乾 槙は元は一般的な少年であった。が、小学校低学年のある時両親が失踪し、孤児となった。保護されてからも親戚を｜盥《たらい》回しにされ、大層良い扱いは受けなかった。それどころか彼の両親の真相を知るものは彼を不幸の人形の様に扱い、疎まれ、この世に存在しないものとして扱われることもあった。最後には裕福な家柄である草加家に養子として引き取られることになり、名を「草加 槙」として生きることになった。
養子となってからは何不自由ない生活を送っていたものの、過去の経験から人を信じることはなく、草加は与えられたことを完璧に熟し、は自らの世界に引きこもる少年となっていた。だが、内には過去の苦しみから這い上がってみせるという気概があった。そんな彼にも恋人ができる。中学三年の秋、多才に恵まれながらも周りと接触しようとしない彼を気にかけてくれた同級生と付き合い、共に同じ高校へ進学することにした。彼は彼女には自身の過去や心の内を暴露し、彼女自身もそうすることで互いに仲を深めていった。

草加が高校生となった頃、スマートブレイン社の存在を知る。スマートブレイン社の理念とその「正義」に共感した彼は、社長の基に行き自らの正義と野心を語った。この頃には既にRBを主とした世界を作るために活動していたスマートブレイン社は彼を「怪人兵器」として使えると判断。彼を受け入れ、次第に彼を利用しようと動いた。
スマートブレイン社の一員となった草加であったが、そのことで恋人と衝突。真面目で誠実な草加のままでいて欲しいと思った彼女はどうにかして彼を止めようとするものの、自らが正義に盲目な彼を促してしまい運命の歯車が止まらなくなったと考えた彼女は責任感からか「新しい人ができたから」と伝え、彼から離れることにした。
最愛の人であり、自らの理解者であった恋人を無くした草加は更に暴走。スマートブレイン社の悪事に手を貸していることを知りながらも自らの正義のためにという正当化の基で言い訳を続けることとなった。

高校2年生の夏、草加を利用した「怪人兵器計画」のためにライダーシステム研究グループを買収したスマートブレイン社は、草加にこう問いかけた

「正義の仮面を付けないか？」と。

草加はこの世界のジャームと邪魔なオーヴァードたちを掃討するためのライダーシステム：｜Φ-Z《ファイズ》を与えられ、スマートブレイン社での安泰なる生活と一生の立場を約束されることになった。自らの正義に酔いしれた彼は渡米し、自らをライダーシステムに適合したRBとするために肉体を改造した。そしてその際、過去の人間に二度と会わないため見た目を変え、性別を捨て、完全な軍人兵器となることにした。
だが、草加がアメリカでリハビリをしている間に、ただの女子高生であった黒羽美咲がライダーシステムに適合。仮面ライダーファイズとして活動していることを知る。更にいくらリハビリと臨床限界実験を繰り返してもRBの力が覚醒せずライダーシステムに適合できないと知ったスマートブレイン社は、草加を切り捨て、新たな国籍のみを渡し見捨てることにした。この時、草加は自らを捨てたスマートブレイン社、そして自らのΦ-Zを奪った黒羽を深く憎んだ。

草加は日本に戻り、スマートブレイン社と黒羽の動向を伺っていた。もちろん未だRBは未覚醒のままであったため、軽い接触のみであったが、ある時UGNの任務にて黒羽美咲がジャーム化し処分されたという事実を知る。
彼は憎んだ相手すら殺せずに、今ただの女子高生として生きているのだ。