旧姓、水澄(みすみ)。生家は代々文士や政治家を輩出するいわゆる名家だった。
　血筋故なのか幼い頃から読み書きに才覚を示し、それ故に過剰なほどの愛情という名の期待と共に育てられた。一度欠点を示せば「それは間違い」と矯正され、一度失敗すれば「それはならぬ」と叩き直され、必然、完璧主義が形成されたが、それは精神を圧し潰して不眠症を患わせた。眠れないことによる不調が失敗を招き、それがさらに周りの親兄弟を冷たくする。やがて彼女は目も口も閉ざし、見ろと言われたものだけを見て、言えと言われたことだけを言うようになった。

　学生の頃、家の意向で学生ディベート大会に参加したが、なんの因果かその会場がFHのテロの標的になった。逃げる最中、家族に突き飛ばされた先で暴走するジャームに捕まりあっさりと殺され、しかしどういうわけか死ななかったのでそのまま連れて行かれた。
　目を覚ましたのはFHの研究施設。あの会場でテロに巻き込まれたと思しき制服姿の少年少女と共に凄惨な日々を過ごしたが、失敗と叱責を恐れる彼女はやはり眠れずにいた。ある早朝、誰よりも早く実験室に訪れた彼女はそこで、雄鶏のような少年と出会うのだった。
「ちゃんと夜は寝ないと。チャンスがあっても逃げられなくなるぞ」
「逃げる……？」
「逃げるんだよ、こんなところ！　この力を使いこなして、アイツらにも負けないぐらいに強くなれば……助けなんて待ってらんねーよ！」
「そんなことしたって、殺されるに決まってる！　あの人達になんて勝てっこない！」
「……俺はそれでもいいよ。こんな場所で何もしないで道具みたいに捨てられるよりは、俺は俺の意志で、生きて、死んでやる。勝てない戦いなんて言われても、俺はじっとしているなんて嫌だ」
　失敗を恐れないその少年を必死に説得しようとして、余裕を無くしていた才媛は結果として逆に説得されたのだった。気がついた時には彼に手を引かれ、夜を駆け上がっていた。
「鶏鳴さん、いい考えがあります」
「分かった。シノに任せるよ」

「あなたがいるなら夜も安心して寝られそうです」
「そっか。そりゃよかった」
「ねえ」
「うん？」
「許されるなら、鶏鳴さんに、毎朝起こしてほしいです」
「……？」
「……」
「なんか……プロポーズみたいだな」
「……あ、ホントですね。じゃあ、そういうことにしてください」
「えっ」
「……？」

・アームドスーツ：目標値15、装甲値+10、白兵攻撃力+3、ドッジ-3、行動値-2
・UGNボディアーマー：目標値8、装甲値+8（息子用）
・シルバーハンマー：目標値20、マイナーアクションで使用、白兵攻撃力+5