすために部屋を出た
宿を出て広場の方へ歩いて、てきとうな場所で一息つく
辺りには朝のひんやりとした空気が漂っていて
朝露がキラキラと朝日を反射して宝石の様に輝き、鳥の声以外に辺りに音は無い
深呼吸すると森独特の草の匂いが鼻先くすぐる

 研究の為に一度こういった場所で過ごすのも悪くはないかもしれませんね……

こういった穏やかで静かな時間は街にもあるが
自然の中の方が集中できる環境である気がするのはどうしてだろうか

 「おっと先客がいるとは」

声の方を見るとグンナルが此方に歩いてきていた
既に装備も一式身に着けていて、足元が汚れている事から
起きたのがイヴよりもずっと早かったのが分かる

 「隣に座っても構わんかな?」
 「どうぞ」

イヴが少しベンチの端へと寄ると、グンナルが装備を気にしながらゆっくりと座る
装備の重みのせいかベンチが少し軋むような音がした
そんな事は意に介さずグンナルは大きく息を吐く

 「森にいたのですか?」
 「ああ、副業もあっていつも朝は早くてな。町の周辺を見ておった。ただの散歩じゃよ」
 「そうですか」
 「そちらも似たような物かの。ウォーレンはいつも朝食の直前に起きてきおるが、どちらが良いのやら
  この宿場町の門番も早起きじゃったが」

グンナルは自身の髭を撫でながら感慨深そうに空を見上げる
そして力の抜きどころと入れ所をコントロールするのは難しいと
小さくため息を吐いた

 「良く二人で行動するのですか?」
 「そうじゃな、あやつの祖父ともともと組んでいてな。20年程前からその縁であやつと一緒に仕事をしとる
  祖父はもうなくなったが、父は街の軍で教官をしとるよ」
 「なるほど、想像していた以上の経験ですね……私は2年程です」
 「まぁ……オヌシの年齢ならそうなるのか……しかしどんな修羅場ならそうなるんじゃ?
  ワシら二人係でも止められるかわからんような腕前ではないか」
 「どうなんでしょうね……地下の環境が特殊だったのかもしれません。私よりももっと実力をつけた仲間もいましたから」
 「なるほど!ベーメキア、益々行ってみたくなったわ!」

グンナルの大きな笑い声が静かな森の町に響き、塀の外の林から鳥が忙しなく飛び立っていった
不思議な顔をするイヴを横目にグンナルは立ち上がり手足を大きく動かして体を伸ばす

 「今はそういった特異性は、もう失われたと思いますが」
 「構わんよ、長生きの秘訣はやりたい事を多く持つ事じゃからな」
 「長生きですか……」
 「そうじゃよ、人は望む通りのことが出来るものではない。
  肝心な事は、望んだり生きたりすることに飽きない事じゃよ。ワシくらい長く生きればわかるかの」
 「私には関係なさそうですね」
 「どうかの、それはその時になってみんとわからんのう」
 「……覚えておきます」
 「いかん!悪い癖じゃ!すまぬな、年寄りの長話に付き合せてしもうたわ」

イヴの複雑そうな表情をみて、グンナルは後ろ手に自身の頭を数度叩くと口を開けて笑う

 「ではそろそろ戻るかの、そちらはどうじゃ?」
 「そうですね、私も戻ります」

グンナルの言葉にイヴは立ち上がると、二人はその場を後にした

朝食を食べた後、一行は町に入ってきたのとは逆方向の入り口へと向かう
グランゼールからユーシズには長い街道が通っていて、宿場町は街道の各所に徒歩で一日の距離に設けられている
魔動機文明時代に作られたとされるこの街道は、<大破局>後忘れ去られ
放置されていた所を現代で再発見され、復興されたものだ
それ以外にも枝分かれするように支道が伸びていて、今も見つかっていない物もある
支道の先に村など、利点がなければ放置される事が多いが、魔動機文明時代の遺跡に繋がっている可能性もあるため
冒険者がそれらに惹かれて支道を探す事もある
そんな風に見つけられた支道の後の一つを通って一行は森の中へと足を踏み入れる

放棄された支道は鬱葱と草木が茂り、辛うじて道の後を残すだけだ
集中して探さなければあっさりと道に迷ってしまうだろう
先頭はウォーレンが勤め、殿はイヴが担当する

 「この支道の先でツリーワームがいたんですよね?思っていたより草木がおおいな……」
 「そうですわね、支道と聞いていたのである程度使われている物と思っていましたけれど……」
 「そういえば、ニールとフェリシアの二人は、地下遺跡の方には何度か行ったことがある様だけど
  森の方は余り経験が無かったんだったね。まぁ、隊列を崩さない程度にゆっくり歩くといい
  足場の確認はいざという時にも大事だからね」

草木だらけの支道を暫く歩いていると足元のおぼつかない二人がぽつりと声を漏らす
そんな二人にウォーレンが先頭から声をかけながら、時節枝木を切り落としながら先へと進む
ダリルはこういったフィールドワークには慣れているようで、二番手のグンナルの後にぴったりとついている

 「あの二人を見る限り、妖精が現れる程の所まではいきそうにないな……」
 「出来ればそこまでは行きたくないのう。何が出るかわからんわい」






いつかの夢

冷たい無機質な金属の部屋、寝床と机、最低限の生活設備だけの部屋に
静かに本をめくる音が響く、それに続くのは微かな吐息
それらの音がゆっくりと規則的に続いている

音の主の少女はかれこれ数時間はそうしていただろう
日々の訓練の疲労も忘れ、ただ一心に目線は目の前の本へ向かっていた
隣には読み終えた幾つかの本が並べられている

この部屋に少女が連れてこられたのは比較的最近だ
文字を覚えるにはこういった物が良いと与えられた物だった

英雄譚や冒険譚、何処かの冒険者が多くの人達を救う、よくある話
難しい理屈などない、分かり易い物語だ
少女に理由はわからない、けれど不思議とそれらから目が離せなかった

後半に差し掛かったあたりで糸が切れたように部屋が暗くなる
少女の目に暗闇は意味をなさないが、それが睡眠の時間の合図である事は理解していた

少女は逡巡する事無く寝床へ向かう
明日もやる事は同じ「訓練」、変わるのは本の中身だけ
それも時機に読めなくなる
字や言葉だけでなく次はもっと「難しい訓練」になるからだ

目を瞑る少女の瞼の裏には、何処かの英雄が沢山の笑顔に囲まれている光景が映っていた

二話時点のメンバーの所見


オズリク 優秀  適正な状況判断力有 状況に対して優先順位を把握出来ている

ギセル  不安定 思想と行動の相反に疑問 死が不安なら街に居れば良いのでは 状況判断力は良

ヴロム  不可解 常に厚着 人間ではない? 戦闘中情緒、生存性に不安あり 攻撃性を維持出来れば問題無し

レブル  危険  適正な判断力なし 思想に傾倒 探索能力はあるが信頼性に欠ける

???
秘密の封蝋
封印
開封する
オズリクさんへ


先ずはありがとうございます
貴方が後ろにいたから私達は今日までの戦いを生き残る事が出来たのだと思います
貴方はとても聡明で思いやりのある神官でした
きっとこれから先も多くの人々を導いていくのだと思います

私は元々、同族の死体を素材に人を殺す事を役割として生み出されました
ある意味、ハルの様な人が生み出したアンデットの様な物です
その役割が嫌でそこから抜け出してあの時出会った森に繋がります
私が外に出るまでに学んだ事は全て、最終的にこの世界の誰かを殺す為の知識です
それ故に誰かの為に何かを切り捨てる、そんな方法しか知りませんでしたし
それに疑問も持っていませんでした

そこに疑問を与えてくれたのはネイサンと戦いがあった依頼の貴方の行動でした
一発の弾丸を撃たない事がきっと大きな岐路になったのです
今の私がいるのはその結果のおかげでしょう

だから本当にありがとうございます
貴方と戦えて心から良かったと思います
きっと子供達から見れば憧れられるような、そんな冒険者の一人ですね

ルーンフォークである私には魂がありません、神様の声も聞こえません
皆がいつか神様の元に行っても、私がそこに行く事は無いのでしょう
だから私も普段は何かに祈る事は無いのですが
貴方がこれから先、変わらず聡明で優しい人でいられる事を祈っています

いつかルーンフォークが役目を終えた時、魂のない私達が何処に行くのか貴方なりの考えを聞かせてください

レブルさんへ


貴方とは弱者を救うという理想に於いてとても近い位置にいながら
考え方も方法も範囲も違っていて、理解は出来ても共感しあえる関係にはなれませんでしたね

全てを救うというのはかつての始祖神すらできなかった事です
それを望んだ第三の剣は最終的に自らを砕きました
貴方の理想はそれほどまでに難しい物でしょう
けれどそれが可能だと言うのなら私はそれを支持します
その理想をただ信じて見たいと、今はそう思えます

貴方の隣にいる二人はルーンフォークです
私達に神様の声は聞こえません
人が人のために作り出した人造の命だからです
神様になるとわからなくなるのか、ただ無視されているのか
魂という物を持たない事がそれ程までに命として認められないのかわかりませんが
もしあなたがいつか本当にそれに至ったのならどうか隣にいる二人の事を忘れないでください

あの時見た継ぎ接ぎのアンデットの様な扱いを受ける同族がこの世界にはいます
そして生まれたばかりのルーンフォークはどんな命令にも抵抗する意思を持ちません
私自身が同族の死体の素材を使って、他者を害する目的で生み出されたルーンフォークです
私は偶々自我が強い個体でその役割を放棄しましたが
基本体に教育を受けても作り手の命令に逆らう事のないルーンフォークが殆どです
それ故にそんな哀れな同族を生み出す、オーガに利用されているあのジェネレーターを私は破壊しようとするほかありませんでした
結果的にはそれから貴方の娘が生まれましたが

貴方がどれくらい私達を理解しているかわかりません
なのでお節介だとは思いますが一応提言しておきます
私達は死後、貴方の知る動物の様に土に還る事はありません
自然の摂理に還る事すら出来無いのです
それ故に死後、心無い者に利用される事もあります
なので本来なら燃やしてしまった方が良いのですが
出来る事ならどうすべきか二人で話し合って、あらかじめ取り決めておいた方が良いでしょう

どうか末永く貴方方が幸せに暮らせるように願っています

ヴロムさんへ


今更ですが、森での栄養カプセルの件はありがとうございます

ヴロムさんの急に調子が変わるというか戦いの際の闘争心に溢れた姿は凄まじい物がありました
日常や冒険の中で一年の花の様に様子が変わる様は見ていてとても和みました
どの様な道を進むにしてもヴロムさんの実力があればどこに行っても戦える事でしょう

ヴロムさんは正直変わった人です
こんな私にわざわざ贈り物をくれたりして
ただそんな貴方の行動に私は救われました
地底湖の魔物を倒しに行ったとき、貴方がくれた水着は大切に持っています
照れくさくて言えませんでしたが、あの時はとても嬉しくて
それを着る為に地底湖に魚を捕りに行ったくらいでした

ああいった形で見返りを求めないで、私の為に誰かに何かを貰うというのは初めてで
それがやさしさという物であると気づくきっかけになりました
それは私にとってはとても大事で大切な事だったのです
おかで私は今まで気づかなかった物に気づく事が出来るようになりました

出来る事ならもっとちゃんとした形で伝えるべきなのでしょうが
面と向かって言えない私を許してください

本当にありがとうございます

本当は「お友達」という物にもなってみたかったのですが
いまいちどの様にすれば良いのか自分ではわかりませんし
同じ部屋で寝食を共にしての現状を見るに今の私にはきっと難しい問題で残念です

貴方が仮面の下に抱えている物は私の立場ではきっと共有しえない物ですが
いつか貴方が抱えている物を隠さずにいられる場所や人に出会える事を願っています

ギセルさんへ


このような形で伝えるのは良くないと思いますが
正直貴方の事は少し心配です
なので途中で破り捨てられても良いと思ってこの手紙を書いています

貴方は当初、随分と生き急いでいるように見えました
死にたくないと言いながら、冒険者をする様子は矛盾していて理解できなかったからです

貴方が何に縛られているのか、何がきっかけでそうなったのかはわかりませんが
それらと重ねて誰かを守るという事を言い訳に、相手に依存しているようにも見えました

貴方はもっと自信を持っても良いと思います
目に見える全ては神様だって救えませんが、貴方の手は既に多くを救える力があります
でも純粋な力だけが誰かを救う事になるとは限らない筈です
貴方は努力家で優しい人ですが、優しさで判断を間違えるならそれは唯の甘い人でしょう

ルーンフォークは皆生まれた時から生まれた役割があります
私はそれを放棄して旅に出ましたが、そんな自分には生きている意味が無いのだと、そう思っていました
けれど人は生きているだけで意味があるのだと、私はこの旅で思えるようになりました

自分が悪くないのなら、誰だって好きに生きていいし、何処にいても良いのです
今の貴方の力は本物です、それはいつも後ろから見ていた私が保証します
だからもっと自分を誇ってください
過去は変わりませんが、それで未来を見る目が曇っていては意味がありません

貴方がこれから先どのように進んでいくのかはわかりませんが
どうか無理をせず、召魔の甘言に惑わされることなく
貴方なりの正しさを貫いていく事が出来るように願っています

履歴

・HP再生強(常時1ラウンドごとに1点)(イヴ)
・+3(ー2)(イヴ)
・+3(ー2)(イヴ)
・+3(ー2)(イヴ)
・石化の視線 右目 
 2d6+冒険者レベル+精神力ボーナス/精神抵抗/消滅

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 ガメル 名誉点 成長 GM 参加者
キャラクター作成 3,000 1,200 0
1 10/2 プロローグ 1,240 1,170 知力
メカニック roidoびーてぃーもりおニャルベラミドリ
10/2 幕間 6,000 4,000 50 知力
生命
器用
10/8 一話 2,150 精神
10/14 二話 2,560 7,418 85 知力
器用
10/22 三話 3,360 4,760 54 精神
知力
10/28 四話 4,200 11,400 58 精神
知力
11/05 五話 5,310 18,110 152 筋力
器用
生命
11/12 六話 5,830 11,020 56 精神
敏捷
器用
敏捷
11/26 七話 7,510 16,310 知力
精神
知力
精神
器用
12/03 八話 8,800 38,726 329 知力
知力
知力
器用
器用
精神
12/10 九話 9,530 50,940 63 精神
生命
精神
器用
筋力
知力
知力
12/22 最終話 23,750 1,500 300 知力
生命
知力
知力
器用
生命
生命
器用
器用
器用
知力
精神
器用
精神
器用
知力
器用
敏捷
取得総計 83,240 166,554 1,147 54

収支履歴

冒険者セット::-100
マギスフィア::-200
トラドール::-800
トラドール::400
ガンベルト::-20
ガンベルト::10
クロースアーマー::-15
クロースアーマー::7
マギスフィア大::-1000
ジェザイル::-6200
ジェザイル::+3100
デリンジャー::-21200
テンペスト::-12000
バレッドスリンガー::-40
バレッドスリンガー::+20
活性弾::-480
弾丸::-600
マギスフィア中::-500
薬師道具セット::-200
薬師道具セット::50
能力増強の腕輪::-2000
能力増強の腕輪::1000
正しき信念のリング::-30000
スマルティエの能力増強の腕輪::-1800
能力増強の指輪::-500
能力増強の指輪::250
ウェポンホルダー::-1000
バレットポーチ::-100
栄養カプセル::-100
チェインメイル::-760
防弾強化::-1500
軍師微章::-100
蝙蝠の耳飾り::-3500
ミサイルトラッパー::830
水飲み鳥のマスク::-6000
水飲み鳥のマスク::+3000
スマルティエの銀鈴::-7500
セービングマント::-8000
潜行弾::-3150
使いやすい調理道具セット::-50
軽い羽ペン::-50
インク::-3
白紙の本::-150
普段着::-13
魔晶石10::-12000
魔晶石5::-2000
不撓のバックル::-12300
ラルヴェイネの金鎖::-7500
ラルヴェイネのダウンルッカー::-14000
アンチマジックポーション::-9000
熱狂の酒::-2940
魔香水::-2400
アウェイクンポーション::-500
秘密の封蝋::-1120

チャットパレット