彼のヒーロー活動は普通のヒーローたちと何も変わらない。
事件がなければ街を巡り書類と向き合い、ファンたちと交流をし、
事件が起こればすっとこさっとこ出動する。
彼の普通と違う点といえば、何も断らないこと、そして現場への到着および制圧の迅速さである。
彼は散歩中に知り合いに出くわしたかのような気軽さで現場に顔を出し、世間話のように気軽に戦闘する。
そんな気軽さだからこそ、実績は積まれ、多くの市民の目に留まり、その異形の姿が心の安寧を生むようになった。
「最初は怖がられたんですよ、こんな愛嬌があるのにねェ。おれの尻尾、あなたも触ってみます？」

そんな華やかな平穏の拠り所である彼が、昔はヴィランであったことは彼自身が公表し多くの人間が周知している。
20年前のレネゲイドウォー。世間にレネゲイドの存在を広く知らしめることになったあの事件で彼は初めはヴィランとして戦っていた。
「そりゃあ怖いでしょう。おれだって急にこんななって驚いたんですから。受け入れられるはずがないと思ってましたからねェ。
でも、世界の方はもっと変わってたんですよねェ、恐ろしいことに。」
もはや自分の方が普通と感じたときに考えが変わったという。周囲を拒絶する理由はなくなった。
ヴィランを経てヒーローになったからこそ彼はこう語る。
助けられる気がある人にはいくらでも手を差し伸べるつもりだ、と

彼の戦闘ははたから見るととてもシンプル、そして地味である。
彼の血液をもとに作られた透明な毒液、それをオルクスの能力で浮遊させ
操り手を一回叩いたのを合図として頭からヴィランにかける……だけである。
それだけでヴィランはたちまち立っていられなくなり、抵抗できなくなる。
エンタメ性が薄いためTVでは取り上げられずらく、これまで積み上げてきた成果の割にはランキングが上がりずらい。
「それでも十分でしょう？8位。ヒーローはあこがれの対象ですから、もっと若くてキャッチ―な子が上の方がおれはいいと思いますけどねェ。」

『こいのぼり探偵事務所』はいつも忙しい。広義で他人のためになる要求ならば断わらないからだ。
彼は彼のサイドキック達と協力し、これらの解決にあたっている。
輝かしさとは遠いかもしれないが、着実に経験と知名度が積みあがる良い職場である。
やりがいはいくらでもあります。お金も出ます。
えぇ～とォ、ぜひヒーロー志望者はうちの事務所からどうですかァ？

えェ？全然ダメェ？