魔動機文明の最盛期であり、守りの剣も含め人族がほとんどの蛮族を地上から淘汰した時代だが、彼は蛮族としての誇りの為、地上に残り闘い続けた。これは、蛮族は人族の脅威として君臨すべしという彼の矜持のもと為されたものであり、圧倒的な強さにより"暴君"と呼ばれていた。そんな彼の日頃の楽しみは、自身の領地に毎日のように攻めてくる空中戦艦を屠ることだった。
また、蛮族同士の覇権争いにも興味がなく、不気味がった周囲から襲撃されることもしばしばあった。
この時代は毒を盛られても気付かない、銀弾を複数喰らってもまだ平静を装える等規格外の強さを持っていた。

魔動機文明の中期～末期より、彼の領地を攻める者は居なくなった。というのも、彼が無暗に領土を広げようとしないというのに加え、"何をやっても勝てなかったから"である。領地一体は暗黙の緩衝地帯となり、人々はそれを避けるように利権争いを始めた。

人々がかの暴君を忘れ始めたその最中である。暇を持て余した彼は自身を忘れて争い合う戦場へと降り立った。
彼が人族領域でふらりと立ち寄ったのは教会だった。そこで目にしたのは何人もの怪我人を自分を捨てて看護を続けるシスターの姿だった。
日に日に医者や看護婦が減って行く中、それでも懸命に自分の食事すらも分け与えて看護をしていた。
そんな彼女は、吸血鬼であるヴァシリスに向かい恐れを抱かないどころか同情を示し、自分の血を差し出す代わりに他の人の血を吸わないでくれと懇願した。それにプライドを刺激されたヴァシリスは、「貴様を恐怖のドン底に陥れるまで人の血を吸わない」という約束を交わしてしまう。そして、同時にそれまで彼女を死なせないように守るとも。

しかし、その数日後、彼女は偶然看護していた人間が敵国の要人であったため、自国の人間にスパイ容疑をかけられ撃ち殺されることとなる。ヴァシリスが駆け付けた時には既に虫の息であり、長くないと悟った彼女は自身の血を飲むように勧めるがヴァシリスは約束を果たしていないとこれを拒否。そして、血を飲むことも約束を果たすこともなく彼女は亡くなった。

その後、腹いせにその両国共々戦場から焼き払うのだが、それはまた別の話。

大破局の際、攻めてきた蛮族軍によりドラントフの領土拡大が行われた。その際に持っていた領地ごと有耶無耶になり、彼自身も戦争への興味がなかったため行方不明となる。この頃にはかなり弱体化していた。

生活の為、バルムジェイルで偶然見つけた求人からコンビニ店員となる。
持ち前の几帳面さと学習能力により、一躍雇われ店長としての立ち位置を確保し、あくせく働く毎日。
力を持たぬ者として真っ当な職についている（つもり）。
ランナーは副業となる予定。

ちなみに吸血衝動は気合で抑えている。