お見合いそのものが盛大なブラフであり、実際には惇二を隔離するための嘘のイベントだった。
お見合いの相手も、会場も、スタッフもUGNが用意したもの。
また、記憶の混濁については裏松家に関する情報を抹消するためにUGNが仕掛けたものであった。

裏松家とは、古くから日本に存在する名家であり、政治家や企業家など多くの有力者を輩出してきた名門であった。
しかしその実態は、エグザイルシンドロームのジャームと化した初代当主、"裏松和重(うらまつかずしげ)"を筆頭としたジャーム及びジャーム化予備軍によって構成される、ある種FHセルのような一家であった。
和重は《融合》を用いて代々の次男坊に寄生し、当主となった長男を陰から操ることで、裏松家を政府活動の中枢に裏から食い込むまでに発展させてきた。
しかし、当代の次男坊である惇二はたまたまオーヴァードに覚醒していなかった(裏松家の人間は惇二を除いて全員が覚醒:生誕であった)ため、幼少のころからあの手この手で覚醒させようとしてきたがどれも失敗。
惇二の覚醒のための非合法活動がUGNにバレたことで少しずつ捜査が進められていき、見合いという名目で裏松邸から惇二を離れさせ、そのタイミングで裏松家を叩く掃討作戦が立案、実行された。
作戦は成功したが、和重の分体である触手がお見合いの会場に仕込まれており、有事の際は惇二に寄生して復活する算段だったが現地エージェントがこれを阻止した。
縁談相手はオーヴァードであり、死亡後《リザレクト》により蘇生している。
死んだと思っているのは惇二だけであった。

惇二がUGNによって記憶処理を施されたのは、非オーヴァードへの情報漏洩を防ぐという一般的な目的のほかに、裏松家が復活しないための封印措置でもあった。
幸いにして、裏松家は非オーヴァードである惇二に家の事情を説明したり、思想を矯正したりはしなかった(和重は覚醒後にこれを行うつもりだったため惇二にオーヴァード関連の知識はなかった)ため、人格矯正まで行う必要はなかったようである。