容姿・経歴・その他メモ

剣術の名門・斎刃家、その嫡男として生を受けた玄道も、当然のように剣を握らされた。
だが、彼は剣に選ばれなかった。
振るえども一向に冴えない剣筋。
周囲の弟子たちは日ごと腕を上げる中、玄道だけが置き去りにされていった。

やがて父は口を開いた。
「お前には、剣の才がないのかもしれんな」
その言葉は父からの気遣いだったのかもしれない。
しかし、玄道にとっては斬り捨てられたに等しかった。

失意と絶望に苛まれたその夜、彼は無意識に拳を振るった。
ただ、殴りたかった。己を認なかった剣を。己自身を。

その瞬間、血が沸き立ち、世界が色を変えた。
彼はオーヴァードとして覚醒した。
発現したのは、血を操り、拳に纏わせる異能。
それは剣ではなく、拳による戦い方だった。

斎刃家の剣は、彼を認めなかった。
しかし、拳だけが彼に残っていた。

玄道は自ら「錆丸」と名乗った。
“錆びついた剣”の名は、過去への呪詛であり、再起の決意でもある。
彼は家も名も捨て、拳法家としての仮面を被り、裏社会へと姿を消した。

今、彼はFHのエージェントとして暗躍している。
与えられた任務はこなすが、忠誠心など微塵もない。
彼が従うのはただ一つ、「己が拳が正しい」と証明する衝動のみ。

誰かに強いられるのではなく、己の意志で振るう拳。
それが、錆丸 玄道という存在の、たった一つの答えだ。

「Pugno, ergo sum」──我殴ル、故ニ我在リ。

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