本名：早坂 聡(はやさか さとる)
シンドローム：ハヌマーン
ストライクハウンド所属エージェント

町本和歌と婚姻関係を結んでいる男性
諸事情があり夫婦別姓で過ごしている

───随分、昔の話だ。

私には姉がいた、ひと回りほど離れた姉が。
弱い人だった。体も、心も。


私が6歳の頃、姉は自らの命を絶った。
どうしてそんなことをしたのか、当時の私は何ひとつとして理解などできなくて、白い布を顔に被せられて横たわる体を見つめるしかなかった。
母は、ただため息を吐いただけだった。



後から知ったのは、姉も私と同じくオーヴァードであったこと。
命を絶つ数ヶ月前まではラボに被験者として協力していたこと。
……レネゲイドの活性化を抑える力が、著しく低下していたこと。

理性を無くしたくなかったこと。

誰も傷つけたくなかったこと。


その末に選んだ、自殺だったこと。


なのに、なのにどうして
彼女は私の目の前で笑っているのだろうか。
あの頃の姿で、あの頃の顔で、声で
私を見ている。

生きていないはずの人間が、そこにいる。


「クラスメイトだった人がね、ラボの研究員になってたの」
「相変わらず私の体は弱いけど、今はその人が私のことを管理してくれていて」
「ずっと会いたかったんだよ？私が死んだとき、まだ小さかったから」
「ねえ、ねえ」

「今度こそ、人間になれるかな」



生きていては、いけない。
死者は生きていてはいけない。


私は、姉を『死者にしなければいけない』




───ああほら、また君の体が崩れていく。