ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

内津峠 朝陽 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

Quickdrawクイックドロー内津峠 朝陽うつつとうげ あさひ

プレイヤー:氷@足枷

年齢
16
性別
星座
蟹座
身長
164
体重
54
血液型
B型
ワークス
UGNチルドレンB
カヴァー
高校生
ブリード
クロスブリード
シンドローム
モルフェウス
ノイマン
HP最大値
25
常備化ポイント
6
財産ポイント
2
行動値
9
戦闘移動
14
全力移動
28

経験点

消費
+34
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 もう10年くらい会ってねぇなぁ。ま!オーヴァードなんてそんなもんそんなもん!こんな気色悪いの、家にいたってどうしようもないだろ?
親戚と疎遠
経験 あの時、先生が差し伸べてくれた手を俺は取れなかった。俺だけじゃねえさ、誰も取れなかった。だけどそれはきっと先生に対する裏切りで、それで先生は独りぼっちで死んでったんだろうなぁって……たまに、どうしてあの手をすぐに掴めなかったんだろうと思うことがある。
裏切った
邂逅 たった一年だったけど、あの支部で過ごした日々は俺にとっちゃぁ宝物なんだ。
友人
覚醒 侵蝕値 なんか3歳とかの頃にレネゲイド関連の事件?事故?に巻き込まれたらしいんだけど、そん時はまあバブだったし俺は俺で物作るの下手くそモルフェウスだからなーんにもそれらしいことしないしで見逃されちゃったってワケ。
感染 14
衝動 侵蝕値 全部ぶっ壊して、そんで証明してやる。俺が最強だってな!
破壊 16
その他の修正6精鋭(2)、武芸の達人(4)
侵蝕率基本値36

能力値

肉体1 感覚3 精神3 社会2
シンドローム1+0 シンドローム2+0 シンドローム0+3 シンドローム1+1
ワークス ワークス1 ワークス ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵 射撃+14=25 RC1 交渉
回避1 知覚 意志+1=1 調達1
情報:UGN1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
D 精鋭:射撃 射撃+5
先生 同情 悔悟 なぁ先生。あんた、あん時どんな気持ちだったんだよ。
最強 執着 隔意 目指せば目指すほど、遠ざかっていくような気がする。

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
武芸の達人 3 常時 自動成功 自身 至近
〈射撃〉+(Lv×3)。レベルアップしない。
ファンアウト 1 セットアッププロセス 自動成功 範囲(選択) 至近 4
対象は戦闘移動を行う。移動先は対象が決定。拒否可能。自分を対象にできない。1シナリオLv回。
戦術 3 セットアッププロセス 自動成功 シーン(選択) 視界 6
ラウンド中のメジャーダイス+Lv個。自分を対象にできない。
ハンドレッドガンズ 3 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 3
シーン間、射撃武器作成、装備。
ダブルクリエイト 1 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 3
作成する武器の数を二つに変更。
マルチウェポン 1 メジャーアクション 〈白兵〉〈射撃〉 対決 武器 3
武器二つ使用。射程短、範囲狭、至近不可優先。達成値-(5-Lv)(最大0)。
構造看破 1 メジャーアクション 自動成功 効果参照 至近
人工物の構造を解析できる。〈知識:〉
壁抜け 1 メジャーアクション 自動成功 自身 至近
そのままの意味。〈RC〉

コンボ

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
ハンドレッドガンズ 射撃 〈射撃〉 0 +(Lv×3)+4 - 30m
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
思い出の一品 2 一般 〈意志〉 達成値+1
情報収集チーム 2 コネ 〈情報:〉 達成値+2
1シナリオ3回。
サイドリール 15 一般 射撃武器による攻撃の達成値+3、攻撃力+1d

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 25 124 15 0 164 0/164
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

概要

「最強を目指すワケ、だぁ?んなもんねぇよ。
最強……なあ、ロマン溢れる響きだろ?それだけで目指す価値がある!
……なんだその顔!さては呆れてるな!?お前、今俺のことバカだと思っただろ!!」

最強と書いてヒーローを志す一般UGNチルドレン。
憧れの先輩みたいになりたいという、ごくごく一般的な夢に向かって毎日ジタバタやっている。

とても脳筋。本当にノイマンか?

誕生日は6月28日

容姿

かなり明るめの茶髪(ほぼ金髪)。
オン眉ぱっつん前髪で後ろは赤いリボンで一つに結んでいる。
ちょっと太めの眉毛に吊り目でなんだか気が強そうな顔。
目の色は緑。
よく見たらちょっとそばかすがある。丸メガネと合わせて多分チャームポイント。

経歴
5歳
レネゲイド関連事件に巻き込まれる。
覚醒したのはこのタイミングであると推測されている。
6歳
小学校入学。異常な『頭の良さ』によって地域内で噂になり、その噂話をUGNが捕捉……『これはちょっと怪しいぞ?』ということになり学校の健康診断のついでにこっそり検体を採集。
検査の結果、無事……無事?オーヴァードだということがわかり『才能がある子なので』『一般の学校ではなく特殊な学校に』『その学校は全寮制で』というようなカバーストーリーを使って保護……というか、確保。
それ以降、一般的な小学校卒業の歳までUGNのチルドレン養成施設で過ごす。
13歳
新設されたUGN KI市支部に配属される。
14歳
UGN KI市支部が崩壊する。
以降はなんか……ええ感じにシナリオに合わせます。
KI市支部配属時代のあれこれ書きたいとこだけ

 小学校に入るまで自分はどこにでもいる普通の子だと思っていた。
 周りの子が幼稚園の先生に「本読んで」と頼んでいるのを見ても特に何も思わなかった。
 とっくに文字は読めていたけど、でも先生が読んでくれる本をみんなで見るのはそれはそれで楽しかったから何も疑うことなんてなかった。
 小学校に入って、すぐに平仮名の練習と足し算の練習が始まった。それでやっと、周りをおかしいと思い始めた。
 どうして文字なんてものを習わなきゃいけないのかわからなかった。今まで散々絵本を読んでもらったんだから、普通に読めるものじゃないのと。書くのは確かに、綺麗に書くのは練習しないといけないのかもしれないけれど……覚える、必要性を感じることができなかった。
 どうして足し算なんか、引き算なんか教えられなきゃいけないのかわからなかった。何をどうしたって足し算は足し算で、引き算は引き算。掛け算は大体足し算だし、割り算は掛け算だ。何を戸惑うことがあるんだろう。
 教えられてもそのことを理解できない子がいるのかが理解できなかった。
 片っ端から教科書を読んでは次の学年のを手に取って、また置いて。
 でもどこまで行っても「わからない」ことなんてどこにもなかった。
 自分が3時間で読んだ本が本当なら12年かけて学ぶ内容だったと気がついた時、周りがおかしいのではなく私がおかしいのだとやっとわかった。

 小学校に入って、1ヶ月。家に知らない人がやってきた。
 なんとなくわかった。私は今から、全然違う場所に連れて行かれて、思っていた人生とは全く違う人生を歩むことになると。
 わかっていても、それに抵抗することはしなかった。もう、この未来は確定したものだと理解していた。

 家族から引き離されて、知らない子たちとの共同生活が始まった。それは一般的な『共同生活』とはまるで違うものだった。
 戦って、戦って、戦って戦って戦う。
 訓練、実戦、そしてまた訓練。
 はじめはたくさんいた子どもたちも、一人……また一人と減っていく。
 私に最初に話しかけてくれた子も、私と仲良しだったあの子も。
 ぽろぽろ欠けて、散って、消えていく。
 トモダチ、なんて作ったところでみんないなくなってしまうなら……そうして心を閉ざした。

 長く伸ばした前髪と、分厚いレンズの丸眼鏡。
 世界と私の間の壁。自分を守るための防壁。
 どうか誰もこっちに来ないで。初めから誰もいなければ、消えていく人を見なくて済むから。
 そんな願いの形。


 私は幸いなことに……幸い、だろうか?……無事に養成施設を卒業することができ、とある新設支部に配属された。。
 その頃にはもう人と関わる方法何で覚えていなくて、私は特になんの感慨も無くその支部の扉を開けた。……自動ドアだから勝手に開いた、という方が正しいだろうけど。
 その支部の1階ロビーではチルドレンたちがわちゃわちゃとしていて、茶色い髪の女せ……いや、男性……?がバインダーを片手にうろうろ歩き回っていた。
「お名前は?」
 その人は私の元にもやってきて、そう言った。
「……内津峠、朝陽……」
 俯いたまま、ぽつりと名前を告げる。
「……よろしく」
 誰とも関わる気なんて、一つもなかった。
 ただ、言われたことをこなすだけでそれでいいと思っていた。
 感情を揺らされることのない生活を望んでいた。
 そう、ただ一本の植物あるいは銃のように生きていたいと思っていた。
 彼、もしくは彼女……はバインダーに挟んだ名簿にチェックをつけて笑った。
「"Quickdraw"、内津峠……長いな……朝陽くんだね。私は進藤朱見。ここの支部長を務めさせてもらうことになったんだ。よろしくね」
 その笑顔と差し出された手に、きっと誰とも関わらないなんて勝手は許してもらえないんだろうなと思った。

憧憬

 施設を卒業して、あの支部に配属された当初。いきなり全員で自己紹介なんてやらされて『仲良くしよう』なんて馬鹿らしい言葉を支部長からもらった。
 支部長にもなるような人が、どうしてそんな甘い考えをしていられるのかがわからなかった。
 どうせすぐ誰かが消えて、またあの施設で過ごしたような日々が戻ってくると思っていた。
 思っていたのに。
「任務完了、というやつだね。大丈夫かい?朝陽くん」
 私は、正直大人が前に出て戦うのをみたことがなかった。大人の人は、もし死んでしまったらみんなどうしていいかわからなくなるからと言って後ろに引きこもっているものだった。
 だから、誰よりも何よりも速く支部長が飛び出していくなんて思ってなかった。
 どうせ最初だけだと思っていた。だけど、いつでもどんな仕事でも、支部長は真っ先に飛び出していく。
 いつ、どんな相手でも、どこかに余裕を残したような涼しい顔で「大丈夫かい?」と問いかけてくる。
 支部長はそういう人だった。


 支部長がそういう人だからだろうか。この支部の人は、みんな変だった。
 失うのなんて怖くないみたいにベタベタひっついて、居場所なんか作ってる。
 私は、怖かった。一緒に話して、ゲームして、ふざけて、笑った相手がいつかいなくなってしまうことが怖かった。
 壁に開けた小さな隙間から、みんなのことを覗いているような感覚。
 みんな笑ってる。楽しそう。向こう側に、行きたい。でも私は臆病だから、この壁は越えられない。
「……どうして、そんな風にいられるの?」
 なぜかおさげを解かれて、なぜか知らない編み方をされながら、先輩にうっかりそんなことを聞いたことがある。
 これまでの会話の流れも何もかも無視した唐突な質問に、先輩は
「んー……?大切だから?」
と答えた。
「……怖くないの?みんな、いなくなっちゃうかもしれないのに」
 私の聞きたいことをなぜか知っている先輩に、そんなことを問いかける。
「……怖いよ」
 先輩の手が止まり、ポツリとそんな弱音が落ちた。
「けど」
 ぎゅ、と私の髪をしっかり編み込む。
「怖いからこそ、隣にいたい。後悔したくないんだ。あの時、隣にいればあいつは助かったかもしれないってそんなことを思いたくない」
 チルドレン最年長の彼女はよくわからない編み込みにした私の髪に髪留めをつけて、それから私の頭を撫でた。
「うん、かわいいよ〜朝陽」
「……頼んでない……」
 ……でも、悪い気分ではなかった。

後悔

 事件は起こる。大人がいない時だって変わらずに。
 それは壁の隙間から、上半身だけ出してアップルパイとホットミルクティーを食べていた時のこと。
「6丁目で事件発生」
 施設時代からの同期、"星を観る者"……天見が呟いた。
「……ジャーム、すごく暴れてる」
 ぼんやりと斜め上を見ている彼女の目には、きっと現在進行形で破壊の限りを尽くす化け物ジャームの姿が映っているのだろう。
「先生と加藤さんは?」
「……先生は相変わらず見えない。加藤さんは……寝てる」
「わかった、アタシが出る」
 先輩が躊躇なくそう言って、立ち上がる。
『隣に立つのは、失ったときに後悔をしたくないから』
 その言葉を思い出して手を伸ばす。
「……ぁ」
 先輩の服は、私の手をすり抜けていった。


 この支部で初めて誰かを失って、1週間。
 私は、ある覚悟を持って職員室……という名の支部長室を訪ねていた。
 コンコンコンと、三回ノック。二回はトイレ。
「……失礼します」
 学校でするのと同じように、扉を開けて一礼する。
「……先生、今いいですか」
「おや?朝陽くんどうしたんだい?」
 壁の向こうでいつも通り書類の山を崩していた先生が顔を上げ、こてんと効果音が鳴りそうな動きで首を傾げた。
 ……その日、私は壁を崩す覚悟を持ってそこに立っていた。
 壁の向こうから見る先生の背中は、残酷なくらい遠かった。
 その隣にいるみんなの姿は、目が潰れるくらい眩しかった。
 壁の内に引きこもる自分自身の姿は、弱々しくて、情けなくて、嫌だと思った。
『後悔しないため』
 先輩はそう言った。失った時、『何かできたはず』と悔やみ続けることのないように、できること全てやれるように。そのために隣にいるんだと。
 ……私は、後悔していた。
 あの時、先輩の服を掴めなかったこと。一緒に行けなかったこと、隣に立てなかったこと。
 あの人を、何もしないままに失った自分が、ものすごく、ものすごく嫌になった。死んでしまえと思うくらいに。
 だから、崩そうと決めた。今の私を殺して、この壁を越えて、みんなの隣、先生の隣に立つために。決めてそこに立っていた。
 だけど、壁が本当になくなってしまうということを考えるとどうしても怖くて。あと一言がなかなか言い出せなくて、私はそのまま何も言えずに俯く。
 深呼吸を繰り返す。視界の端に、先生の革靴が見える。
 覚悟を決めないと。
 変わりたいと願ったのは、私なのだから。
「……先生」
 そろそろ……と目線を上げる。思ったより早く、先生と目が合って思わず逸らしそうになる。
「うん、なんだい?」
 いつもよりちょっと近い先生の真紅の瞳がよく見える。
「……私の前髪、切って」
「構わないよ」
 私がここに何をしにきたのか。わかっていたかのような即答だった。
 先生は俗に言う職員室の椅子に私を座らせて、なぜかそこにおいてあった美容室でよく見るビニールのカバーのようなものを私につけた。
「どれくらい切る?」
 そう言いながら私のメガネをそっと外して、机の上に置く。
「……わかんない」
「どうなりたい?」
 まるでどうして前髪を切りたいのかわかっているかのように問いを重ねた。
「……変わりたい」
「どんな風に?」
先生や、先輩たちみたいに。
「……強い、人……?」
 強くて、みんなの隣に立っていられる人。守られるんじゃなく、支え合える人に。
「それはどうして?」
「……後悔を、しないため……?」
「そっか」
 先生は笑ってハサミを持った。

回顧

 今にして思えば、きっと彼女が死んだのは先生にとってはただの誤算だったのだろう。
 『もう誰も死なない、新しい日常』。
 それは、自分の用意した悲劇が最大の効果を発揮するように作り出した幻想。
 最大の効果を発揮させるためには、『想定外の場所で死者を出してはならない』。
 それなのに先輩は死んでしまった。
 なら、出来る限り早く『その影響を除かなければならない』。
 ……傷は、時が経てば自然に癒えるものだ。
 だけど、それはあまりにも早かった。

 1ヶ月もする頃には『最年長』は圓丈とユーリになっていた。
 誰も先輩のことを……"神槍"のことを、口に出さなくなっていた。
 『誰も死なない新しい日常』は変わらなかった。
 先輩の隣に立てなかったことを、あんなに悔やんだはずなのに。
 ……私は、変われなかった。


 施設を卒業して、気がつけば8ヶ月。日曜日は学校がないから朝から支部に顔を出す。
 トン、と支部の前に立つと自動ドアが開く。
「おはよう、朝陽くん」
 支部長はいつ支部に行っても、任務で外してるとかじゃない限りそこにいて、笑って「おはよう」って言ってくれる。……なんで事務仕事まで自分でやってるんだろこの人……
「おはようございます、朝陽さん。メガネ、曇ってますよ」
 小言がうるさい加藤さん。本当は多分素行が悪いんだろうなって、そんな気配がする。
「今日の割り振り、まだなので上でのんびりしててください」
「三浦くんと石破くんがなんだっけ?なんかカードゲームしてるよ」
 "星砂"くん、あのカードゲームなんて名前だっけ。知りません、興味ないです。そんな会話を背に階段を上がり、三階の談話室の扉を開ける。
「アサヒ、おはヨ」
「あ、おはよ」
 畳の上に最近ハマってるらしいカードゲームを広げて遊んでる三浦と石破がいた。
「アサヒもやる?」
「いやこのゲーム、ノイマンと勝負しても勝てなくね?」
「カード、めっチャ縛れば……勝テル、多分」
「多分かよ」
「ホラ!3人寄レばナンカの知恵だヨ!」
「一人足りてねぇ!」
 ものすごく自然に一緒に遊ぶことになっている気がする……施設時代からノイマンはノイマン同士でやってろ、くらいに言われてたから工夫して一緒に遊ぼうって言われるのがなんだか変な気分だ。……それはそうとしてカードが縛られたくらいで負ける気はないんだけど。
「……じゃあ、この5枚でやる」

 私の三連勝に石破と三浦が頭を抱えてもう一枚減らしてコールを始めたとき、バンッと勢いよく談話室の扉が開かれた。
「おはよ〜」
 いつも通りのほわほわした挨拶をするユーリと、挨拶をすること自体が恥ずかしいみたいに目を逸らしてる圓丈。
 そしてその脳天に落ちる加藤さんの拳。
「……ッ……ぉ"、はよう……ございまず……」
 頭を抑えて蚊の鳴くような声で挨拶をする圓丈に、誰からともなく笑い出す。
 それが私の、新しい日常の姿だった。

あの日

 『あの日』。私は家にいた。もう少ししたら支部に遊びに行こうかな、だなんて考えていた。
携帯電話が鳴り響く。ジリジリと、人の不安を煽るような警戒音。咄嗟に開くとそこにはメールが届いた旨の通知。
 こんな音を設定した覚えはない。こういうことができるのは……頭をよぎるのは支部長のシンドローム。
 受信メールを選択……見たくない。だけど見るしかない。
 差出人、先生。件名、なし。本文……
『各位。支部2階大会議室に集合』
 それだけだった。
 私は携帯だけを握りしめて家を飛び出した。


 息を切らしてたどり着いた、いつも通りの支部の一階。
 スッと開く自動ドアの向こうに一歩を踏み出して……パキリ、とありえない音と感触がした。
 思わず足元を見る。だけどそこには『何もない』。
 正面、右、左。順に確認する『何もない』、『いつも通り』の一般的の塾のような1階ロビー。
 ホワイトボードに今日の時間割が書かれていて、教室と、担当教師が書かれている。
 相変わらず出ずっぱりの先生と、評判が悪すぎてかなり減った加藤さんの担当クラスと、支部の人じゃない普通のバイトの先生たちのクラス。そこまではっきり見える。見えるけど。
 これは『幻覚』だ。
 そういう意識で周囲を眺める。爪先で床をなぞる。
 伝わってくる感触。微かな音。それから推測されるものが必ず『そこにある』。
 じわ、と視界が歪んで幻覚が溶けていく。
「……なに、これ」
 幻の裏側に隠されていたのは、無惨に破壊された日常私の居場所だった。
 割れた窓から外に半分突き出したホワイトボード。真っ二つの机。床に残る深い爪痕。
 その傷の幅には見覚えがある。三浦だ。三浦が戦闘時に生み出す巨大な腕のつける傷。深さ、傷の幅、傷同士の距離。間違いない。三浦だ。だけどどうしてこんなところに。
 熱線に溶かされたように消えた机の足は、きっと圓丈だ。
 少しだけ焦げた床は、石破。
 天井に残った浅い、綺麗な傷はユーリ。
 残された傷のつき方、上下関係。見たくもない現実なのに、勝手に頭の中で何が起きたのかがシミュレーションされていく。
 新しい傷を追う。奥へ奥へ、誘い込まれるように。
 何かを引きずった後を追う。隠すように、さらに奥へ。
 ……下げたままの視界に、誰かの投げ出された両足が映った。ボロボロになった、茶色のローファー。
 視線を上げたくない。自分の考えが当たっていることを確かめたくない。できれば間違っていて欲しい。
 だけど、この頭が間違うことなどないのだ。
 顔を上げる。目の前には右腕と、頭のない死体。だけどどこか不自然な、アンバランスな、『つぎはぎ』のようなその体は……
「……三浦」
 そこでようやく、『誰も死なない新しい日常』が終わったことを悟った。


 2階に上がる。
 大会議室に入るとまだまばらにしか人はいなくて、端で圓丈とユーリと石破が俯いていた。
 不規則な軌道を描いて圓丈の周りを歪な球形の魔眼が飛んでいる。ユーリは俯いたまま動かない。石破は自分の手をぼんやり見つめてる。
 どう見たって何かあったようなその姿を、他のチルドレンが遠巻きに見ていた。
 声をかけようか、一瞬迷った。
 だけど、何と声をかけていいかわからなかった。あの場で何がどうなったのかがわかっていたから。
 そこから少し離れたところで、先生が静かに右足を交換している。その光景に少しの違和感を持つ。
 あの場所に先生の痕跡はほとんどなかった。少なくとも、脚を交換する必要が出るほど先生が『追い詰められた』跡はなかった。
 コト、と傍らに置かれた右足に視線が吸い込まれる。
 パッと見えるところに傷はなし。ただよくよく見れば膝のあたりのパーツが歪んでいたり、割れていたりする。不自然な壊れ方だ。まるでわざと同時に「動かす」という指令と「ロックする」という指令を出したような状態……それが何を意味するのか。

 ……考えてはいけない。
 気がついてはいけない。
 ただ何かに絡まっているような、息苦しさだけがある。


 その部屋は、変に暑かった。
 暑くて頭がくらくらして、思考能力が下がっている……自覚がある……
「知らない人の日常のために君たちが傷つく必要なんてないだろう」
 なにか、靄がかかったような頭の芯に先生の声が響く。
「知りもしない人のために、取り返しのつかないことになる必要なんて」
 先生が教壇から降りる。まるで何か『舞台』でも見ているような。
「私はね、君たちのとこが大切だ。どこかの知らない誰かの日常よりよっぽど、大切になってしまったんだ」
 先生が、いつものように机の間を歩く。軽金属製の両足が奏でる鈴のような音はない。ただ革靴の硬い足音だけが響く。
「UGNに所属する限り、"盾"の役割から離れられないのなら」
 くるり、振り向く。真剣な顔。
 それすら計算の内のように見えて。
「いっそ、みんなでFHにでも行ってしまおうか」
 手が差し出される。逆光。赤い目が、ただこちらをまっすぐ見ている。
 ゾクリ、と背筋が凍る。
 おかしい。絶対に何かがおかしい。
 先生はこんなことを言わない。先生はこんなことを言わない?考えるな。
 そもそも先生が『三浦をユーリに殺させる』訳がない。先生は『あそこにいた』。それなのに、先生が『間に合わなかった』わけがない。
 そもそも『先生の痕跡がほとんどなかった』こと自体がおかしい。先生はまともに三浦の相手をしていない。それはどうして?
 おかしい。気がついてはいけない。
 何かに浮かされたようなみんなの顔も。
 今、一瞬ふわっと舞い上がってそのまま先生の手を取りそうになった私の頭も、体も。
 なにか、おかしい。

 そこでやっと気がついた。気がついてしまった。気がつきたくなかった。
 昔、葉山が言っていたこと。
「あれは『いい先生』なんかじゃねえ。本質はどっか別にある」
 ああ、そうだ。そうだった。それならきっと、この不気味な気配が本質だ。
 だけどもう動けない。周到に、何重にも重ねられた罠に絡まって逃げ出せない。
 ひゅ、と息を吸うのと同時に大教室の扉が吹き飛んだ。

変わらなきゃ

 先生は死んだ。"星砂"が殺した。
 先生がFHを選ぼうとしたから。いや、そんな『気の迷い』みたいな話じゃないだろう。もっと、深く、根本的な問題で、先生は『私たちの敵』になった。
 何となく、わかっている。だけど認めたくないから、それからは少しだけ目を逸らしている。

 明確なことはただ一つ。
 ……私はまた、何もできなかった。

 鏡を見る。
 眉の上で真っ直ぐ切られた前髪が映る。
 そう、壁はすっかりとっぱらってしまったはずだった。弱い私は殺したはずだった。
 だけど、私は弱いまま。私は私のままだった。
 覚悟が、足りなかった。
 私は、変われてなかった。髪だけ切って、みんなの隣に立てた気になっていただけだった。
 変わらなきゃ。何もしない、何もできない私のままじゃ、運命を変えられない。何もかも失うだけの私が続くだけ。
「それはもう、今日でおしまい」
 次こそちゃんと、私を殺す。
 もう失わない。もう後悔しない。そう、なれるはずだ。望めばどんな人にだって。
 この能力を持ってすれば、人を騙すことは容易い。たとえそれが自分自身であったとしても。

 手の中のそれを、鏡の中の自分に真っ直ぐ向けて引き金を引いた。

これから

 いつかどこかの街の中に、高く高く足音を鳴らして歩く少女の姿が一つ。
「頼もー!」
 少女はある建物の扉を勢いよく開け、中に足を踏み入れる。
「俺の名前は内津峠朝陽!」
 足は肩幅に開いて、腰に手を当てる。絵に描いたような仁王立ちで少女は名乗る。
「俺が目指すのはただ一つ!」
 人差し指を掲げ、宣言する。
「最強だ!」

 これは、主人公ヒーローを目指す、あるエキストラの物語。

能力

銃しか作れない不器用モルフェウス。
それはそうとして銃を二つ同時に撃てば火力って倍だよな?

中身用メモ

RP方針→目指せ最強!未来の最強は俺だ〜!
一人称→俺
二人称→お前、かあんた
 なんとなく親しい人はあんた率が高い気がする。
カラーコード:#cf0141(ペッパーレッド)
基本1、2、上級、IC、EA、LM、IA、BC
作成日 2023年5月28日(45)

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 34

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