彼は物静かな男だ。広く馴れあうことをせず、命ぜられた任務を淡々とこなす。
特にこれと言った特技のない男だったが、レネゲイドビーイングと共生を始めたことで、踊り…特に日本舞踊への才覚を現し始めた。ゆったりとした、厳かながら優雅な動作は自然と視線を集め、釘付けにして離さない。

雅章の足に寄生したレネゲイドビーイング。雅章の中で別人格として形を作り、雅章の体を使い舞を舞う。
雅章曰く、彼女には眼球がなく、薄紫色の長い髪をしているとのこと。
美しくしなやかな足を持ち、舞の際には雅章の足はこの藤の足と同じものになるのだそう。
さすがに、武骨であまり見目が良いとは言えない自分の足から綺麗な女性の足に変化するのは気が引けるのか、手入れは怠らないようにしている。
艶御足のコードネームは、この藤の足に付けられているようなものだ。

UGNから任された任務中、協力的なゼノスのメンバーと関わりを持つことがあった。藤の存在を見透かされ、ゼノスへ来ないかと勧誘されたが、雅章にはその気が全くなかったためその場では断った。
しかし逆に、そのメンバーの内の数人がUGNに興味を持ちゼノスより離反。UGNへと協力をするようになり始めた。
雅章が所属する支部にいる離反者達は、今のところ大人しくUGNの方針に従っているようだ。

雅章と藤は独学で舞を学び、自己流の舞を作り上げた。
呼び名は「藤ノ舞」で統一され、副題に美しくも歪な心を添える。

前に出て力任せに殴るようなことを雅章は好まない。
攻撃を受け流し、相手の力を利用し、流れる所作で一撃を入れる。
それに大きな刀や銃は必要ない。的確な体運びと、弱点を見極める目さえあれば良い。
藤によって齎されたノイマンシンドロームが、その芸当を可能とした。