兄の友人たちと活動を共にしているバンド。GtVoのポジションは本来兄が務めており、梨伊奈が参加するまではメンバー内で掛け持ちするなど空席が続いていた。
主にストリートライブがメイン。時々ライブハウスを借りて演奏することもある。認知度はまだまだ。少しでも多くの人に知ってもらう……為ではなく、ただただ自分が気持ちよくなる為に声を出し、ギターをかき鳴らしている。技術はそれなり。
首から下げているギターピックも、現在愛用しているギターも、ヘッドホンも、全て兄の遺品。

12歳の頃、些細な口論から兄と取っ組み合いの大喧嘩に発展した。当時から気の強かった梨伊奈は自分より背も高く力も強い兄相手にひるまず、全力で殴りかかっていた。ただの喧嘩であれば、よかったのだが。
場所が悪かった。
交通量の多い道路脇の歩道。思い切り突き飛ばしたのと10tの大型トラックが通過したのはほぼ同時だった。

目の前で兄は赤い塊となり即死。
梨伊奈を半ば邪見に扱い、兄を可愛がっていた父親は兄の葬儀が終わってからさらに態度が悪化した。
暴力を始めとする虐待が頻繁に行われるようになるが、罪悪感と気の強さがぶつかり合って半狂乱に陥っていた彼女は父に対しても同じく全力で殴り返す、そんな事が日常茶飯事となった。
取り返しのつかない事態になる前に兄の友人たちに助け出され事なきを得た。
心の傷として深く刻まれている事であり、防衛本能が働きその間の記憶は心の奥底に封じられているため、本人に聞いても覚えていない。