容姿・経歴・その他メモ

「完璧超人」
そう評された姉がいる。

その事実は人の精神にどう影響を与えるのだろうか。
劣等感に苛まれるだろうか。
反骨心に取りつかれるだろうか。

渡邉詩織はそのどちらでもなかった。
彼女は姉を慕っている。
同じように彼女は他人も慕っている。

渡邉香織は持っていた。何もかもを。しかし、彼女は愛を知らなかった。
渡邉詩織も持っていた。完璧超人ほどではないにしても。そして何より愛を知っていた。

彼女は自分が他人に愛されていることを知っている。だから愛され方がわかっている。愛し方がわかっている。
渡邉詩織は「非の打ち所がない」優秀な人間である。

渡邉詩織は決して間違えない。彼女が正しい。本来であれば彼女が「完璧超人」と言われるべきである。

では渡邉香織と渡辺詩織の最大の違いは何なのか。
それは他人の見方である。

渡邉香織は家族や周りの人間を含め「人間」として見て接している。
渡邉詩織は「渡邉香織」や「渡邉創」など「特定の個人」として見ている。

ゆえに、彼女は赤の他人に一切の関心を持たない。一度理解すれば彼女の世界に入れるのだが、気に入らない人間はとことん気に入らないのである。

つまり、彼女のことを語るのには彼女のことだけでは足りないのである。

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彼女の想い人、掛布悠里の話をしよう。
彼は渡邉詩織に初めて会ったのを渡邉家に食事に誘われた時だと思っているが、実際は違う。

21の時、大規模な作戦が行われた。浅井武の指揮でFHのとあるセルを壊滅させた作戦だ。
彼女は姉や父とは別行動だったが、的確に指示に従い、彼らにも負けない功績をあげていた。
しかし彼女は作戦中に戦ったとあるFHエージェントとの相性が悪く、追い詰められてしまう。
その時助けてくれたのがほかの誰でもない、掛布悠里だった。
彼女も、一目惚れをした。こちらも必然だろう。吊り橋効果に近いあれである。

その作戦の後、彼について調べ上げ、父親の部下だということを知ったときには飛び跳ねて喜んだものだ。
それから何度も何度も彼を家に呼ぶように父親にしつこく迫り、気合を入れて彼を迎えたのだ。
しかし彼女は勇気が出せず、彼に思いを伝えられないでいる。

一つ確かなことを言うとすれば、彼女のほうが彼に惚れている。

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