家庭について、生まれについて、語ることは何もない。どこにでもある幸せな家族は、今もまだその形を保っている。詠がFHに所属していた時も、UGNエージェントとして過ごしている今も、家には彼女の従者が「六曜詠」として生活しているのだから。

下校中にFHエージェントが画策した爆破事故に巻き込まれ、そのまま覚醒者としてFHに収容された。ジャーム化を厭うことのないFHによってかなり強引に能力を使用させられており、ジャーム化せずにUGNに保護されたのは奇跡的であると言えるだろう。FHエージェント時代、彼女の視界に入った敵は力を失い死を確約されるという点で恐れられていたかもしれない。
彼女のFHエージェントとしての経歴の最期は、UGN支部長薬王寺結希率いる部隊との戦闘での敗北とセルの壊滅による投降である。

投降したのち、数年に及ぶ拘留と尋問を経て薬王寺支部長の責任の下UGNエージェントとしての身分を与えられた。そして紆余曲折ののちにN市の支部へと転属となった。かつてはFHエージェントであり、同僚からも信頼されていないということは十分理解しており、戦いの中で力を用いる際も決して自ら手を下すような真似はしていない。一思いに殺されるのと体の自由を奪われて死を実感しながらその時を待つのとではどちらが残酷で恐ろしいのだろうか。