一人称

ヴィオラちゃん/私

二人称

君/あなた

三人称

○○さん/彼、彼女

呼称

〇〇さん/〇〇さん

趣味

人助け/なし

クセ

正義感のまま面倒ごとに突っ込んでいく/自己批判

好物

愛の魔法少女はみんなのことが大好きだよ！/なし

苦手

愛の魔法少女に苦手なものなんてないんだよ！/自分

悩み

悩んでる時間がもったいないない！/自らの存在意義について

12年前の某日、私はここマカブより遥か北方、ドーデン地方はキングスレイ鉄鉱共和国首都、キングスフォールにて生を受けました。
ママとパパより愛情をたんまり受け、私は笑顔と元気溢れる女の子に育ちました。
当時私は書を読むのが好きで、特に「魔法少女」に強い憧れを持っていました。
世界の平和のため、弱者の安寧のため。可憐に舞い踊り敵を打ち砕く彼女達のことが。挿絵に描かれた、可愛らしくかつ凛々しい彼女たちの姿が。本当に大好きで、よく彼女たちの真似をしていた気がします。
くるりと回るとママがかわいいと褒めてくれるし、正義のためにお手伝いをするとパパが偉いと褒めてくれるし。私は恵まれた環境にいたんだなぁと思います。

そんな日々が突如終わりを告げたのは6年前、私が6歳の時でした。
私達レプラカーンは基本的に人前に姿を現すことはなく、キングスフォール住みと言っても人通りのほとんどない、郊外の空き家のさらに地下に住んでいました。
当然人々は守りの剣の近くで生活するわけですから、私たちはその端、少し行ったら守りの剣の庇護から抜け出せるような、そんな地で生活していました。
その日私は、その「外」にて幼い女の子が蛮族達に襲われている姿を発見したのです。
…街から迷い込んだのかな？…あの派手な髪色はドワーフかな？……などと考えるより先に、私の体は動いていました。
両親は街に食べ物を「採り」に。もちろん周りには大人どころか人っ子一人もいません。
力には少し自信がありましたし、私が動くしかなかったのです。今ではこの判断についての後悔はありません。
…ただ、もう少し賢ければ、と思うところはありますね。結果的に、当時の私は全くの無策で戦場に突っ込んでいってしまったわけですし。

相手はサーベルフッド三体。幼い子供二人にとって強大すぎる相手です。私は女の子を守ることに必死で、フッド達に一撃も与えることができないでいました。
その間にもフッドたちの攻撃は私の体に打ち込まれます。急所への攻撃こそ逸らしてはいましたが、私の体力は削られるばかり。
遂には限界へ達し、私は膝をついてしまいました。眼前にはフッドがいるのに、それでも私には避ける体力も気力も残ってはいませんでした。
目を瞑り、私の頭に刃が降り下ろされるのを待ち………
……………
覚悟をしていた、冷たい金属が私の身体を切り裂く感触は、いつまで経っても私へは与えられませんでした。
恐る恐る目を開けると、そこには見慣れた姿がありました。
大きな、大きなママの背中でした。

逃げて、ヴィオラと。母の言葉が、私を現実に引き戻しました。
それでも現状を理解できずに動けない私に、「早く！」と、ママはそう怒鳴りつけました。
ママに怒鳴られたことなんてなかったものですから、私は言われるがまま、女の子の手を取って逃げ出しました。ママをママをその場に置き去りにして―――――

女の子を街に届け、私は再び守りの剣の範囲外に……
行けませんでした。自室の隅で、「ママは大丈夫」とひたすら自分に言い聞かせるのみ。それでも体の震えが収まることはありませんでした。

ママが帰ってくることは、ありませんでした。
そしてパパもその日から、おかしくなりました。
常にイライラしているようで、突然私に殴り掛かるようになりました。
「お前のせいだ」と、父さんはよく言っていました。私はそれに対して、謝ることしかできませんでした。
人の目から隠れて生活してきましたから、友達どころか知り合いすらいません。私には父さんしかいません。父さんの言葉は絶対なのです。すべて私の責任なのです。

そんな生活が3年続きました。9歳のとある日、父さんとの別れは、やはり私のせいで訪れました。
不眠が続き、手先が覚束ないまま食器洗いをしていた私は、あろうことか父さんの食器を割ってしまったのです。
何度も謝る私に、父さんは一言、言葉を投げかけました。
「二度と俺の前に現れるな」
私は、従うしかありませんでした。

それから私は、キングスフォールから離れるために。ただそれだけのために、南へ向かって旅を始めました。
もちろん電車に乗るお金なんて持っていませんから、ひたすら南へ向かって歩くだけです。
蛮族に遭遇しても姿を消せばやり過ごせるため、気は全く抜けないにしろ、比較的安全に旅を進めることができました。最初こそサーベルフッドを見たときは心臓が縮こまる思いをしましたが、それも次第に慣れていきました。
旅の途中、街を見つけてはそこで少し旅費を稼いでいきました。やはり力には自信があったために基本は肉体労働を、それがなければ手先の器用さを生かして芸を披露して。それすら稼げないなら道行く人に物を乞って。それでも飢えるようなら夜の街に足を延ばして。あらゆる手段を使用して私は生き延びました。
しかしどれだけ薄汚れても、どれだけ穢れても…悪事に手を染めることだけは決してしませんでした。もしその一線を踏み越えてしまったら、ママを裏切ってしまうような気がして―――――

そんな旅が二年続き、つい去年、私は死の砂漠ゼルガに足を踏み入れました。
正直当時の私は自暴自棄の状態になっていたと思います。ただ南下するだけなら、砂漠を迂回すればいいだけですし。
案の定砂漠での旅は過酷で、私は気を失ってしまいました。しかしここまで来れば、しかも砂漠のど真ん中なら、父さんの目にも触れないだろうと、不思議な安心感もありました。私はそのまま、黄色い砂に溺れ……
…る前に、私は拾われることになります。

隠されたオアシス、マカブ。ここが私の第二の故郷になります。
薄汚れた私を拾ってくださったのはフリルシアさん。とてもお優しい方で…謝ることしかできなかった私を、優しく包み込んでくれました。
マカブでの日々は、三人だったころの家族との時間に負けないぐらい、幸せなものです。最近はまともなお仕事として、調香師についてのお勉強中です。
……ですが、いや、だからこそ、失うのが、あまりにも怖いのです。かつてのパワフルさを取り戻した今でさえ、たまにこの幸せを私が壊してしまうのではないかと、怖くなる時があります。
―――この幸福な日々が、永遠に続きますように…