霧の都という蛮族に占領された領域を取戻すために戦っていた一族の戦士。
ナイトメアである彼は生まれたその時に母親を失った。
母は自分を産み落とす間際、この地の霧を晴らし、美しい世界を取戻してほしいという念を込め、「　　　　　・　　　　　」という名前を授かる。
残された父と自分での激しい、ほぼ実戦経験と言っても過言ではない戦闘訓練を行って、一人で戦う術を身に着けていった。

また、父の教えとは別に、彼は自分の母と一度でもいいから言葉を交わしたい。
そういった願いから操霊術師としての学びを独自に得ていった。

「　　　　　」一家として戦い続けた彼は、いつの間にか友を失い、家族を失い、孤独となっていった。
そんな一人戦い続ける人間が蛮族領域のど真ん中で生きていけるはずもなく、彼は奮闘虚しく命を散らすこととなった。
しかし奇跡的な運命により、彼は一命を取り止めることができた。

代償として彼が失ったものは記憶であった。

記憶を失った彼は、一人で戦ってきた記憶のみが己の体に残っていた。
他人に興味を示さず、この街を取戻すという使命は、ただの蛮族への怨嗟へと塗り替わっていた。
己の出生も使命も名前すらも忘れた彼の名は「Nemeless Jane Doe」名を持たぬ者という意味であった。

いつも通り、己がナイトメアであることを隠す長いローブに身をまとい、蛮族を狩るため町へと訪れた彼はとある出会いを果たす。
「シド」と名乗るその者は、名無しと共に旅を続け、次々と霧の都を開放していった。
そして彼らは多くの人々救い、大切な物を失いながらも、いつしか霧の都では「ナイトメアの英雄」として名を残していった。
やがて霧の都のほぼ全てを取戻し、残すところは蛮族の王ただ一人となった。

しかしこのままでは力が足りず、王を討伐する事ができないと踏んだ彼らは、船に乗り霧の都を出ることを決意する。
その時、またしても奇跡が起きる。
多くの人々に祝福されながら徐々に記憶を取り戻していく名無し。
船に乗り旅立つその時、振り返った先には霧が晴れている霧の都があった。

彼は全ての記憶を取り戻し、ローブを脱ぎ捨て、ナイトメアであることを明かしながら彼は声高らかに民衆へ叫んだ。
「我が名は『　　　　　・　　　　　』！！この街の霧を払う者なり！！」

こうして彼は再び蛮族との戦いに身を投じる事となった。

船に乗り旅立った彼は、謎の巨大海洋生物に襲われ、抵抗も虚しく船は沈んでいった。
深い海の中で彼は無念の心と、未だ救えていない人々への思いを胸に、深く深くへと沈んでいった。

しかし神は彼に三度奇跡を起こした。
目を覚ました彼は、まるで海の底のように暗いくらい暗黒の中に立っていた。

彼は再び記憶を失った。
人々を救わなければならないと言う使命感。
またしても記憶を失ったという事実。
そして幾ばくかの戦闘経験だけが彼に残された記憶であった。
そんな彼の今の名は……

「Unknown my neme」記憶を二度失った男。