今日は雷神の戦鎚の遺産継承者のカウンセリング当日だ｡少しだけ無理を言って部屋に入らせてもらった｡
彼女を被験体Aとしよう｡
『＿あなた達が､今回のカウンセラーと同行者ですか？よろしくお願いします』お辞儀をしてから椅子に座る
「こちらこそ､今回の件のためにご協力頂きありがとうございます｡意外に礼儀正しいのですね？」これはRBに対する無理解だった
『一応社会人ですし､一通りのマナーは憶えています｡それで今回は＿”ロキ”についてですか？』存外鋭い
「…！”そちらも”｡ですが今回は他のことです｡ええっと確か…」複数の報告書をめくりながら確認している
「現在確認されている”神性残滓”は北欧神話のものだけで”トール”､”フレイヤ”､”ヘイムダル”､”ロキ”の4つ」報告書記述
「フレイヤは消息不明､ヘイムダルとロキは同一の肉体に在る､それでトールはあなたに宿っている…ですよね？被験体A」確認のため
『概ねそれで問題ありません｡本神は現世への干渉を極力減らそうとしているため表には出てこないことを御承知ください』非常に残念だが､無理に要求を通そうとして雷に撃たれるのはごめんだ
「了解です」この後様々なことがあったが､面倒なので中略とする｡カウンセラーは途中でタバコを吸いに行った｡
〜省略〜
『本日は､これで終わりですかね｡例の書は持ってきているでしょうか？』被験体Aには負担をかけている､まあしょうがない
「＿こちらに｡中身はまだ未開封です」何せ見つかれば確実に処罰を受けるだろう内容だ､ここでなければ見られない
『はい｡……………やはり､ですか｡灰槻の分家筋の､駆け落ちした子供の子孫｡北欧出身(ルーツ)の彼らでなければあの遺産は持ち出せない』結果に納得したようだ｡わざわざ特調に部下を潜入させた甲斐はあった
「それでは､この書は焼却処分ということで｡外部に漏れると善くない」そう言って､私は予備のライターを点け紙束を燃やした
『ありがとう､ございました』そう被験体Aは言う｡やめろ､私が為した悪を背負おうとするな
「いえ､礼には及ばず｡では本日のカウンセリングは終了とします｡お疲れ様でした」
『はい､お疲れ様でした』そう言って被験体Aは出ていく｡それにしたって哀れなものだ､”ロキ”に執着された”ヘイムダル”が｡