“タダ静カニ劇ハ終ワル”音桐 晃
プレイヤー:かい
オニコウ様よりいただきもの
- 年齢
- 17
- 性別
- 男性
- 星座
- 身長
- 175cm
- 体重
- 57kg
- 血液型
- B型
- ワークス
- FHチルドレンB
- カヴァー
- 不良学生
- ブリード
- クロスブリード
- シンドローム
- エンジェルハィロゥ
- モルフェウス
- HP最大値
- 23
- 常備化ポイント
- 4
- 財産ポイント
- 2
- 行動値
- 13
- 戦闘移動
- 18
- 全力移動
- 36
経験点
- 消費
- +24
- 未使用
- 0
ライフパス
出自 | 有名な音楽一家に生まれる。家族大好きで超ハッピーな幼少期を過ごしていた | |
---|---|---|
有名人 | ||
経験 | ある日、大好きだった家族は全員、何者かに惨殺された | |
絶望 | ||
欲望 | …ただ復讐のためだけに、俺はここにいる | |
(欲望)復讐 | ||
覚醒 | 侵蝕値 | あの日俺は家族と共に死んだ。だが、俺(と姉の腕)だけがこの世界に取り残されている… |
死 | 18 | |
衝動 | 侵蝕値 | 家族を奪った殺人犯が許せない。あの時何も出来なかった自分が許せない。俺を残して行ってしまった家族が… |
憎悪 | 18 | |
その他の修正 | 7 | デスストーカー(5)、Dロイス:装着者(2) |
侵蝕率基本値 | 43 |
能力値
肉体 | 1 | 感覚 | 6 | 精神 | 1 | 社会 | 1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
シンドローム | 0+1 | シンドローム | 3+2 | シンドローム | 1+0 | シンドローム | 0+1 |
ワークス | ワークス | 1 | ワークス | ワークス | |||
成長 | 0 | 成長 | 0 | 成長 | 0 | 成長 | 0 |
その他修正 | その他修正 | その他修正 | その他修正 | ||||
白兵 | 射撃 | 4 | RC | 1 | 交渉 | ||
回避 | 1 | 知覚 | 意志 | 調達 | 1 | ||
運転: | 芸術: | 知識:音楽 | 1 | 情報:FH | 4 |
ロイス
関係 | 名前 | 感情(Posi/Nega) | 属性 | 状態 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Dロイス | 装着者(アイテムユーザー) | ― | 常備化40点以下のFH専用アイテムをひとつ常備化できる。侵触基本値+2 | ||||
家族 | 音桐小夜 | 幸福感 | / | 偏愛 | 姉。今でも時々彼だけには見える、と本人は思っている | ||
仕事 | 三毛蘭治郎 | 有為 | / | 食傷 | 国籍不明性別不明そもそも種族不明のFHの手配師。晃を気遣ってくれている。 | ||
シナリオロイス | "ネバー・エンドロール"拭波常夜 | 感謝 | / | 恐怖 | シナリオロイス。育ての親。晃の復讐の理解者であり、生きている人間で唯一信頼している。 | ||
― | |||||||
― | |||||||
― |
エフェクト
種別 | 名称 | LV | タイミング | 技能 | 難易度 | 対象 | 射程 | 侵蝕値 | 制限 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
リザレクト | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 効果参照 | ― | |
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇 | |||||||||
ワーディング | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | シーン | 視界 | 0 | ― | |
非オーヴァードをエキストラ化 | |||||||||
コンセントレーション:エンジェルハイロウ | 3 | メジャーアクション | シンドローム | 2 | |||||
C値-lv | |||||||||
陽炎の衣 | 2 | マイナーアクション | 3 | ||||||
隠密状態になる。シーンLv回 | |||||||||
見えざる死神 | 1 | メジャーアクション | 射撃 | 2 | |||||
隠密状態で使用可能。ダイス+1、攻撃力+lv*3 | |||||||||
デスストーカー | 4 | 常時 | |||||||
攻撃力+lv*4、侵触率基本値+5 | |||||||||
レーザーファン | 1 | メジャーアクション | シンドローム | 3 | |||||
範囲(選択)に変更。シナリオlv回 | |||||||||
光芒の疾走 | 1 | マイナーアクション | 1 | ||||||
戦闘移動。離脱可能。シーンlv回 | |||||||||
砂の加護 | 2 | オートアクション | 3 | ||||||
ウサギの耳 | 1 | メジャーアクション | |||||||
めっちゃ耳が良くなる | |||||||||
見放されし地 | 1 | メジャーアクション | |||||||
任意のエリアを暗くする |
コンボ
夜を待つだけ(マジックアワー)
- 組み合わせ
- マイナー:陽炎の衣、メジャー:コンセ+見えざる死神、(常時:デスストーカー))
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- 射撃
- 難易度
- 対決
- 対象
- 単体
- 射程
- 15m
- 侵蝕値
- 7
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%未満
- 6+1
- 7
- 4+-1
- 29
- 100%以上
- 6+1
- 7
- 4+-1
- 32
- 6+1
侵触3+4、ダメージ+2d、シーンlv回、同エンゲージ不可。マイナーで隠密状態になる。レーザーファン追加で侵触+3、範囲(選択)に変更
朝日の向こうへ(マジックアワー)
- 組み合わせ
- 基本(夜を待つだけ)+砂の加護(オート)
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- 射撃
- 難易度
- 対決
- 対象
- 単体
- 射程
- 15m
- 侵蝕値
- 10
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%未満
- 6+4
- 7
- 4+-1
- 29
- 100%以上
- 6+5
- 7
- 4+-1
- 32
- 6+4
基本(夜を待つだけ)+砂の加護(オート)
武器 | 常備化 | 経験点 | 種別 | 技能 | 命中 | 攻撃力 | ガード 値 | 射程 | 解説 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サイレントシーカー | 射撃 | 〈射撃〉 | -1 | 10 | 15 | FH専用アイテム(HR記載)。隠密時ダメージ+2d |
一般アイテム | 常備化 | 経験点 | 種別 | 技能 | 解説 |
---|---|---|---|---|---|
ウェポンケース | 1 | ||||
コネ:FH幹部 | 1 | 情報FH時、ダイス+2 | |||
サイレントシーカー | 0 | Dロイス効果にて取得(HRp92)。命中-1、攻撃力10、隠密時+2d、同エンゲージ攻撃不可 |
経験点計算
能力値 | 技能 | エフェクト | アイテム | メモリー | 使用総計 | 未使用/合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
10 | 144 | 0 | 0 | 154 | 0/154 |
侵蝕率効果表
現在侵蝕率:
容姿・経歴・その他メモ
○外見
・白髪、不健康そうな色白の肌色。暗い光を湛えるアブナイ瞳、目の下には隈
・高身長やせ形、左腕が無い(家族惨殺時以降)
・暗い色の服を好んで着る
○性格
・ねじ曲がっている
・他人は基本、信じない
・粗暴、すぐ怒る、口悪い、意地っ張り
・復讐以外に興味ないので、基本世間知らず。
・勉強も嫌い。comeと書いてコメとか読んじゃう。でも、妙に難しい漢字は読めたりする(不良あるある)
○その他設定
・殺人者への復讐心でいっぱい。復讐後のことは考えたこともない
・他人のことは信じないが、拭波と脳内の家族(姉)は別
・ヘビースモーカー。普段の食事はサプリ
・ネバーエンドロールに教え込まれた戦闘技術の実践と、仇の情報収集を兼ねて、別セルの仕事を請負うことも
・幼少期は、国内でも多少名の知れた音楽一家で育つ。本人は才能に恵まれなかったものの、家族からの愛情たっぷりに育てられたので、コンプレックスもなく家族大好きな優しい子。容貌・性格ともに天使のような愛らしい子だったとか
・特に当時高校生の姉(ピアニスト)には特に懐いていた。
・(仮)死んだ姉の左腕を持ち歩いており(ウェポンケース相当)、戦闘時は自らの左腕の代わりに装着。左手の先に銃を錬成して戦う。
・(仮)戦う時はお姉さんと一緒なのでめっちゃ嬉しい。
エンディング後(悟目線)
結局、晃はあれからしばらくして去っていってしまった。
それまでの10年間、殆ど会話の無い環境で生きてきた彼にとって、僕の生家は賑やかすぎたらしい(誓って言うが、僕自身は極めて抑制的に付き合った……つもりだ)。
彼がいなくなって少し落ち込んだけど10年前とは違う。去り際、彼は書き置きを残してくれた。悪筆で誤字だらけだったから読みづらかったけど、要すれば「死んだりはしないから心配するな」という内容だ。
ーーー晃は、生きている。
この10年間と比べれば、それは実に大きな違いだ。
そして月日は流れ、10年後。僕はウィーンにいた。
ウィーンフィルの本拠地「黄金のホール」で行われるニューイヤーコンサートでの共演依頼を受けたのだ。日本人としては初の快挙だし、若干27歳での共演はウィーンフィルの輝かしい歴史の中でも稀有な例なのだとか。
家族だけでなく日本中が大いにはしゃいでいたが、僕にとってはどうでも良い。世界のどこにいたってやることは同じ。彼への愛を鍵盤に乗せて響かせるだけだ。
ちなみに僕を呼ぶことについて、ウィーンフィルの一部では反対する向きもあったそうだ。曰く「彼の音楽は聴衆を向いていない」「存在しない何かへの愛が深すぎる」等など。さすが本場、よく分かっていらっしゃる。
それでも彼らは僕を好意的に受け入れてくれた。音楽を愛する彼らは、どんな音楽だろうと優れたものはちゃんと評価するのだ。耳の肥えたウイーンっ子に称賛されるのは、僕にとっても悪い気はしない。
そして迎えた1月1日、本番前。舞台にはもうオーケストラのメンバーが待機していた。正にこれから僕が舞台に出ていこうとしたその時。
ホール内が急に薄い闇に覆われた。
あまりにも懐かしい、でも決して忘れることの無いこの感覚。
晃だ、晃のワーディングだ!
気づけば薄暗いステージのど真ん中、ピアノの側に彼は立っていた。
聴衆もオーケストラのメンバーも動きを止めている。満員の「黄金のホール」の中で、僕らは二人だった。
彼は僕を見て少し微笑むと、椅子に腰掛けピアノを弾き始めた。
美しい旋律がホールの空気を震わせる。技術的には改善の余地ありといったところだろうか。でも、そんなことは全く関係ない。晃にしか奏でられない音楽がそこにあった。
ーーーああ、世界よ、聞いてくれ。これが音楽だ。
僕の全細胞が歓喜に震えていた。気がつけば僕はピアノに駆け寄り、彼の隣に座っていた。
彼の左肩と僕の右肩が触れる。彼の温もりが伝わる。温かい。とても温かい。
晃の体型は10年前よりは少しがっしりしたように思えたが、左腕だけは以前と同じように白く細くたおやかだった。かつては拳銃を握って死を撒き散らしていた左手が、今は優しい旋律を奏でている。その視線を気配で感じたのか、晃は演奏を続けながら言った。
「あれからもう銃は握っていない。……本当はお姉様に銃なんて撃たせたくなかった。」
「なら、最初から銃なんて握らなけりゃ良かったんだ。事件の次の日、病院に迎えに行ったのが僕だったら、復讐なんてやらせなかったのに。」
「あの日来たのがお前だったなら、或いはそうなったかもな。でも、俺を迎えに来たのは陰気な眼鏡のおっさんで、それが事実だ。自分勝手な性格なのは自覚してるが過去の事実に口出しするほど傲慢でもないさ」
晃の右手が短調のメロディを奏でる。もの悲しく、それでいて力強い。
「それに、あの時の俺は家族の仇を取るのが正しいことだと思ったんだ。何故だかは分からねぇが、復讐するために俺は『生き残らされた』。そう信じていた」
晃のメロディを、僕は優しいアルペジオで包み込もうとする。
「悲しいな」
「さあね」
僕の抱擁を逃れるように、晃は転調して新しいメロディを展開した。
それきり会話は途切れ、その代わり、僕らは互いの演奏で互いを伝えあった。
無音のホールを晃と僕の音楽が埋めていく。
やがて静かに曲は終わりを迎えた。
拍手は無い。だが、僕はとても満ち足りていた。
「やっぱり晃くんは天使だ。僕の音楽の神(ミューズ)だよ」
僕の称賛に彼は苦笑しつつ答える。
「天使か神かどっちだよ。…まぁ、俺が神だってんならさ、悟は神の右腕になってくれや。」
「なる!なるよ。で、何をすればいい?」
「即答かよ?! いや、そういうヤツだったな、お前。俺とお前……、お姉様の三人の演奏を世に出したい。」
彼の右腕が優しく左腕を撫でる。
「それが俺の家族への何よりの供養だろうし。それに……音楽なら残せるからな」
「ん?」
「常夜のおっさんがいつか目覚めた時に、俺達の音楽を聞かしてやりてぇ訳よ。アンタの育て子はアンタが寝てる間にちゃんと幸せに暮らしましたってな。勝手に拾って勝手に育てた挙げ句に勝手に自分を捨てた出来の悪いオヤジへの俺なりの……」
「……復讐、かい?」
晃が言葉を探して口ごもったから、僕が引き取った。僕も拭波常夜には思うところがある。何しろ彼は僕のミューズを10年間も独り占めしたのだ。
「ん、まあそんなとこだ」
「いいよ。じゃあ、すぐやろう。腕利きのプロデューサーとか心当たりはいっぱいあるよ」
「前のめるなよ、悪いがちょっと待ってくれ。」
「えー」
ぶうたれる僕に晃は言った。
「お前の名前で売れるのは気に食わねぇ。お前に負けないくらいの実力と名声を得てから改めてオファーするさ。だからさ……、それまで待っててくれ」
彼の提案に僕は3秒迷った、フリをした。
「やれやれ。ずいぶんとムシのいい話だ。……不本意だけど待つのには慣れてる。いいよ、待ってるから出来るだけ早く登ってきてよ」
握手を求めて差し出した僕の手を無視して、晃は不敵な笑みを残して暗がりに消えていった。
「素直じゃないんだよなあ。まあ、そういうところも好きなんだけど」
それから更に数年後、晃は約束を守り、僕たちは曲を1つ世に出した。僕たちの発表した曲は爆発的に全世界に広まり、長く人々の記憶に残ることとなった。
僕と違って晃は曲について多くを語らなかったが、1回だけ次のコメントを残した。
天国で眠る家族に感謝を。
そしてもう一人の父へ
ーーー「ざまぁみろ」
家族惨殺前のSS
大人たちは言った。
「クリスマスにはサンタさんがプレゼントをくれるんだよ。良い子にしてればね。」
確かに毎年クリスマスの朝にはプレゼントが届いた。読みたかった絵本、欲しかったおもちゃ、カッコいい服…。
彼が6才だった時のクリスマスにサンタさんがくれたのはおもちゃのカメラだった。おもちゃながらもちゃんと写真も撮れる優れもの。早速手にとって部屋のあちこちをカメラに収めたりもした。でも、彼が一番撮りたい被写体、家族がそばにいないことに気付き、彼は少し泣いた。
父も母も、高校生の姉も、皆それぞれに著名な音楽家として活躍していたから、例年、クリスマスの時期はコンサートやテレビ出演などで忙しくて家にいることは無かったのだ。
この時期、彼は親戚に預けられ、独りでクリスマスを過ごすのが常だった。
だから、彼は祈った。
「サンタさん、来年はプレゼントはいりません。その代わりお父さま、お母さま、お姉さまと一緒にクリスマスを過ごしたいです。いっぱいいっぱい良い子にします。だからどうかお願いします」
それから1年、ピーマンも人参も頑張って食べたし、勉強もちゃんと頑張ったし、友達とケンカした後は自分から謝った。家族が遠征に出掛ける時は、寂しさを我慢して笑顔で送り出した。
彼のけなげな姿にほだされた家族は、次の年のクリスマスに仕事をいれないことを決めた。スケジュール調整は難航を極めたものの、彼らは何とかクリスマスの休日をもぎ取った。彼らがこの上なく愛する末弟の願いは叶ったのだ。
クリスマスイブに彼は幸せな気持ちでベッドに入った。
明日はこれまでで一番素敵な日になるに違いない。そう信じて。
それが最初で最後の、家族で過ごすクリスマスになることを、彼はまだ知らなかったーーー
休暇もらう前のSS
暗闇の中で少年が佇んでいた。
光も音もなく、闇と静寂が支配する空間に、彼は静かに身を潜ませていた。
と、たゆたう静寂を突如銃声が切り裂く。少年が左手に握った銃から弾丸を放ったのだ。
マズルフラッシュが少年の姿を暗闇に浮かび上がらせた。
妙に高い身長の割りに異様なまでに細い体つき。肌は青白くいかにも不健康な印象だが、細いながらもしっかりと筋肉がその身を包んでおり、戦士の風格を漂わせてもいる。ただ左腕だけはまるで深窓の令嬢のように、白く柔らかげだった。
一言で言えば、異形。
異形の少年は闇の中で銃を撃ち続けた。右、左、前、後…、無駄の無い動きで体勢を変えながら動くその姿を、断続的なマズルフラッシュがコマ送りのように照らす。
程なくして少年は銃撃を止め、断続的な銃声とマズルフラッシュは、始まった時と同じような唐突さで途切れた。
しばらくして人工的な光が空間を満たす。そこは体育館ほどのだだっ広いトレーニングルームだった。部屋のところどころにCDほどの大きさの円盤がぶら下がっている。円盤は全て、少年が放った弾丸により中心を撃ち抜かれていた。
己の戦果を確認し満足の吐息を漏らすと、少年は懐からたばこを取り出した。
「エーレガントゥー!流石ね、晃チャン。全弾、命中よぉん、しかもど真ん中。きゃー、SU☆TE☆KI♪」
咥えた煙草に火を着けようとしたところで、少年の耳に取り付けたインカムからやけに陽気で野太い男の声が流れた。
「るっせぇな、いきなりがなるんじゃねー。テメーの声は耳に障るんだよ、殺すぞ」
この柄の悪い少年の名は音桐晃、FHチルドレンである。少年がインカム越しに話している男は三毛蘭次郎、同じくFHに所属する手配師で、何くれとなく晃の面倒を見ている変わり者だった。
「あっらぁ、トンがっちゃってぇ。カルシウム足りて無いんじゃないの?いつでもアタシ特製の手料理、振る舞ってあげるわよん」
晃の悪態にもさして動じることなく三毛は軽口を返す。
「いらねーよ。それより的当てなんざ訓練になんねぇんだよ。生身の対戦相手とか用意できないのかよ」
「ダメよ。だってアナタ、相手を殺すまでやるでしょ?それにアナタに万一のことがあったら常夜クンに怒られちゃう」
「たりめーだろ、死ぬ気でやんないで訓練になるかよ。ってか、常夜のおっさんの名前がなんで出てくるんだよ。」
「親の心子知らずってとこかしらね。彼、アレでアナタのこと大事にしてるのよ?」
「大事に、ねぇ」
咥えた煙草に火をつけながら、少年は顔をしかめる。彼がおっさんと呼んだ拭波常夜は、10年前に家族を失った晃を拾い育てた、いわば育ての親とも呼ぶべき存在であり、また常夜と晃の二人で構成されるセル「ネバーエンドロール」の上司でもあった。
だが、常夜に親らしいことをしてもらった記憶はない。食事だって基本はカロリーメイトとサプリだ。何故か気にかけてくれる三毛が面倒を見てくれなければ、晃はとっくに野垂れ死んでいただろう。また上司と言いながらも、彼から仕事の内容を教えてもらった記憶は、ついぞ無い。
そんな常夜に自分が大事にされているのだと聞かされても、晃は素直に頷く気にはなれなかった。
「まぁ、感謝はしてるけどさ。」
生活上の面倒は一切見てくれない常夜だったが、唯一、戦闘技術だけは叩き込んでくれた。家族を奪った人物への復讐を生き甲斐とする晃が、何より欲しいものは力だったから、それを伸ばしてくれたことについては、晃なりに感謝の気持ちを抱いているのだ。
「まあ殊勝だこと。本人にも直接入ってあげれば良いのに…ってあら?噂をすれば何とやら、ね。常夜クンから連絡よ。晃チャンに話したいことがあるからさっさと帰ってこいって」
「チャン付け止めろっての。マジ殺す。…んじゃ上がるわ。」
「まっすぐ帰るのよー。寄り道しちゃダメよー」
「てめーは俺の母親かっつーの。ったく、うぜーな」
晃は吸い残しの煙草を腰の携帯灰皿に押し込むと、おもむろに左腕を外した。
義手、ではない。死んだ姉の遺体の一部である。姉が死んで10年が経つが、その左腕は不思議なことに生前の美しさを保っていた。
10年前の事件で左腕を失った晃は、モルフェウスシンドローム罹患者の力で、姉の左腕を接合し、その指先に銃を錬成することで戦う。常夜の指導のお陰で、今では自分の体の一部のように、或いはそれ以上に扱うことができるようになっていた。
晃は外した姉の腕を丁寧に布にくるみ、専用のケースに収納する。そして、そっとケースに額を押し当てた。
「待ってて、お姉さま。もうすぐ…もうすぐだから…」
切なく祈るような少年の独白は、インカム越しに三毛の耳に届いた。茶化してやろうかとも思ったが、「お姉さま」への言及が地雷であることは長年の付き合いで理解している。
三毛は静かにマイクをオフにして呟いた。
「晃チャンてば、かーわいー。」
そのままモニターの向こうで帰り支度を始める晃を眺めながら、独白を続ける。
「ネバーエンドロール、とある幕切れ…。そう、幕切れの時は近づいているわ。その後に残る何か、或いは残らない何か。ワタシはそれが見たいの。
願わくばアナタが残る側でいられますように。それがアナタにとってのハッピーエンドになるかはわからないケド。」
その言葉は誰にも届くことなく、暗がりに消えていった。
セッション履歴
No. | 日付 | タイトル | 経験点 | GM | 参加者 |
---|---|---|---|---|---|
フルスクラッチ作成 | 0 | ||||
24 | |||||
初期経験点 |