どこにでもいる普通の少女。
　人並に明るくて、少し間が抜けていて、裏では努力をしている当たり前の人間。
　日常生活を過ごしていたが、一人の少年に恋をした事から運命が変わった。

　元々はレネゲイトの力を利用した一族の子供として誕生。
　歳を経ても、レネゲイト能力を覚醒しない事から失望されて勘当。
　追放された後は、一族を支援する「守代家」の一員、「守代 穹」として生きる事になった。

　一族を支援しつつ、普通の日常を過ごす日々。
　表向きはいつも通りに振る舞っていたが、今までの自分の全てを否定された事から気持ちは沈んでいた。
　自分の努力を認められず、名前を奪われ、人生を否定された。
　「自分は要らない人間」なんだ。　そう思う程に彼女の心に深い傷が生まれたのであった。

　そんな暗い日々を過ごす中、守代家に度々訪れる、一人の少年と出会う。
　歳が近い事や、自分が応対する人物だった事から自然と彼との交流は深くなっていき、
　いつしか他愛のない話から互いに外出をする関係へと変わっていき、恋心を持つようになった。
　それは彼の方も同じであり、気持ちはバレバレなのに遠慮する姿を思わず、頬が緩んだ。
　―――自分は生きててもいいんだ。　そう思える程に、彼との時間は幸せだった。

　そんな幸せな時間が壊れる時が訪れる。
　守代家に傷ついたバケモノが現れ、いきなり穹を誘拐したのだ。
　突然の出来事。　自分の死をどうしようもない状況だと思いながらも「生きたい」と思った時、
　バケモノが口を開き、信じられない真実を突きつけられてしまう。

　目の前のバケモノ…ジャームが「彼」であった事。
　敵と戦い続けたせいで能力が暴走し、仲間から処理されそうになっていた事。
　死にたくなくて逃げた事、最後に穹と会いたかった事、「好きだった」と思いを伝えた事。
　そして―――、もう一緒にいられない事を。

　余りの出来事のショックか、あるいは彼のワーディングの影響か。
　穹自身も姿を変異し、オーヴァードの力が目醒める。
　目の前の彼を離れたくない、こんな世界は許せない、――レネゲイドなんて消えてしまえばいい。
　消えていく彼。　穹は本当のバケモノになる前に力を行使し、彼を、自分を、消し去った。
　こうして対抗種の力が生まれ、「守代 穹」という少女は完全に消えたのであった。

　現在の彼女は、「守代 穹」の記憶とオーヴァードの力を持った抜け殻。
　彼女が暗殺者としてオーヴァード殺しをする理由は「穹の願いを守る事」であり、
　二人の最期が美しかった事から「死」を美徳に感じている不安定な面をもつ。
　幸いにも、守代家の人々との記憶のお陰で命の大事さを理解している為に普段は大人しくしている。

　肉体は変異はしたが、UGNの記録・検査の結果から彼女は「守代 穹」なのは間違いない。
　現在の人格に関しては、レネゲイトウィルスの手によって生まれた新たな人格か。
　それとも、自分の心を守るために妄想で作られた新たな人格か、正体はわからない。
　ただ、言える事は……「守代 穹」は死んだ事。　彼と同じ世界にいる事。
　そして、全てのオーヴァードを消す事が…――“死の熾天使”の使命なのだから。