流されやすく、なんでも引き受けてしまうタイプで、何でも屋も養父（失踪中）に半ば押し付けられたものである。
ペット探しや荷物運びなど、日常のちょっとした手伝いを依頼として受けるだけだった彼がオーヴァードの世界に足を踏み入れたのは、S市にある旧家・霊崎家の蔵の掃除を手伝いに行ったことがきっかけ。霊崎家は代々霊能者の家系で、蔵にはさまざまないわく付きの品が眠っている（そのなかにはExレネゲイドに侵されたものなども含まれているが、霊崎家にはレネゲイドウイルスについての知識は伝承されていない）。いわく付きであれば自然と古いもの・価値のあるものが多くを占めるわけで、長年たちの悪い骨董屋に目をつけられていた。当主が健在の間は骨董屋も手を出せずにいたが、その当主が夫とともに亡くなってしまった。10代の一人娘があとを継ぐとなれば、彼らが飛びつくのは目に見えている――そうなる前に蔵の中のものを含め遺産を整理してしまおうということになった。その手伝いとして、軛が呼ばれたわけである。
掃除の最中、彼は一本の刀を手に取った。号を不抜不飛というそれは、鞘から引き抜くことができない妖刀として伝わっていたが、彼にはすんなり抜けてしまった。そして抜いた途端に、刀に宿るレネゲイドビーイングの意識・知識、能力が彼の中に流れ込んできて、オーヴァードとしての力を手に入れることになった。無欲な彼にしては珍しく、この刀と共にありたいと感じ――強大な力ではなく、刀そのものに惹かれていた――霊崎鳰に頼み込んで不抜不飛を譲り受けたのだった。

一人称:ぼく
二人称:あなた
三人称:彼/彼女/○○さん

17歳。非オーヴァード。黒髪に青い瞳をした薄幸の美少女。この歳にして両親をうしない、霊崎家の当主を務めることになった。
責任感のつよい性格で、いわく付きの刀を引き取った軛のことを心配している。敬語で話す。ちょっと天然なところがある。

一人称:私（かしこまった場では「わたくし」）
二人称:あなた
三人称:あの方/○○さん

軛の養父。年齢不詳。何でも屋・閑古鳥の本来の主だが、現在は自分探しの旅に出ているらしい。
欲求の赴くまま行動する。さまざまな女性と浮名を流してはいたものの、甲斐性がない自覚はあったため独身を貫いていた。しかしやはり家族がほしくなったらしく、わりとノリで軛を養子に迎え入れた。案の定、父親のせいで軛は苦労したらしく、学生時代はバイト漬けだったとかなんとか。
ただ根は実直で、元々孤児だった軛が真っ当に育ったのも彼の影響によるところが大きい。

一、刀〈無銘。号不抜不飛。〉
妖刀之類也。蓋不抜者是鞘ゟ不能抜刀之意ニ有之候。不飛者其意不知也。
　　　――『霊崎蔵品目録』より
手にした者を剣鬼へと変貌させる妖刀。刀身は血に濡れたような深紅。元々は不哭不飛と呼ばれていた。数百年前、霊崎家が回収し、号を不抜不飛と改め誰にも抜けないよう封印を施したが、封印は刀に宿るレネゲイドビーインクの強い加虐衝動に共鳴する者には抜けてしまうという、不完全なものであった。そのため余人が触れることのないよう蔵の奥に安置されていたが、だんだんとその認識は薄れ、目録の書かれた元禄年間には既に、単に抜けないだけの刀として伝えられるようになっていた。
刀に宿るレネゲイドビーイングは本来であれば手にした者の意識を蝕み、やがては完全に乗っ取ってしまうが、永い休眠期間を経た現在はうまくいかず、結果として比々羅木軛との歪な共生関係ができあがっている。不抜不飛は現状に落ち着くことをよしとせず、軛の身体を奪う機会を虎視眈々とねらっている。軛はなんとなくそれに気づいているものの、特に危機感は抱いていない。
その人格は成熟した高貴な女性のものに似る。刀の形を取りながら、モノ扱いをされるのを嫌う。軛の「この子」呼びにも思うところがあるようで、そう呼ばれる度、抗議するように刀身をカタカタと鳴らす。軛以外の人間に触れられることも嫌う（軛談）。

一人称:わらわ
二人称:そなた 軛にだけ貴様
三人称:あやつ/名前呼び捨て

不抜不飛の宿主たちが培ってきた、人を「苦しめる」ための技術。

「托卵」
「くびきくんに100の質問」
「不抜不飛に100の質問」
「追懐」