容姿・経歴・その他メモ

扇寺村の名家である忌部家は代々法術と祈祷を用いて国を護る一族であり、
彼もその次代を担うものとして教育を受けてきた。
が、全くもって才能も無い上に、家の理念に全く興味を抱けず、
その結果自分よりもそういった才に優れていた弟を家族総出で溺愛し始めたのもあり、中学卒業後に家を出奔。
「忌野　宴生」を名乗る小説家となり、忌部の使命を捨て去った。

飄々と、どこか人を喰ったような態度を取りつつも、他者の悩みにできる限り寄り添おうとする男。
「小説のネタになると思ったから手伝っただけだよ」みたいなことを口癖のように言いまくる。

履歴

――彼は忌部家の出来損ない、円世の「弟」である。



本名は忌部　回生（かいせい）。
兄がオーヴァードとしての兆候を一切見せず、また家の理念に反する態度を取り続けていたことから、必然的に他の家族から溺愛されており、
彼もその愛に報いるために、「人（モノ）を忌み、オーヴァードが護られる世を作る」という家訓を忠実に守り、幼少期より「化生の祟り」に偽装して家に仇なす人々を始末してきた。
歴史を駆使した戦闘技術は幼少期の頃から卓越しており、15の頃には家内の誰よりも強い力の執行者と成った。
……力を得てから、家中の人々のそれがただの期待や奉公に対する愛情から、己を制御する為のものへと転じ始めていることにも薄々気づいていた。



そんな薄ら寒い愛を向けてくる家族たちが命ずるままに使命を遂行する日々の中、
自堕落な人に見えて、村にいた頃も、村を出てからもどことなく自分を慮ってくれた兄と、兄の幼馴染たちが与えてくれる本当の温もりに少しずつ絆され始めていた。

「自分が本当に護りたいのはあんな家や見知らぬオーヴァードではなく、こんな温かさなのではないだろうか？」

そんな折、回生にとある命が下される。
それは、小説という媒体を通し、家、ひいてはオーヴァードを中傷する兄、円世の抹殺命令だ。
「身内だからこそ見逃してやっていたが、モノの分際で家に逆らうのであれば殺してしまえ」というのが家の方針であった。
それですら彼には堪えられないものであったが、「恐怖を味合わせるためにアレに関わる全てを殺し、絶望させてから殺せ」という嗜虐のみを考えた指令を聞いた瞬間、湧き上がる怒りのままに能力を行使し、忌部家の人々の鏖殺を決行。

全てを殺し尽くしても尚衝動が抑えられず、「どうせ後には戻れない。今更人（モノ）を人（ヒト）とも思えない。ならばこのまま村を、ひいては世界の全てを殺す鬼にでもなってやろう」と思い立った頃、どこからか音が聞こえてきた。
音の根を断とうと虫を払うかのようにそれを握り潰した時、気づいてしまった。

それは、村にいないはずの兄・円世だった。

兄は今にも消え入りそうな声で、「まさかと思って駆け付けた」、「まだやり直せる」、そういったことを、言っていた、気がした。
――兄の亡骸を抱きしめながら蹲る回生を見つけたのは、円世の知人である葛城陸奥であった。


意識が戻った後、UGN箱根支部にて拘束され、諸々の尋問を受けながら数日を過ごした後、陸奥から兄の遺言状を託される。
遺言状には「これを読んでいるということは家が原因で僕に何かがあった時だろう」、「どのような結果であれ、僕が死んだことであれこれ悔やまなくてもいい」、「回生が望むなら、君がUGNエージェントとして働けるように便宜を図れるはずだ。元の生活に戻れないのは、まあ、呪いみたいなものだと思ってくれ」、「一つ頼まれてくれるなら、今書いてるシリーズだけでも完結させてほしい。君はそういうの、できるんだろ？」といったことが書かれていた。


回生は、UGNエージェントとして人（ヒト）を守る道、そして兄の未練を晴らす道を選んだ。
公的には忌部の兄弟は死亡したものとして取り扱われているが、幸い兄が自分のことを一切書籍に残していなかったため、「忌野　宴生」の名を継ぐことにはそこまでの障害はなかった。
（やたら人にメシをたかっていたせいで兄の顔が無駄に広いことへの対処の方がよっぽど面倒だった）
以来、宴生はオーヴァードとしての能力に頼りながらも執筆作業を進めながら、消えないとわかりながらも、ほんの僅かでも罪を贖うために戦っている。


――人の営みが野となるのを忌み、皆が宴のように生きられることを祈りながら。


amazarashi 火種
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