ガキの頃から、自分がイカれているのは気付いていた。
他の奴らが１回遊んで飽きた駄菓子屋の爆竹とエアガンでいつまでも遊んでいて、
次第にそれだけじゃ物足りなくなり、火薬をかき集めて自作し始めていた。
爆発が好きだ。
腹に響くようなデカい音が好きだ。押し出された火薬臭い空気が、顔に当たる感覚が好きだ。
これがないと生きている心地がしねえ。

曲がりなりに高校を卒業して、それが当たり前のことのように家を出た。
だが爆発以外にやりたいことはないし、
スーツ着て部屋でお行儀良くするのが普通の世界に、イカれ野郎の居場所はねえ。
日雇いで食い繋いで、廃屋で爆弾を作って生きていた。
「足りない」という感覚だけに突き動かされ続け、
どんどん威力を上げていって。ある時、遂にしくじった。

超至近距離の爆発に、かつてない期待と死の予感。
直後、爆風を浴びた熱さと高揚感が体を駆け抜けたが…しっかりと人の形のままだった。
爆ぜるような音がしちゃいるが痛みは無い。
…これは焼かれたのではなく、自らの機能で爆ぜている。
全身から感じる万能感。
ふと手をかざすと、工場の壁面が爆ぜ飛び一瞬で黒い欠片になる程の爆発を「起こせた」。
「カカカッ！これだ！オレが欲しかった世界はァ！」

その後しばらくの記憶は曖昧だ。
ようやく見つけたオレの世界で爆破し(いき)て、爆破して、爆破して。
誰かに水差されて頭がシケたと思った次の時にゃ、
化け物みたいなガキ数人に囲われて脚を斬り飛ばされて、
コンクリートの床に縫い付けられていた。
痛え。冷てえ。何もねえ。
オレだけの最高の世界が見つかったと思ったのは気のせいだったらしい。
イカれた化物の世界の隅に齧り付いてただけだ。

くたばりかけのオレを見下ろす奴がいた。
ガキ共じゃない、後から出てきたエラそうな奴。
そいつは何も知らないのに、全部見て来たようなツラで、こう言ったんだ。
「ルールを守れ。その力を人のために使え。それが君のやりたいことをやる近道だ」

そいつの言うまま、レネゲイドのコントロールを学び、知識を叩き込みしばらくして。
UGNとコネクションのある警察機関で、爆発物の研究をしつつ
任務をこなすことになり、今に至る。
うるせえしエラそうなやつもいて窮屈といえば窮屈だが、
不思議とガキの頃のような飢えはない。
だからオレは、このUGNのルールの中で、人のために爆破する。オレのために。

だから悪かったって。
会議中にイライラしてコーラ10本爆発させたのは反省してンだわ。