A市におけるジャーム化事件の、最後の被害者。次々と失踪するセルのメンバーを不審に思い、親友までもが消えたことを契機に本来敵対関係にあるUGNへ救援を求めた。事件を追うさなか彼女もまたジャーム化の危機に晒されかけるも、解決にあたった面々の尽力によって無事に生還を果たす。
そのときの縁をもとにUGNへ転向。エージェントとなるべく訓練を受け、現在は候補生として励んでいる。書類上の扱いはイリーガル。

　きほん悪ぶっているが、根っこは善良な小心者。大人や権力に対する無軌道な反骨精神は、過去の一件からいくらかおとなしくなっている。

　FHエージェントでありながら明確な欲望を持たない。これはセルの特異性によるもの。
　実際のところエージェントとは名ばかりで、末端の下請けといった立ち位置。社会への反発からUGNとの衝突をくりかえしていたが、UGNの方針や思想そのものには肯定的。
　一方で、共存を謳いながらもオーヴァードを抑圧する組織のありようを疑問視していた親友のことも尊重しており、良く言えば中立的、あえて悪く言うならばどっちつかずの考え方。

　それでも彼女は、日陰にも光が射すと信じている。こころを欠いたジャームになってしまった親友が、おのれにとって木漏れ日だったように。
　はじめての憧れで、自慢のともだち。今はどこか遠い場所で眠る彼女を取り戻すために、レネゲイドについて学んでいる。いつの日かジャーム化の治療を実現することを夢見て。

　FHセル"スタブ"で与えられたコードネーム。覚醒したばかりの頃に加入し、レネゲイドの励起に難があったことから強化手術を受けている。片目に埋め込んだ照準器と視神経を接続させることで、超遠距離からの精密射撃が可能となった。コードネームは銃種を問わずスコープを必要としないことからきている。
　所属が変わった今、古巣の名にこだわる必要はない。だが、彼女は二番目の名前をあんがい気に入っていた。
　……その名を授かったときのことは、今でもおぼえている。
　なにもない自分が生まれ変わったような全能感と、はじめて自分だけのものを手に入れたという誇らしさ。振り返ってみればくだらない、ただの思い上がりは、だけど当時の景にとっては何にも代え難かったのだ。

　ある支配型レネゲイドビーイングの新たな器として選ばれた過去を持つ。生まれつき持っていたレネゲイドが活性化しにくい体質──安定体とも呼ばれる素養が原因と推測されているが、正確なことは何も分かっていない。
　また、その一件では何の後遺症も追っていないが、長時間衝動にさらされたことがきっかけで、不得手だったはずのレネゲイドの活性を任意で行えるようになった。要するにタガを外すコツの体得。

　FHエージェント"サージショット"漆川都子がモルフェウスシンドロームの力によって作成した銃。A市の事件中に回収され、のちに"アイアンサイト"に預けられた。以来大切に保管されていたが、オーヴァードとしての力が衰退したことで《光の銃》が作成できなくなったため一時的に用いている。