ハツカこと実験体Ba-164。その体内には、様々なシンドロームが混ぜ合わされた細胞からなる、レネゲイド増幅器官が移植されている。
　この細胞は宿主の細胞を模倣し、己の細胞に置換し、宿主を単純思考の「｜泥人形《スワンプマン》」へと変える性質があった。
　それらの通信塔として選ばれた彼女も当然、「泥人形」と化してもおかしくなかったが、彼女のバロール性が持つ、時間遡行じみた復元能は逆にその器官を掌握し、拡張装置として支配下に置く。

　それに刻まれていたのは、レネゲイドだけではなかった。
　素材として犠牲となった200人近くの実験体たちの人生──数多の子供たちの幸福、憤怒、悲哀、苦痛……そして、生命の終焉の記憶が保存され、彼女はその全てを追体験した。
（そのため、精神に若干の解離が生じてしまった。過去の自分を自分と同一視できなかったり、己のレネゲイドに人格が宿っているような振る舞いをしたりするのは、これが原因である。）

　以降、彼女の魔眼は、視界内に収めた空間に、記憶にある事象を再現するように、物理法則を介して干渉することが可能になった。
　力場を動かし、熱量を操作し、ベクトルすら捻じ曲げ、物事を書き換える。
　そうして"映写"される事象は──セルが崩壊しているので無いことだとは思うが──「泥人形」が生まれる度に彼女に同期され、増加していく。

　実験体生活の中で、サクラという少女と仲良くなり、共に支え合って過ごした。
　しかし彼女もまた、「泥人形」へと変えられてしまった。その記憶はそのまま、ハツカの脳に同期されることとなる。
　彼女はずっと、家族の元に戻りたいと言っていた。だから、セルから解放されたハツカは、彼女の記憶を連れて彼女の故郷へ帰ることで、その望みを果たし、彼女の弔いとすることにした。
　UGNに保護された後、その夢はあっさりと叶うことになる。

　しかし──ハツカはそこで、未だサクラの無事を信じ、帰りを待つ家族の姿を見た。
　考えてみれば当たり前の話。記憶だけ連れて来ても、家族にとってそれは彼女が帰ってきたことにはならないのだ。
　それがどうにも悲しかった。
　だから、家族の元に、本当の意味であの子を帰してあげたい。
　そのための方法を、ハツカは探している。

ジャーム治療法の研究を行うFHセル「OWLS」。
そこでは日夜、ジャーム治療の旗の下で、非人道的な研究が行われていた。
ジキル・ヴィクターの指揮において、おびただしい数の「研究成果」を得たセルは、僅か二年の時間でその名声を高めつつあった。
しかし、その隆盛にもほころびが見え始める。
始まりは、一人の助手の猜疑心。
希望を語る欺瞞の中で、真の光を追い求める者。
人々を渦巻く狂気は研究者の欲望に染まり、混沌が未来を支配する──。

ダブルクロス The 3rd Edition
「Victor`s Orphan」
ダブルクロス――それは裏切りを意味する言葉

PC1：実験体（年齢想定：最大で15歳程度を想定）

シナリオロイス

ジキル・ヴィクター　任意/恐怖

　君は研究施設「OWLS」にて実験対象として暮らしているオーヴァードだ。
　二年前、いつもの日常を過ごしていた君は、街を歩いていた際に意識を失った。
　気がつけば、消毒液の匂いが充満する白い部屋に監禁され、以来、いつ終わるかもわからない責め苦に晒されている。
　エフェクト──”彼ら”がそう呼ぶ超常の異能を持ってしても、この監獄を抜け出すことはできない。
　生きたまま臓腑を分かたれ、切り刻まれる感覚は、幻肢痛となって君の腹を疼かせるのだ。
　だが……一縷の望みが、君のこの暗黒に差し込んだ。
　これは、君が未来を取り戻す物語だ。

シナリオの展開と結末を受けてリビルド

Dロイス変更

｜超血統《フルブラッド》→｜申し子《セレクティッド》

ワークス変更

FHチルドレンA→高校生

技能成長

ワークス変更に伴う再割り当て：〈白兵〉2→0〈知覚〉1〈情報：噂話〉1

エフェクト成長

《リミットブレイク》2《落星衝》6《崩壊のスフィア》3
《C：バロール》2→3《黒星の門》2→4
《覇王幻魔眼》9→0《黒の鉄槌》4→0《因果歪曲》1→0

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