古代魔法文明時代：0歳~5歳。試作型ティエンスの一体として生成され、「んー、こいつダメだわ、チェンジで！」って感じで封印される。
魔動機文明時代：6歳~8歳。大破局の折に遺跡から藁にもすがる思いで発掘され、３年ほど基礎的な戦闘訓練を叩き込まれるが、ほとんど実戦経験を積むことなく、拠点の一つが蛮族の侵攻を受ける中で再封印される。
３年間やっていたことと言えば、訓練と炊事洗濯お掃除ばかり。
血を吐きながら最期の力で7thを結界に閉じ込める育て親の笑顔と、「自分は役に立たなかった」という事実が7thの最後の記憶だった。
現代：9歳~10歳。目覚めると目の前に冒険者の一団。なんやかんやで近くの街の冒険者ギルドの預かりとなり、下働きに従事する。
年齢を理由に冒険者としての資格を得ることができず、近所の子供にせがまれて基礎の戦闘技術を教えるなどしながら燻っていた。
その時の子供が、彼女にとって初めての友達である。

人族の敵対者を全て殺す、蛮族も、魔神も、裏切り者も全て。
自分の価値を示せ、自分が失敗作ではないと証明しろ。
絶対的な人族の守護者たれ。
それは、7thが幼い自身に課した存在理由だった。
ある依頼で、7thは蛮族の奸計によって後天的に半蛮族にされたエルフと出会う。
カミーユ・エスメラルダ、少女の身体と蛮族の人格を持つ少年。
お前は人族の側かと問う7thに、少年は肯定を返す。
7thは、生まれて初めて「蛮族を殺さない」という決断を下したのだった。
その依頼で同行した戦士、キムサッガッはカミーユの師のような男だった。
依頼の最後、彼は自身がウィークリングであることを明かす。
「私は守り人になれない、しかし君は未来がある」
そう言った男に、7thは刃を向けた。
「私に信じさせてよ、あんたが人族の味方だって、そう言って」
「すまないな」
彼は死を望んでいると、ティエンスの共感能力が7thに告げる。
そうして、男は武器を取り、7thはやるべき事をした。
「くそ、クソッくそッ！！　クソッタレ！！　私はこんな……
こんな事がしたかったんじゃ……ない…………」
抵抗なく首を刎ねられた男が、最後に何か言ったような気がする。
その言葉を7thは、必死に忘れようとした。いつまでも、いつまでも。

「呪われるなよ、君の運命に」

私は間違えたのかも知れない。
キムサッガッをその手にかけたことで、7thは自身の存在理由に迷いが生じていた。
何かをしなければ。
7thは焦燥に駆られるように殺すべき”敵”を探していた。
そうして、指名手配犯である元シーン神殿公認”聖女”マリアベール・アンニラという人物を追うのだが……
その結果、7thはある真実を知ってしまう。
それは、魔動機文明時代末期に7thが最初の「ご主人様」に吐いた不用意な言葉が、300年の時を経た現代に巡り巡って地方ひとつを滅ぼしかねない魔法事故を起こす引き金になったということ。
そして、マリアベール・アンニラが命と引き換えにして、その事故を食い止めたということだった。
「どうやって、なにをすれば償えるの」
「何匹魔神を殺せば、何匹蛮族を殺せば許されるっていうの、こんなの」
明らかになった罪の行き場もないまま、7thは程なくしてもう一つの罪と向き合う事になる。

━━ああ、私のせいだ。
キムサッガッの死と7thの行いを知ったカミーユが、蛮族の衝動に呑まれかけてしまい、失踪を遂げた。
少年の行方を追う中で、7thは一つの”解決方法”を知らされる。

蛮族としての人格を抑え込めば、少年の本来の人格であるカミーラという少女を守れるだろう。

だが7thが知っている、自分は人族の敵ではないと答えたその人は少女カミーラではない。
彼女にとっての友達は、少年カミーユだ。
7thは、衝動のままに荒ぶるカミーユとの戦いの中で、身を挺して彼の怒りと孤独の受け皿となることを選ぶのだった。
「全部私にぶつけてこい！！　カミーユっ！！！！」
だが、カミーユは自らの意思で衝動を抑え込み、戦いの傷はその精神を二つに分けてしまう。
（あんたもなの？　あんたも、私を頼って、”使ってくれなかった”の……？）

贖いたい、仕えたい、使われたい、役に立ちたい、認められたい。
幼い人形は今、自分が本当は何を求めているのかを、知りかけていた。

内なる衝動との対決を制し、カミーラよりその身体を託されたカミーユに、7thは自分が犯した罪への裁きを求める。
7thはカミーユに決闘を挑むが、最後の一撃、カミーユは自らその身で7thの刃を受け止めた。
「ごめん、ごめんカミーユ、私、私が、弱かったから、あんたの敵にすらなってあげられないなんて……」
「自分を縛るのはやめとけ7th、もう俺は何も思っちゃいねえよ」
そうして血溜まりの上で、二人は互いにとっての友達となった。

この人になら、仕えてもいい。
今まで、そう7thが思った人物は三人居る。
一人は魔動機文明時代末期に発掘された7thを育てた、最初の「ご主人様」。
一人は半蛮族でありながら、人族の英雄として歩むことを志す少年カミーユ。
そして、もう一人がカミーユの姉。死病に侵されたエルフの女、エテルナだった。

エテルナが特別だったことは、ただひとつ。
自身が相応しいと認めた人族に、戦いで「使われたい」という、7thのエゴに完璧な形で応えたということだ。
少年カミーユを陥れた蛮族、アイノアとの戦いで、7thは初めて自分自身に課した役割のためではなく、新しいご主人様のために戦うことになる。
……のだが、エテルナはそこで留まる人物ではなかった。
「私と人生の最後まで添い遂げて欲しいな」
主従であるだけでなく、恋人として。
唇を奪われ、困惑しながら「ごっこ遊びみたいなものでよければいくらでも」と返す7thに、彼女は微笑むのだった。
いつか本気にしてあげましょう、と。
その約束だけを置き去りにして、エテルナは7thの前から姿を消してしまった。
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