むかーしむかし、あるところにお金持ちの家がありました。
超が付くほどの名家に生まれた娘は、それはもう大変可愛がられて育ちました。
レネゲイドにも可愛がられ、力を得た彼女は親と共に評議員になり、若いながらも懸命に働き続けていました。

　　　うらやましい。きっと幸せに生きていたんだろう。

またむかーしむかし、ふかーいふかい地下に一つの生命体がありました。
命を抱え、個を持ち、今まさに生まれようとしていました。
UGNもFHも見ていない水面ならぬ地底にて。人造生命が起ころうとしていました。

もちろん生命を勝手に生み出すなんてこと、この時代では許されることではありません。
いいことをすれば褒められて、悪いことをすれば怒られる。
そして、悪いことはいずれ陽の光に当てられるのです。

綾小路家はその一件をもって、UGNから追われる身となりました。
しかし、こんなことで諦めるようでは名が廃ります。
綾小路 法蓮はあの時に奪った生命体に命を吹き込み、罪を彼女から限りなく遠く避けました。
そうすることで、心に傷を負って生きられなくなった蓮華を再び舞台に立たせてあげられると。

法蓮からの期待、執着が入り混じって生まれた「もう一人の蓮華」に彼は命令を下しました。
「何が何でもたくさんの大金を集めてくるのだ」と。
金があればなんでもできる。そんな暴食の大罪が、勝手に蓮華に刻まれた瞬間でした。

　　　許せない。わたしは自由に生きられないの？どうしてあなたのために生きないといけないの？

植え付けられた執着を別の物語で覆いつくし、今日も街を歩く。
仕事をくれるなら、相手は一切問いませんでした。
見た目を変えて、技術も身に着け、死地に何度も赴いて、お金をたくさん稼いで。
それでも彼女の心は満たされません。

　　　たすけて。誰か、わたしに有り余るほどのお金を渡すか、すべての物から価値をなくして。

苛立った彼女は、その手に余るお金をばらまくことにしました。
欲しいものを買ってみたり、美味しいものをたらふく食べてみたり。
そうすると今度は、お金が欲しい、と腹が鳴るのです。
「手放す快楽」と「溜めこむ欲望」が矛盾して存在している以上、彼女は永遠にこの罪から逃げられないのでした。

　　　すべてを望みつくした。自由を食いつぶせば、そうすれば楽になれる。

めでたし、めでたし。