オーヴァードに覚醒したために望まない達人になってしまった高校生

黒髪のショート、切れ長の目、基本無表情だが、目つきは鋭い。
ぶっちゃけめだかボックスの宗像形をイメージしてもらえたら…
似てない？だよね…

祖父が師範を務めている道場に幼いころから通い、剣を教わることが祖父とのコミュニケーションでもあった。
ただ夢中に剣を振っていた日常が崩れたのは、高校入学を控えていたある春の日のことだった。
いつものように師範である祖父と稽古を行っていた時、突然覚醒。はるか格上である祖父の剣が止まって見え、今まで思いもしなかった剣筋が現れ、その通りに剣を振ると…勝ってしまった。
あっけにとられていると、その場で教えられることはないと免許皆伝を宣言されてしまった。
そんなわけがない。こんな｜与えられた答え《インチキ》が。師匠を超えるわけが。
否定したくても、あの時の｜化け物《異物》を見るかのような眼を思い出すと、どうしても道場へ行くことができなかった。

ならば、独りでも証明しなくては。
その宣言は間違いであったと。自分の剣はまだ未熟であったと。たとえ｜世界《システム》が『｜達人《アデプト》』と認めようとも。

頂からは、未だ道は見えず。

double mind

未明、いつもの時間に起きて、軽く運動し、朝食前に剣を振る。いつものモーニングルーティーン。
オーヴァードになって早1年、未だ剣の道は何も見えていなかった。
高校生活に多少の憧れはあったものの、最初の授業でその夢想は儚く消え去った。
ノイマンに覚醒したためか、何もしなくても授業についていける…どころか教科書をめくるだけで全て理解してしまい、また、体育でもオーヴァード故に少し力を入れただけで異常な記録を出してしまう。
次第に授業に出ることも減り、1人校舎裏で瞑想か剣を振る生活になっていた。

最初の授業から約2ヶ月、ある少女と出会うことで、そんな生活は終わりを迎える。
少女の名は｜支倉彩奈《はせくら あやな》
病気がちで、その日も早退したところ、たまたま1人でいる所を見かけ様子を見に来たようだ。
『綺麗』―――
いつもの居合の型を模索していた所を見てそう言葉を漏らした彼女を見て、自分もかつてそう思ってたことを思い出した。
そうだ、自分も祖父の居合に憧れて道場に通ってたのではないか。なぜそんなことを忘れていたのだ。
剣の道を求めるあまり、人の道を忘れていたんじゃないのか？
今の自分は｜オーヴァード《化け物》なんかじゃない。普通の高校生なんだ。
彼女にとって何気ない感想が、俺を人に戻してくれたんだ。

それから、模索の日々は一旦打ち切り、代わりに彩奈と過ごす時間が増えた。
あまり学校に来れない彼女のために、授業をまとめたノートを彼女に見せて先生の役を務めたり、話題提供のために積極的に学校行事に参加したり…
歪ながらも、平凡な高校生として生活を送れるようになった。
それから1年、自身の力との付き合いにも慣れ始め、彼女の下に通うのが日課となっていたある日のこと――――

制服姿の彩奈に襲われた。

『護身用に武器は持っておけ』とUGNから助言を貰い、家の蔵を探したところ見つけた古い刀。
家宝のはずだが誰も存在を知らず、記録にも残っていない。初めて手にするのに不思議なほど手に馴染む。

ほぼない。覚醒した際、一時保護・教育のために身を置いていたが、UGNからの要請には非協力的。
自己研鑽のために、と断っているが、基本的には我関せずの姿勢。

double mind

宿敵との対決を終え、いつもの変わらない日常生活に戻った有馬京一郎。
いや、少し変化はあった。嘘だ。大きな変化が一つあった。
無事退院した支倉彩奈と共に通学するように、いつでも彼女を支えることができるようになった。
名目こそ保護観察ではあるがお互いにそのような認識は薄く、仲睦まじく隣に立っている。