UGN系列の研究所で『オリジナル』のコピー作品として誕生したクローン人間。研究者たちは『オリジナル』の完全再現に執着しており、彼以外にも大量のクローン(兄弟姉妹たち)を生み出した。彼は第1ロット1番目――――すなわち初代の作品の初作である。
第1ロットのクローンは『オリジナル』の声に呼びかけられて自我を発露しており、おそらく全員が『オリジナル』によって覚醒させられている。
ロット数が進むにつれ『オリジナル』の提供したレネゲイド遺伝子が劣化したのか、思うように研究が進まず“失敗”と称して廃棄処分になる兄弟姉妹たちが増えていく。それに耐えきれなかった第1ロットたちを中心に反乱が勃発。クローン側、研究所側双方に多大な犠牲を払いながらもクローン側の辛勝、研究所からの脱走に成功。
研究は第11ロット製造を以て中断・凍結となる。

脱走後もUGNに追われ続け、あえなく拘束。処分の前に穏健派テレーゼ・ブルムの介入によりUGNでの奉仕(監視)を条件に生存権を得ることとなる。
当時生き残ったクローンたちは第1ロットが2体、第2ロットが1体、第4ロットが2体、第7ロットが1体、第10ロットが1体、第11ロットが1体と、約100体のうちわずか8体であった。
「生を謳歌することなく消えていった兄弟姉妹たちの分まで生きる」ことを約束して各々人生を過ごしている。

以上から根本的にテレーゼ・ブルム以外のUGNの人間や研究者を信用していない。
それは遊木支部のメンバーも同じことで、自身の日常に踏み込ませないように“穏健”という猫を被っている。仕事に関しては何年も一緒にしていることもあり、流石に信頼はある。積極的に悪感情を持っているというよりはいつ処分されるか分からないという恐れからくるもので、情は移っている。

『オリジナル』に関しては男であるという一点以外その一切が不明。
どうして自分たちのようなものを作ろうとしたのか、あるいは協力したのか興味はあるが、プロジェクトが凍結してしまったことに加え反乱によって失われた資料も多いため『オリジナル』に辿り着くことがほぼ不可能になっている。
自分たちを起こした“声”と、身の内にあるおぼろげな記憶が唯一の手がかりである。