ワークス/カバー：任意/任意（UGN協力者）
　シナリオロイス：**"マスターレギオン"ヴァシリオス・ガウラス**＿推奨感情(P:感服/N:脅威)
　★指定設定:レネゲイドビーイングの相棒"アリオン"がいる(詳細は後述)
> 　君はUGN系列のエージェント、もしくはフリーランスのオーヴァードでUGN協力者だ。普段から世界中を転々としており、技量・人格ともに信頼されている。
> 　君はFHのマスターエージェント"マスターレギオン"ヴァシリオス・ガウラスと浅からぬ因縁があり、これまでに幾度も激突した。(彼がFH エージェントになる前からの知り合いでも良い。この設定はGMとよく相談すること)
> 　君は今度こそ彼と決着を付けるため、豪華寝台列車"マリンスノー"へと乗り込むのだった。
PC４の相棒**アリオン**
`　黒曜石の首飾りの姿をした独立型レネゲイドビーイング。
　PL都合により外観などの設定は調整可能。デフォルトのオリジンはミネラル。過去には義手や武器として共闘した卓もある。
　その他詳細についても、GMに相談してくれればかなりの自由度がある。言ってみるよろし。`
```※オープニングで"マスターレギオン"と対峙します。豪華寝台列車"マリンスノー"内での因縁の相手との掛け合いを考えておいてください。```

【エレウシスの秘儀PC４、追加情報】
"マスターレギオン"ヴァシリオス・ガウラス
見た目は30代に見える、47歳男性。ﾌﾞﾗﾑ=ｽﾄｰｶｰ、元はイスラエル軍の軍属。ギリシャ人。レネゲイド拡散と共に起こった中東での「内戦」及び「魔女狩り」時、現地で混乱の極みに達していたオーヴァード達をまとめ上げ傭兵部隊として整え著しい戦果を挙げたが、内外からの迫害に遭い歴史の闇に葬られた。
> 「この世界の不平等を是正する。これを聖戦などと言いはしない。これは我々の、我々による私闘である。我々は最後の一人となっても、決して口を閉ざしはしない。『私達は確かにここにいた』」

「オイ、あんた」
「あんただよ、あんた。ほら、今こっちを見た」
「いやいやいや、気のせいじゃねえって。ほら、俺はここ」

　露店でなれなれしい声を聞いたのはいつのことだったろう。
　今その声の主は耳たぶに下がっている。

「アンタときたら全く俺の価値をわかってないね。もっと大事に扱えよ？　まったく……」
　先日は鴉に連れ去られたり、スリに持って行かれたり宿に置き忘れたりして、その度になんだかんだとちゃんと見つかるのだから、これは、アレね。ツンデレというやつ。
「なあ、なんか面白くないこと考えてねえか？」
　そんなことないわよ。ふふふ。

「で、次行くのはMM地区支部？　前にチラッと言ってた、”マスターレギオン”に関係してるんだっけ」
　ヴァシリオス・ガウラスよ。ええ、そうね……

　◇　◇　◇

　───────十数年前

　そこが地獄だったのはずいぶんと前からだが、最近は地獄の質が変わって来た。
　人を狩って兵士とする時代は終わり、今は化け物を狩って兵器に仕立て上げている。
　子供だろうと女だろうと老人だろうと構わない。薬を打って暴走させ敵陣に突っ込ませるだけで下手な兵器よりよほど戦果を挙げる生きた爆弾共は今やABC兵器並みの値段で取引されている。
　化け物は人間と見分けがつかないが、何、簡単だ。殺して死ななければ魔女だ。

「お姉ちゃん？　お花いる？」
　ジャックと名乗った少年は、自らもまた虜の身ながら、あからさまに現地の人間ではない雪花を何かにつけて気遣ってくれた。曰く、観光業に携わっていた両親からの教育なのだとか。恥ずかし気にそっぽを向いてモゴモゴと説明する言葉を解釈すれば、つまりそういうことらしい。
　捕まったそこでは時折人が数人増えては同じだけ減ることを除いては、差し迫った危機を感じなかった。老若男女の別なく雑魚寝し、砂の混じった粥のような食事しかないところには不満もそれなりであったが、それはそれとして美しいものも可愛いものもあった。
　困ったのは、ジャックが病にかかった時だ。両足が腐り落ちる前にと集落の入り口を見張る軍人に事情を話しても、順序が逆になるだけだからと訳の分からないことを言うので、仕方なしにと飛ばした小鳥が全て撃ち落され、鳥を飛ばしたのは誰だと過剰なほど武装した兵隊が威圧的にやってきた時、名乗り出ようとした雪花を建物の中に引き摺りこんだ女性は無言で首を横に振った。
　「私です」と枯れ木のような老人が名乗り出た途端、間髪入れずにその額に赤い穴が開いた。ズルズルと引きずられていく老人がトラックに投げ入れられ、兵隊たちが去っていってから、集落はやっと詰めていた息を吐き出し、また兵隊たちが来る前と同じように夕食の話などを始める。
　誰も雪花を攻めなかった。老人の娘である、雪花を隠した女性ですら。

　それからしばらくの後、雪花はまた別の場所に居た。
　あのあと、しばらくして武装集団が集落を襲撃し、村民たちを兵士から解放したのである。
「君の国外脱出を手助けする。かわりに、国境まででいい。キャラバンを護衛して欲しい」
　浅黒い肌の男は、助けた恩を持ち出すことも無くそう提案した。
　ヴァシリオス・ガウラスと名乗ったその男は、この“傭兵部隊”の隊長を勤める元軍人だそうだ。それがどうして傭兵とは名ばかりの難民集団を率いているのかは不明であるが、この生真面目な態度からして察するものはあろうというもの。
　曰く、数人ではあるが国外の信頼出来るスジに保護を頼める手筈が整ったとのことだった。
「道中は盗賊、魔女狩りに加えて獣の被害も報告されている。無力な難民を護衛しながらとなるとそれなりの困難だ。君ほどの手練に頼めるとしたら僥倖だが、無理にとは言わない。国境を超えてからは好きにしてもらって構わないが、どうだろうか」
　地図を前に淡々と語る男は確かにならず者集団の長というよりは軍人の気質を伺わせた。療養中のジャックと一緒に行けないのは残念だが快方に向かっているのは間違いないしここはこの国の中では比較的安全だろう。

　​───傭兵部隊が全滅したと、雪花が聞いたのは越境してしばらくのことだった。

　◇　◇　◇

　そうそう。昔、油断してちょっと困ってたところを助けてもらったのよ。
「でも、凶悪テロリストなんだろ」
　そうなのよね。私の知ってる彼とはずいぶん違うの。
「そりゃあ……俺たちはオーヴァードだからな。年季の入ったやつほどマトモじゃねえよ」
　あら、……鏡が必要かしら？
「馬ッ鹿、お前ェ、この俺の鏡面仕上げが目に入らねえたぁ、老眼かよ？」
　合わせ鏡じゃ終わりが見えないわねえ。
「はあ……。で、受けるのかい、その仕事」
　そうね。会いたい人もいることだし、行きましょう。

　MM地区へ……