物心ついた時からずっとこの身体にあった能力を使い、食べ物を模した模型を作っているところ。
なんのご飯だったのかは忘れたが、給食しかしらなかったころのはずだ。

中学校の卒業式。
随分と身なりのいい男女が話しかけて来る様子。その後ろには、お嬢様と噂されていた同級生の姿。
そして高校卒業のとき。
頬を赤らめるお嬢様の薬指に指輪を嵌めてやった。
そして大学卒業のとき。
ウエディングドレスのお嬢様とタキシードの自分。
そしてダイニングテーブル。
自分の名前とお嬢様の名前。印鑑が押された離婚届。
義両親が泣いて謝り娘の頭を押さえつけているところ。

財閥の娘だった妻と別れてからは、慰謝料で暮らせるために適当に日々を過ごしている。
その中で見つけたライター業が、「己の記録を残して何になるんだ」と投げやりながらも続いている。最近では記事越しの読者に遺書を書いてるつもりになっており、距離感の近さからじんわり人気を博している。
結局は自分のことを誰かに見てもらいたかったのだ。

特にやることもないので失踪した七姫を探しに面影島へやってきた。
島の人たちもなにやら「ワケあり」なように見えるが———まあ話してはくれない。そんななか黄泉還りしたと思われる事象に遭遇するが、若者3人を援護する形で勝利を収めた。程よい疲労感も束の間、七姫は未だ帰ってこないが、島の娘は「平和な島だから、ひょっこり戻ってくる」と言う。そうなることが必然であるかのように。