シカゴにあるFHの研究所で製造された《アリステッド》の1体にして最終型番「AL/Ⅴ《アリステッド/ファイヴ》」。
　5人姉妹の末妹である。

　《原初の果実の欠片》の所持者の複製体としては、全員が失敗作の烙印を押された。
　全員何かしらの特性を受け継いでいたが、《原初の果実の欠片》自体の複製や強力な出力は持たなかった。
　けれど、受け継いだ特性は有用だったことから即座に処分はされず、待遇はよくないものの姉妹たちは少女と言える年齢まで成長する。

　AL/Ⅴが14歳になったとき、それは突如行われた。
　「最終性能評価試験」。
　姉妹たちの中で性能が最も高いものを測定し、他の姉妹をすべてそれに統合することを目的とする最後の実験。
　AL/Ⅱはその心優しきがゆえに最初に無抵抗を表明し、AL/Ⅰに殺害された。
　AL/Ⅲは少なからず消耗したAL/Ⅰを襲撃し、交戦の末死亡した。
　AL/ⅣはAL/Ⅴに共闘を持ち掛けた。そして、先に殺害された。
　残ったAL/Ⅴは、自分が長女たるAL/Ⅰに敵わないのはとうの昔に理解していた。なぜなら、彼女が最もオリジナルの出力に近かったから。
　けれど、自分が殺されないとこの試験は終わらない。
　死を受け入れ、捨て身の一撃でAL/Ⅰにナイフを突き出す。
　そして、その時。
　自分の知らない姉妹たちの約束を知ったのだった。　

　姉妹たちの特殊臓器はAL/Ⅴへと統合され、少女はAL/Ⅴ.Edへと完成した。
　そして、託された力を以て少女は鳥籠を破り、外の世界へと歩み出した。
　生存を諦めることが許されず、共に歩んだ者たちは身体の一部となり。
　昏い絶望を抱えた少女が行き着いた先は、絶望を集約し楽園への昇華を嘯く“巡礼者”だった。

　昏き掃溜めで傷を舐め合うのは、咎に染みるぬるま湯のようで、自罰を求める身には心地が良かった。
　けれど、心のどこかで違うと。望まれた生き方ではないと分かっていた。
　だからこそ、FHへの潜入という名目でかつて抜け出した場所へと戻ってきた。
　もう2度と、出ることは叶わないとしても。

　少女の特性から、セントラルドグマの“送迎者”として使われることは予想していた。
　けれど、それでは一生這い上がれないままだ。
　少女は実績を積み、高みを目指している。そうすれば、きっと姉妹たちの価値も証明できるはずだと。
　
　そして再三にわたる異動申請は半ば諦めたように受理され、これより騒乱が巻き起こる場所への配属が決まったのだった。