上記の記憶は、家族や親せきの殆どを失った徒亞自身によって都合のいいように改変されたものである。

実態はキリスト教徒ではなく、レネゲイドウィルスは人類を次の段階へと進める為に神からもたらされたモノとする新興宗教《LEE》の信者。所謂レネゲイドの信奉者。
"救助"された日付やエンジェルハイロゥのオーヴァードがその場にいた事は正しいが、実際の場所は教会ではなく町外れの古びた一軒家であり、行われていたのもクリスマス会の準備ではなく、次の段階へ至る為の"儀式"の準備が行われていた。

儀式の際に用いられたのは高純度レネゲイド結晶である《賢者の石》……をジャームから摘出し高濃度圧縮したレネゲイドウィルスで作り出した《赫石》と呼ばれる模造品。それを体に埋め込み覚醒を促すのが目的だった……が、オーヴァードでも苦痛を伴う賢者の石の劣化品を用いたとなれば、一般人が耐えられる筈もなかった。
その場で暴れていたジャームは信奉者たちのなれの果て。徒亞は石を埋め込まれた直後に暴走する信奉者の手により重傷を負わされ、保護されるに至った。

これらの記憶は無意識化では覚えており、極稀に悪夢として見る。

ただし、その場にいたオーヴァードが友人であり組織の内情査察に潜入していたUGNチルドレン、天原 廻(あまはら・かい)である事は保護された際の記憶処理として忘れさせられている。

『人類に次の進化を促し、その中で超常的な力に選ばれた者達が世界の指導者となる』を主張する新興宗教団体。
名称は『League of Extraordinary Elects』の頭文字をとったもの。直訳の『超常に選ばれし同盟』から転じて《超常選民同盟》と名乗ることもある。

主導者はかつてUGNの施設にいた研究員。
人道に反する実験や研究を多数行っていた為除籍され、逆恨みに近い形でFHとつながりを持つようになっていき、やがて小規模なセルへと変貌。宗教団体の体裁を取ることでUGNの監視下から逃れていた。
主な活動は信者たちを使ったレネゲイド研究や実験。オーヴァードの更に先の存在、《プライメイトオーヴァード》の独自開発を目標としていた。
拠点とする家屋の地下にレネゲイド上昇の感知を阻害する措置を施し、信者達には「神にその身を捧げる」とし、凄惨な実験が繰り返されていた。
赫石の負荷に耐え切れず鮮血と共に弾け飛んだ者。異形の姿になった者。人の姿を保ったままケダモノのようになった者。実験の進捗は芳しくなく、功を焦り感知阻害を施していない一室で数人を対象に同時に実験を行ったところ、UGNに感知されてしまう。
その後は10年前の12月24日に大規模な実験を行い、失敗。ジャーム化した信者達を廃棄処分する間もなく数名の幹部共々主導者が死亡。内部に潜入していた天原 廻と彼女が呼び寄せた増援によりジャーム達は一掃。研究資料や機材の殆どが力の暴走により焼失・破壊されている。

尚、徒亞の体内にも赫石が存在しているが、クロスブリード止まりだった為、実験の最終結果も失敗となっている。