｢荒田　仁｣としての自分はしがないギタリストだ。
しかし自分はオーヴァードでもある。
…ジャームが人を傷つけ、それから人を救おうとするものがジャームとなる世界を変える、終わらせるためには戦いは避けられない。
なら俺は死にきれないもの、狂った世界への死神となろう。
だからオーヴァードとしての俺の名前は…神すら殺す｢死の嵐(テュホン)｣だ。


現実逃避、自己への目逸らし。例え名前で切り分けたとしても事実は何も変わらない。彼は彼の自己を保ったまま、つまりギタリストである時と何も変わらずに敵と殺しあいをしている。
…それでも｢ギタリストとして人殺しをする｣ことを善しとはしなかったのは臆病さかそれとも良識からか。

彼はエグザイルという｢人の姿に捕らわれない｣シンドロームでありながら日常や調査でそれを生かすことはほとんどない。同様にエグザイルシンドロームとしてはさほど特異ではない肉体置換手術も行っていない。戦闘も右手の爪を変化させて伸ばすという最小限の変化である。(本人はセンスが無いのだと思っている)

それは彼が無意識に｢普通の人間でありたい｣と思っているのが反映されているからだ。
本来であれば特異点でもある彼が望めば無限の変化が自分にも世界にも訪れるにもかかわらず彼はそれを善しとしない。
ゆえに彼は臆病でわがままで慈悲深い｢普通の人間｣なのである。