支部長たり得るだけの実力はあるのだが、その評価は｢狡猾｣｢悪辣｣｢人でなし｣｢侵蝕率をちょろまかしたジャーム｣と酷いもの。
日常においても、戦闘においても、人の善意や隙に着け込むような手口を多用する。気分が乗ると道化た演技まで始めるので、大抵の部下は裏で｢いげピエ｣と呼んでいるとか。
ちなみに当たり屋稼業には、お察しの通りエグザイルのエフェクトによる傷害偽装、ハヌマーンの擬似負傷音を主に用いる。その場で慰謝料を支払いそうな相手を選んだり、少しでも法をチラつかせた相手にはワーディングで有耶無耶(うやむや)にしたりと抜かりが無い。

雅文の出生当時から、彼の母親もまたUGNの支部長であった。
その手腕は周囲から高く評価されており、日本支部重役への昇進の話もあったほど。幼い頃はUGNやレネゲイドについては聞かされていなかったが、それでも母親の優秀さは子どもながら感じていたようだ。

18歳のとき、母親からUGNについて明かされ、進路に迷いのあった雅文は成り行きでUGNに所属。非オーヴァードであった当時は、母親の数段下の部下として、一般的な事務職を任された。
しかし、親の七光りで組織に入ったことや、飛び抜けた母親の優秀さ故に、職務内容が全く違うにも拘わらず、｢母親に見合わぬ出来損ない｣として烙印を押されてしまう。

そんな中、母親の任務に、機材運び程度の簡単な仕事で同行する機会があった。
危険は無いものの、UGNとして放置出来ない重要な任務。しかし、その想定を裏切って、任務中の職員たちをFHが襲撃する。
大型トラックで雅文含むエージェントたちを轢き殺そうとしたFH構成員だったが、すんでのところで母親が参入。雅文たちは無事だったものの、母親は甚大なダメージを負い、殉職してしまう。
｢出来損ない｣の自分を責めた雅文は、その憤怒をトリガーに……皮肉にも、母親と入れ替わるようにして、オーヴァードへと覚醒した。

英の代理として臨時の長を立てた支部で、雅文は自らエージェントに志願。悪評を拭いきれるほどの鮮烈さは無いものの、一般的な職員程度には、着々と成果を上げて行った。
ある時、参加した任務を再びFHが襲撃。同じセルの残党と見られる構成員たちは、英が殉職した事件と同様、車両による物量攻撃を敢行する。
他のエージェントが対応出来ない中、母親の死に異常な責任を感じる雅文は、己のプライドさえ押し殺し、卑劣な策略によってFHに勝利する。

後輩として任務に参加し、雅文の活躍を目撃した淳の強い推薦により、臨時の支部長代理に代わって、雅文は正式な支部長として就任。
母親の跡を継ぐ形になったものの、自らのやり口に負い目を感じる雅文は、あえて道化としての自分を強調することで、母親との比較の目を振り払おうとした。結果として、雅文への悪評は相対から絶対へと変わり、今では英の名を口にする者はほとんど居ない。