由緒正しき家柄で生まれた子。
香道をやっている家系で、一族はみな今まで跡を継いできた。
その筋ではとても有名な一族である。勿論そこの子供として生まれた彼女も後を継ぐことを望まれている。
家族にはしっかりと愛されて育ったが、そういう家系だったのもあり、古い考えが捨てきれていない家でもある。
その為彼女には後継ぎをちゃんと産んでもらうためにも、しっかりとした家柄の男性が婚約者としてあてがわれている。
6歳程度年上の方で、とても気づかいのできる優しい人。
それでもなんとなく苦手意識があり、結婚に対して肯定的ではない。
でも今まで家族の言うとおりに生きてきたので、今更逆らい方もわからず言いなりのまま受け入れている。
せめて兄妹がいればよかったが、あいにく一人っ子の為後継ぎを産めるのは彼女しかいない。
母親はあまり身体が丈夫ではなかったため、彼女を産むだけで限界だった。
二人目は命にかかわるかもしれないと言われており、その為彼女が後を継ぐしかない。
そんな状態で後を継ぎたくないなど言えない性格なのだ。

2人と出会ってからかなり明るくなった。
2人と出会う前は今よりももっと大人しく、人の言う事をなんでも聞くタイプだった。
その為2人に会ってからは大分雰囲気が変わったと初等部から一緒だった子は言っていたりする。
他の人にはそうでもないが、2人相手だと結構甘えてきたりする言動も多い。
2人の事大好きだからずっと一緒に居たいし、沢山スキンシップ取りに来る。


璃桜のことは最初は普通に女の子だと思ってたが、すぐに男性だという事に気が付く。
多分学校生活のあれそれがなかったら男性だということに気が付くことはなかったと思われる。
実は言ってないが璃桜には憧れを抱いている。
自分のなりたい姿、恰好をして堂々としているのがとてもかっこよくて、彼女には眩しく見えた。
璃桜と一緒に居たらいつか自分も璃桜みたいにかっこよくなれないかな、と思っている。

祈里のことはつらいときに隠れて落ち込んでいたら励ましてもらったことがあった。
その時期は技術を得るために厳しい指導を受けていた時で、しかし上手にいかなかった時だった。
親戚の人に「こんなこともできないのか」「両親はこれぐらい簡単にできるようになっていたのに」等言われて心がおれそうな時だった。そんな状態で2人と過ごしてる時でも上手く笑えなくて適当に理由をつけて1人でいたのにバレてしまった。
その際に祈里に惹かれていき好きになっていった。
最初は同性同士で言えなかった。でもある時、抱え込むのがつらくて思い切って璃桜に相談をした。
言うのは少し怖かったが、それに対してどうこう言ってくる子じゃないと信頼してたから。
そうして度々璃桜に恋愛相談をしていた。相談に乗ってくれる璃桜に勇気づけられ祈里に告白した。
振られたらもう今までみたいに3人でいられなくなるのか不安もあったけどもう戻れなかったから。
受け入れて貰えた時はすごく嬉しかったしすぐに璃桜に報告した。
表にはできない関係なので、3人だけの秘密にしている。

恋人になれて嬉しいが、それ以上に2人の事が大好きなので3人で過ごしたいがメイン。
恋人になったからって何かが変わるわけでもない。
今まで通り3人で過ごすのが彼女にとっての一番の幸せだから。



でも、自分が男性だったらこの関係はもっと堂々と出来たんだろうな、とも思っている。
同性だと後ろ指刺されるから。家族や親戚たちにも何言われるかもわからない。
私たちが異性だったら、何にも囚われずに堂々と付き合えたのかな。
そしたら婚約も解消して好きな人と生涯を過ごす選択を選べたのかな、なんて。願わずにはいられない。

今更男の姿になれても遅いのにね。あの子はもういないのに。