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履歴

夢魔ー人間に淫らな夢を見せて精を吸い尽くす魔性。そう呼ばれたのは昔の話。インターネットという欲望の海にD◯SITEやFA◯ZA、無数の違法アップロードサイト等が蔓延った結果、性のニーズは加速度的に細分化し、またそれに応える数多の供給が追いつく時代となった。更にマモノとの共存により単眼萌え、多頭フェチ、生涯甲殻推し、巨獣捕食マニアなどの所謂かつて「コアなマニア」と呼ばれた嗜好はもはや一般性癖の範疇に収まった。到底いち種族の手に負える趣味・嗜好の幅ではなくなっていた。

誰かが言った。
「夢魔は黄昏の時代を迎えた」

しかし彼女はこう答える。
「日が落ちてからがホンバンでしょ？」

夢を見せ性を喰らうマモノの黄昏に立ち上がった戦士。それが斑目サキ(源氏名)である。
彼女はその身に収まらないであろう人間の飽くなき欲への探究心に感銘を受け、その開拓の手がいずれ全生命にあらゆる快楽をもたらすであろうことを確信した。そのとき、肉体の欲を満たすことしか知らなかった彼女は初めて「精神の充足」への蒙が啓かれた。そうして彼女の"夢"は「人間もマモノも気持ちよくなれる世界」となったのだ。
夢魔の技量としては既にトップクラスだった彼女は東京の場末のキャバクラで再スタートを切った。しかしベッドの上ならともかく、相手に触れずに会話と所作だけで心を満たす技量についてはまだ未熟のようだ。