はじまり

キルヴァリウス地方。
ここは伯爵家であったキルヴァリウス家が代々治めてきた土地。
キルヴァリウス家は、現代でも土地の大半の所有権を失ったとはいえ、広大な土地を持ち様々な事業で莫大な利益を上げる資産家でした。
そんな名家に後継の男子が誕生しました。
彼の名前はニール。
翡翠色の瞳の美しい子でした。

時を同じくして隣町には美しい女の子が誕生しました。
名前はナスターシャ・ルツ・ハミルディア。
過去にはこの町を治めていたハミルディア男爵家の末裔です。
キルヴァリウス家とハミルディア家は家格は違えど代々関わりがあり、現代でも元貴族の家柄ということもあり深い付き合いがありました。

ニールとナスターシャは幼い頃から互いの屋敷で顔を合わせ、仲を深めて育ちました。
ニールは幸せでした。
様々な教育を受けました。
中でも父親は、ニールにアチェリーを熱心に自ら時間の許す限り教えました。
何不自由することはなく、優しい両親の愛情を与えられ、時たま可愛らしい幼馴染と遊ぶ。
成長するにつれ、ニールは自分が恵まれている事にも気づき始めました。
ぼんやりとこの幸せを次の世代に繋げる事が自分に求められている役割なのだと理解していきました。

ある日、キルヴァリウス家へとやって来たナスターシャと庭遊びから戻った際に、自分達の事を話し合う両親達の会話を耳にしました。
それは2人が１６歳になったら結婚をさせるという約束のようでした。
隣で照れたように微笑む可愛らしいナスターシャを見てニールは嬉しく思いました。
将来はナスターシャと一緒により良い家も未来へ繋げよう。
俊足で活発に成長した少年ニールはそんな事を思うのでした。

しかし、そんな日常は突然崩れ落ちました。
ニールの10歳の誕生日。
祝宴の催されていた屋敷は暴徒に襲われ燃え上がり、両親を失いました。
ニール自身も救助されたものの半身不随となり、自身の足で歩く事が出来なくなりました。

屋敷には、通常では起こり得ないような不可解な痕跡が残されていました。
この惨劇は犯人達もわからぬまま世間の話題から消えていきました。

ニールは後見として名乗りを上げたハミルディア家で引き取られる事となりました。
財産はニールが引き継ぎ、成人するまでの間の管理はナスターシャの父親がする事となりました。
ナスターシャはニールを甲斐甲斐しく世話をし、学校でも車椅子を押して回り四六時中一緒に過ごすようになりました。
ニールはナスターシャに感謝しました。
今後の人生はナスターシャの為に捧げよう。
そう誓いました。

自由に動けなくなったニールは将来の為に勉強熱心になりました。
家の事業の事、歴史、世界情勢。
将来に役立ちそうな事の知識を集めるようになりました。
キルヴァリス家の燃え残った書物も回収してもらい読み漁りました。
すると、キルヴァリウス家は裏でUGNという組織と深く結び付きがあったことを知りました。
ナスターシャに頼みキルヴァリウス家の跡地を訪れた2人は、地下室に隠されていた弓を回収しました。
それはキルヴァリウス家が管理していた遺産でした。

15歳になった頃からナスターシャは病気がちになり寝込む日が多くなっていきました。
ある日ニールは、ナスターシャの診察を終えた医師達が集まる部屋に聞き耳を立てました。
病の原因はわからず、このまま緩やかに衰弱していくのではないか、成人は迎えられないかもしれない。
そんな話を聞いたニールは焦りました。
必死にナスターシャを救う方法を探しました。
キルヴァリウス家のコネを使い、UGNや様々な組織とも接触を図り、寝る間も惜しみ、ナスターシャを助ける方法を探しました。
そして、一つの可能性を見つけ出したニールは弓を片手にハミルディア家を飛び出しました。

邪魔する者は全て射抜来ました。
全力で走りました。
気づくとニールは自分の足で走っていました。
しかし、ニールにとってそんな事はどうでも良い事でした。
ナスターシャの残された時間に間に合わせなければならないのです。

”奇跡の果実”と”命の水”を持ち帰ったニールを見たナスターシャの父親は、一瞬驚愕した後、笑顔で迎え入れました。
そんな後見人を無視したニールは、痩せこけて意識の無いナスターシャに”奇跡の果実”を食べさせ”命の水”を飲ませました。
ナスターシャは一晩中苦しみましたが、翌朝には意識を取り戻し走れるまでになりました。

医師や屋敷の人間達は奇跡だと喜びました。
その後16歳を迎えた2人は正式に結婚をしました。
ニールは幸せでした。
これからナスターシャと共に未来を歩めるのですから。

その一週間後、ナスターシャの父親が突然の病で急死しました。
葬儀を済ませ、相続などの手続きを完了させると2人は日本へと渡りました。

テレーズ・ブルムの紹介でUGN日本支部の管轄で保護と教育を受けました。
日本で新たな生活を始めた2人の足取りは、どんな困難にも負けない力強いものでした。

おしまい

ニールの父親はUGNエージェントであり、遺産である必中の弓の管理者。
キルヴァリウス家の財産を狙った、ナスータシャの父親がFHと手を組みキルヴァリウス家を襲撃させる。
しかし、地下に隠された遺産である必中の弓を確保出来なかった。
ナスターシャとニールの結婚後に2人とも殺害し全ての財産を手中に納める為に、2人の食事に微量の毒を盛り続けていた。
しかし、既にレネゲイドウィルスに感染していたニールには効果がでていなかった。
父親とUGNの繋がりを辿りテレーズ・ブルムと接触し対話をする。
そこで得た情報から、ニールは単独でFHの拠点へと乗り込みパナケイアの果実とαトランスを奪取した。
その際にオーヴァードとしての能力を覚醒し２つのFHの計画を潰している。
ナスターシャとの結婚後、直接的な手段に出てきたナスターシャの父親を返り討ちにしている。
様々な事象から妻を守る為に、テレーズ・ブルムを頼り日本へと渡った。