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「ミカちゃんは何でも食べて偉いねぇ」
「コーヒー飲めるなんて大人!」
小さい頃はよく褒めてもらえた。
なんでみんなピーマンが苦手なのかわからない。
コーヒーだってとっても香りがいいじゃないか。
だから私はとっても偉くてすごいんだ。
そう思ってた。
けーきはあまい、ぴーまんはにがい
かれーはからい、うめぼしはすっぱい
何を言ってるんだろう。
おかあさんに聞いてみたても違いがわからない。
最初はお母さんもわらってたけど
小学校に入る前には病院に連れて行かれた
どうやら私は味覚というものがないらしい。
私はすごいわけじゃなくて特別だったらしい。
小学校で先生が私の事情について話をした。
私も特別だから、みんなにそれをちゃんと伝えた。
「ミカは味がしないしデザートいらないだろ?デザートじゃんけんな!」
「グリーンピースあげる。みかちゃんは味がしなくて羨ましいなー。」
私は特別だから、一人一個なものはみんなにあげた。
私は特別だからみんなが苦手なものを食べた。
ちょっともやもやするのはなんだろう。
「今日のカレー美味しかったー!あ、ごめんね?!」
「今日はみかと給食かよ…。おいしいとか言いにくいじゃん。」
どうやら、味がわからないとみんなが気を使うらしい。ごめんね。でもそんなに気にしなくていいんだよ。
そんな日を過ごしてたら、ある日みんなが私をみてくすくす笑ってた。何か頭についてるんだろうか。
何日も何日も、そんな日が続いた。そして、ある日……。
頭が痛い、お腹も痛い、体調悪い。お母さんに病院に連れて行かれた。たくさん検査した。
確認したら、私の胃の中から消しゴムのカス、チョーク、鉛筆の削りカス、そういうものが消化されずに残ってたらしい。
やっとわかった。
味覚がないこわさ。
味覚がないことを知られる怖さ。
なんだ特別なことは何でもないじゃないか。
味覚がないから物を取られて押し付けられる。
味覚がないから一緒にご飯を食べたい人はいない。
味覚がないから何を入れられても気がつけない。
食べるのが怖い。
食べないでいると気を使われた。
ご飯の時だけ私は教室にいなくて良くなった。
でもそれでからかわれるから午前中で家に帰った。
でもそれで疎まれるから学校に行かなくなった。
何やってるんだろ私。
中学からは遠くに行こう。私のこと誰も知らないところに。
給食がないところがいい。途中で居なくなってもバレないところがいい。
こことかちょうどいいかもしれない。
秀尽学園