体内に取り込んだ神具『陽断華(ヒタチバナ)』は、生きているかのように変異し続ける伝承物質『日緋色金』の特性のまま体内を蝕んでいた。
危うく全身鉱物化するところを、説明が足りないし平気で実しやかに嘘をつくスリジエ……コピー元である枢木桜が紆余曲折の末助け出した。

──────正義vs正義などと言うチープでダブルスタンダードな観測者が生まれる戦いは好まないわ。正義は正義、悪は悪として役割を果たす。実情はどうあれ、視点は片側に絞って楽しむべきなのよ──────

そう告げる彼女でさえ、悪役にはなり切れなかった。
ともかく、ピーキーかつ爆発的なエネルギー操作から漸く調整しやすい出力が可能になった。
実は桜と虚数空間を介して通信する事が可能で(通称『虚通信』)、躯体の表面に付着するレネゲイドウィルスを操作して纏う事でレネゲイドを用いる戦闘にも介入できるようになった。

─────レネゲイドウィルスは、感染者の精神構造に依存して因子が覚醒する。つまり、望まれた通りに形を変えるのだ。それは、日緋色金と『偶然にもよく似通った』特性だと語る桜が何を言わんとしているか。漠然とは理解できるが、その先には触れない事にしている。

神具を摘出する前は日緋色金の変質によって修復が行われていたが、部位の置換になってしまう為本質的な修理が行われているとは言えなかった。所謂『テーセウスの船問題』である。

なお、神具の摘出前後ではエネルギー総量が大幅に異なる。
摘出前はそれだけで地盤を砕くほどの炸裂を起こし、排熱機構自体にも甚大な損傷が発生していた。
現在は調整がしやすくバックファイアも少ない為、より精度の高い扱いができるようになった。

【格納兵装展開・反応因子収束(CustomAttachment-RenegadeProtect)】

爆発的なエネルギー量による、ある種無差別な破壊的突進を失った為、有事の備えとして躯体を改造した。
元々高機動力を発揮するためのバーニア機構、噴進機構は備わっているが、武装と言えるものは搭載していなかった。その為躯体の日緋色金侵食による空洞スペースを利用して、アタッチメント兵装を体内に格納する事にしたのだ。
さらに展開した兵装は動力を制御し、擬似的にレネゲイドウィルスをコントロール出来るようになった。
本人はオーヴァードではないが、レネゲイドウィルスによる戦闘には介入できる。

まだ理論レベルの技術で課題もあるが、レネゲイドプロテクト、という固有性能として試験運用している。

「───────レネゲイドに操られたからこそ、逆説的に操る術を学んだ。……ふふ、見てください。男の子は皆、こういう兵装が好きだと聞いたのです」

【柔軟生命体戦闘術(Built-inCombat type:Erzsébet)】

死血のレネゲイドビーイング、実験体E-72aことエルジェーベトと名のついた血でできた蝙蝠に身体を操られた際の身体稼働記録から、今まで運用していなかった生物的な体術、本能的な格闘技術を学習した。
いつかの世界で消滅した枢木の一族。その血が混ざり合い自我を得たものがエルジェーベトである。
エルジェーベトは炉心であった神具を介してシェリーを操ったが、それは神具が『枢木の肉体』として相性が良かったから、だそうだ。匕首が、肉体？桜にこの件を問いただしたが、彼女は「知らない方がいい、人間が嫌いになるわよ」としか語らなかった。