しかし、時折真面目さとは異なるものに半ば強制的につき動かされているかのような様子を見せることがあり、何かに強く囚われてしまっている印象がある。

　自身のことは、日々を笑って生きる資格を持たない人間であると考えており、その境遇がもたらす周囲のネガティブな反応も甘んじて受け入れてしまう。

　ヒーローとして本来世間から認められるべき存在になるはずだった少女の想いを実現し、彼女の名を世に刻みたいと強く望んでいる。一方で、彼女の代わりに活動をすることで自分が世間に認められることは罪であると考えている。結果として、正式なヒーローとしてではなくヴィジランテとして亡き友の名を借り活動している。

　孤児院で一緒に暮らす子供たちは家族であり、友達と呼べるような相手はいなかった。そんな奈具であったが、小学校中学年になる頃に人生で初めての友達ができた。豊宇(とよう)志久(しく)と名乗るその少女は別の学校の人間であるにも関わらず、放課後の帰り道で孤児院暮らしである奈具を揶揄する同級生集団の前に立ちはだかり、見事に払いのけてみせた。

　志久は、小中高一貫の学校に通うような裕福な家系の子であるらしく身なりも非常に良かったが、孤児院で暮らす自分に対しても分け隔てなく接してくれる少女だった。放課後の限られた時間を共に過ごすようになり、彼女がヒーローを目指し街中でよく人助けをしていること、奈具との出会いもそれがきっかけであったことを知った。奈具はそんな彼女を心の底から応援したいと思うようになっていた。

　小学5年生のある日、心なしかいつにも増して静けさの漂う雰囲気の中、奈具は誰もいない公園で志久を待っていた。そろそろ着く頃だろうかなどと考えていた時、今までの静寂を引き裂くような軽快な足音が徐々に公園に近寄ってくる。これから始まる楽しい時間への期待に高鳴る胸を精一杯に抑えて「志久...」と振り返った先にいたのは、不気味な笑みを浮かべながら奈具を直視している異質な男だった。

　男は視線を一切逸らす様子もなく近づいてくる。逃げなければおそらく殺されるだろうということは理解できていたが、恐怖のあまり奈具は動くことができなかった。男が腕を振りかぶる動作を見せ、死を覚悟した奈具はぎゅっと目を閉じた。その間に何があったのか詳しいことは分からないが、次に目を開けたときには眼前に瀕死の志久がいたという事実のみがあった。男は先ほどの笑顔が嘘かのように退屈そうな顔で、辛うじて繋ぎとめているその命を刈り取ろうとしていた。その瞬間、奈具の体中を駆け巡った彼女を守らなければという強い思いがオーヴァードとしての力を目覚めさせた。

　その先のことはあまり覚えていない。ただ、すべてが終わった後には圧壊した男の姿と少女の亡骸のみが残されていた。豊宇志久という少女の人生を自分のことを庇うという形で終わらせてしまったこと、自分が犠牲になるべきであったと強く後悔した。ヒーローとして世間に認められ平和の象徴ともなるべき人間を死なせてしまい、彼女が望む世界平和の実現という夢さえも遠ざけてしまった自分という人間を許すことはできなかった。

　賀能夫婦は自分に対してとても良くしてくれるが、一度も面識のない自分を急に養子に迎え入れたことに対しては多少の疑念があった。しかし、志久の遺志を実現するためにはある程度の環境が必要であったため悪くない状況ではあった。

　両親の望みから、中学からは小中高一貫のお嬢様学校へ通うことにした。もともと勉学には熱心に取り組んでいたが、覚醒した力を使うことで、より効率的に成績を伸ばし入学を確実なものとした。入学してからは、賀能家の影響力やその中での自身の存在も相まって好奇の目に晒されることになったが、自分が犠牲になることに対しては何も苦ではなかった。ただ、彼女の存在を皆が忘れなければそれで良かった。

　そんな日常の裏では、志久の遺志の実現を目指しヴィジランテとして活動していた。自分がヒーローとして表舞台に立ってはいけない人間であることを加味すると最適な決断であった。彼女の生きた証を後世に残し、彼女が目指した平和を実現する。そのために奈具は、ヴィジランテの活動でシクと名乗ることにした。ヴィランと戦う者の中に、賀能奈具という人間は存在してはいけなかった。

　賀能家に引き取られてからおよそ5年が経つが、奈具には一つ懸念点があった。「由良まち」という存在である。養子として来たときから既に家に居ついていた謎の存在である。

　神社の歴史は古く西暦700年頃から続いており、賀能家はその長い歴史の中で多くの神事に携わってきたことで現在に続く役割をもつようになった。

　平安時代には陰陽五行説に基づく技術体系が確立され陰陽道が隆盛を極めたことにより、古来から存在する神道のアニミズム的要素と陰陽道の呪術的な要素を組み合わせた研究が都の方で盛んに行われていた。レネゲイドウイルスが認知されていない時代ではあったが、一連の研究は本質的にはレネゲイドウイルスを扱うものであったことが後に判明している。そうして生み出された者たちは式神という名で使役されるようになった。

　長い歴史を持つ眞奈井神社には、かつての都から縁あって流れてきた、何らかの理由で封印されている若しくは未完成のまま放置されていた式神がいくつか祀られている。今から100年ほど前には、それらの式神に由良の独自要素と賀能家の神道研究の蓄積を融合させる試みが賀能家総出で行われている。その成果は定かではないが、その頃から賀能家には居候がいるという噂が立つようになった。

パラディン　　　憧憬/厭気〇
春野こずえ　　　〇信頼/不安
バトルマシン　　好奇心/脅威〇
フォーリンラブ　好奇心/嫌悪〇

パラディン ◎憧憬/厭気
稲荷 　　 ◎信頼感/不安
明烏 　　 ◎連帯感/不安
ジェイミー西崎　◎同情/不安

ジェイミー西崎をタイタス、昇華

パラディン 同情／厭気◎
ダークナイト 連帯感／侮蔑◎
阿見寺ひとえ ◎信頼／不安
霧谷雄吾 ◎同情／不信感