容姿・経歴・その他メモ
日本支部の研究員。ミステリアスな雰囲気の男。いつも疲れたように笑っている。普段はあまり外には出ず研究室に引き篭もっている。元々あまり頭の良い方でもないしどちらかといえば戦闘向きの能力なのだが本人が強く研究部門の配属を希望し並々ならぬ努力をしていたことが認められ、2年ほど前から研究部門に配属された。主にレネゲイドを鎮静化するための研究をしているがあまり成果は出せていない。
いつも花のような香りを漂わせている。…が、鼻の利くオーヴァードの話によれば、彼に近づいた際どこか腐ったような、いわば死臭がしたという。
RHOに関わる設定
「おれは、こんな姿になってまで、生きる意味を失ってまで、生き存えたくはなかったよ」
──彼が「オーヴァードを人間に戻す薬」を欲する理由を一言で表すなら、「化け物ではなく人間として死にたい」からである。
◯過去
子供の頃、両親が離婚し、母親に引き取られたが、母親は再婚して子供を授かると、仁に対してきつくあたるようになった。再婚相手も同様に連れ子を疎ましく思っており家に居場所などなかった。それどころか、しまいには憂さ晴らしに暴言を吐かれ、暴力を振るわれる羽目になった。
「邪魔なんだよ」「どうして生きているんだ」「あんたなんか産むんじゃなかった」
否定の言葉の数々に、少年は自分は生きているべきではないのだと思うようになった。何もかもがどうでもよくなって、学校の屋上から飛び降りようとした高校時代のある日、少年は一人の少女と出会った。
今から飛び降りようとしている少年に「なにしてるの?」とごく普通に話しかけたその少女からは、ふわりと花のような香りがした。
なんというか少女はいわゆる天然と言われる部類の人種で、少年がいまここで死のうと思っていること、生きる意味がないのだと思っていることを話すと、ようやくことの重大さを理解したように慌てはじめて、
「じゃあこうしよう、あなた、生きる意味がなくて困ってるんでしょ?だったら、私があなたの生きる意味になってあげる!だから、だからもう少しだけ、生きてみない…?」
などと突拍子もないことを言い始めたのだった。
何を馬鹿なことを、と、その時少年は思った。
それでも、瑞香と名乗った少女は、それから懸命に少年に話しかけて、一緒に弁当を食べて、他愛のない会話をするようになった。
その度に自殺を「明日でいいか」「明後日でいいか」と先延ばしにしていくうちに、死のうなどという考えはどこかに消えてしまっていた。
いつの間にか、瑞香は本当に、仁の生きる意味になっていたのだ。
それから月日は流れ、互いに惹かれあい、結ばれて、25の時、ふたりは結婚することになった。
それから少しして、瑞香のお腹の中には新しい命が宿った。
とても幸せだった。自分が愛されなかったかわりに、生まれてくる子供を、たくさんたくさん愛してあげるのだと、そう思っていた。
そう思っていたのに。
日常が崩れるのは一瞬だ。
暑い夏の日、寝る前に窓を閉め忘れていたことが原因で、夫婦は化け物に襲われた。
身体を切り裂かれて、夫婦とお腹の子の命は無情にも失われた。
そのはずだったろ。
──じゃあなんで、おれは生きているんだ?
なんで、おれだけ目を覚ましてしまったんだ?
おれが目を覚ました時に見た光景は、動かなくなった愛する人がだんだんと腐っていく姿と、
異変に気付いてやってきた大家の「ば、化け物…!人殺し…!!」という叫び声と、
訳もわからず逃げていった森の中、湖の水面を鏡のようにして映った、顔面も手足も所々ぐちゃぐちゃに腐った、死臭を放つ死に損ないの化け物の姿だった。
◯それから
あれから4年ほど経つ。世間的には大家の証言から、おれは瑞香を殺して逃亡した犯人として扱われているらしい。五年も経っているから捜査もほぼ打ち切られているだろうが。
UGNとやらに拾われて、説明を受けて、おれはどうやら自分が「屍人(リビングデッド)」という存在だということを知った。稀にあるのだという。一度死んだ人間が、レネゲイドとやらの力で生き返ることが。
──ふざけるな。
生きる意味を失った死に損ないに何が残るというんだ。
今すぐに死にたかった。けれど、出来なかった。こんな姿じゃ、瑞香に顔向けができない。こんな姿じゃ、生まれてくるはずだった子供におれが父親だなんて言えるはずがない。
だからおれは、自分が人間として死ぬために、レネゲイドを抑制し、鎮静化し、殺すための研究をすることに決めた。
夢も理想も矜恃もない、とんだエゴイストの話さ。
◯その他設定
要はゾンビみたいな存在。腐った身体は≪擬態の仮面≫、死臭は≪虹の香り≫で隠している。瑞香と同じ花の香り。死んだ人のことをだんだんと忘れていく中で、香りだけは長く記憶に残るのだとか。
左手は特に腐敗が激しく結婚指輪をつけていられなくなってしまったので、首飾りとして身につけている。
普段表には出さないが腹の底でオーヴァードやレネゲイドウイルスに対して激しい恨みと嫌悪感を抱いている。時々オーヴァードのことを化け物と称してしまうので色んな人の怒りを買っている。自己嫌悪のかたまり。
ロイスの相手:朝下 瑞香(あさした みずか)
ジャームに襲われて死んでしまった仁の妻。仁とは同い年。高校の時にたまには屋上でお弁当食べようかなあって思ってたら自殺しようとしていた仁と偶然出会ってしまいそこから気にかけているうちにだんだんと惹かれていった。天然でどこか抜けているところがある花のような女性。
メモ
朝下仁→仁・朝下→ジンチョウゲ→沈丁花
瑞香→沈丁花の別名。瑞香の香りは沈丁花の香水の香り。
沈丁花の花言葉「不死」「不滅」
死底無→「死に損ない」「死に底無い」のダブルミーニング
マウラント→なんかの言語で「死んでいる」って意味だった気がする わすれちゃった…