物心つく前に育児放棄により施設で保護され、義理の両親に引き取られた。
今度は捨てられないように、と家事や勉強などに打ち込み理想の息子を演じ有名な高校へ進学。
…までは良かったのだが、周りは軒並みハイレベル、かつそれに追いつき追い越し続けなければいけない、というプレッシャーについに精神的な限界を迎え不登校に。そのまま高校を中退した後は筋金入りの引きこもりになる。

このままではいけない、という焦燥はあったが、それに反して体は動かない。
今までやっていた勉強にも家事にも手を付けることができず、ただ自堕落にネットやゲームに浸り続ける。
彼がそんな状態になるまで知らず知らずにプレッシャーを与えていたという罪悪感から、義理の両親も何も言えずにいた。

そのような日々を成人するまで過ごしていたが、ある日、将来を憂いた義理の両親がニートの矯正施設へ彼を送ることを決意。
彼自身にも変わらなければいけないという意思はあったため、それを承諾。
ほんの少しの荷物を持って家を出る。

しかしその矯正施設こそが、彼がオーヴァードとして覚醒するに至った場所であった。
ニートの矯正施設と称して社会で不要とされている人間を集め、実験の素体として利用する――FHの実験施設。
人為的にオーヴァードとして覚醒させる実験体に選ばれ、オーヴァードとして覚醒した後はその能力を引き出す実験の素体となり、一人、また一人と施設で知り合った人間が死んでいく中、実験体番号00137――のちの波々伯部誘は生き延びていた。

そんな地獄の中から藤崎弦一の手によって救い出され、UGNのエージェントとして働き始め今に至る。

救出された後に一度両親に顔を見せに行ったが、両親には「彼は立派な社会人として独立し、今は一人で生きている」と伝えられており、その人物像とはかけ離れた姿で現れたことに対する驚愕と絶望、そして自分たちが(知らなかったとはいえ)義理の息子を非人道的な施設に送り込んでしまったことへの罪悪感から関係が緩やかに崩壊。
一度の面会ですべてを悟り、もう彼らと家族でいることはできない、と過去と決別。
以降、名を改め「波々伯部誘」として生きていくことを決意した。

ちなみに誘自身は別に両親に対して怒りなどはなく、むしろ申し訳ないと思っている。